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プロジェクト管理ツール「Asana」に学ぶ、競合が乱立する中でも「選ばれる」サービスになる方法

プロジェクト管理ツール「Asana」は、今年8月に新規株式公開(IPO)の申請書類を提出しました。160ページ以上にわたって、事業概要やビジネスモデル、財務情報を開示しています。本記事ではIPO申請書をざっと要約し、見どころをご紹介します。

Asana創業ストーリー

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Asanaの創業者は、Facebookの初期メンバーだったDustin MoskovitzとJustin Rosensteinです。2人は急拡大するFacebookを支える中で、4つの課題に直面しました。

1.チームメンバーの業務を把握できない
2.だから、進捗確認や社内調整にものすごく時間がかかる
3.結果として、「本当にやるべき仕事」に時間を使えない
4.しかし、既存の業務管理システムには、使いやすいものがない

毎日たくさんのプロジェクトが立ち上がる中、誰が何をやっているのか見えにくくなる・・・これはフェイスブックに限った問題ではありません。Asanaによると、知的労働者の業務時間の60%は「Work about work(仕事のための仕事)進捗確認のためのミーティングや社内調整」に費やされているとのことです。

彼らはここに大きなビジネスチャンスを見出しました。というのも、当時の業務管理システムはマネージャー向けのものが多く、チーム単位でさくっと使えるものが少なかったのです。また、Slackやzoom等の新しいツールは、やり取りが会話のように流れてしまい、最新情報を一目で把握するには適さないものでした。

他のツールと何が違うのか

Asanaは、タスク・プロジェクト管理を含むワークマネジメントツールです。会社全体の目標、チーム・各個人の案件毎の動きを可視化することによって、全体計画と一人一人のタスクの繋がりが可視化されます。Asanaを使うことで、個人だけではなくチームの生産性も高まります。

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それって、TrelloAirTableと同じでは?」と思われる方もいるでしょう。はい、これらはAsanaの直接競合です。Asanaの機能の多くは競合ツールでも実装されており、明確な差別化は難しい状況です。Asanaが強みとして掲げているアプリ連携機能なども、やがて競合に模倣される可能性が高いでしょう。

なぜ、同じ市場の中に似たようなツールが乱立しているのでしょうか?それは、この市場がもつ明確な成長性にあります。オンラインコラボレーション・ワークマネジメント市場は超ホットに盛り上がっており、市場規模は現在の230億ドルから、2023年までに320億ドルまで伸びると予想されています。近年のリモートワークの普及も大きな追い風です。それなのに、Asanaのようなツールを導入している企業は3%未満であり、広大な事業機会がガラ空きの状態です。この市場でナンバーワンを取るべく、多くのスタートアップがしのぎを削っています。

「小さな成功体験を作り、大きく仕掛ける」営業スタイル

Asanaのビジネスモデルは、月額または年額のサブスクリプションです。3つの料金プランに加えて、15名以下であれば無料で使えるプランもあります。

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ユーザー15名まで無料であれば、ちょっとしたチームの進捗単位には十分に使えます。Asanaは、まず小さなチームで無料で使わせて、その実績をもとにトップ層に大きな営業を仕掛けるという作戦をとっています。

似たようなツールが乱立する中で、どれを導入すべきかトップ層が判断する際に、既に社内でAsanaに使い慣れている社員がいるという事実は、大きなアドバンテージになります。実際、Asanaの売上トップ100企業は、ほぼすべてが無料トライアルからのアップグレードで顧客化しています。

売上高、顧客数などのファクトデータ

最後に、IPO申請書から2020年1月時点の実績を抜粋します。

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売上高
・2019年度 76.8M USD
・2020年度 142.6M USD (対前年86%増)

営業利益
・2019年度 -52.0M USD
・2020年度 -119.6M USD

会員数
・無料ユーザー数 320万人
・有料ユーザー数 120万人
・フォーチュン500社のうち約3割がAsanaを利用

展開エリア
・190カ国(売上の41%は米国以外によるもの)

ビジネスモデル
・セルフサービスとダイレクトセールスのハイブリッド
・無料トライアルで集客し、営業部隊がアップグレードを提案

参考:AsanaのIPO申請書(Form S-1)

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