小説は「理想」であり「現実」ではない

みなさんこんにちは。Hackです。

唐突ですが、今回は私が好きな小説について話そうと思います。読書家、というほどでもないですが高校時代、主にライトノベルを中心に年に数十冊程度は読んでいました。ファンタジーよりはラブコメの方が好きでしたね。日常系やほのぼの系は物語としての起伏が少ないですが、読んでいて穏やかな気持ちになれます。

そんな私が紹介する本はこちらです。

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著:相沢沙呼 「小説の神様

主人公は2人の男女の小説家です。片や卑屈で根暗な底辺作家。片や完璧超人の人気作家。そんな2人がひょんなことから編集に合作をするよう依頼され、苦難を乗り越えながらも1つの物語を完成させていく、というお話です。

地元の図書館で面白い本はないかと探していたところ、そのタイトルに惹かれ、気づけば借りていました。

率直に感想を申し上げます。これは人を選ぶ本です。人によっては苦痛すら感じ、読むのを諦める人もいるかもしれません。

というのもこちらの本は昨今の人たちに求められているような「スカッと爽快な小説」ではなく、「重くて陰鬱な小説」だからです。

人々が小説を読む最大の理由は「現実を忘れ、理想の世界に浸る」ことだと思っています。ファンタジーにしろミステリーにしろ、ここではないどこか遠い世界を求めて人々は小説に入り浸る。本を読んでいる間だけは現実の一切を忘れ空想の世界に没頭する。それこそが小説、ひいては「創作」の醍醐味だと考えています。

ですがこの本は小説家である主人公の性格が卑屈で、それ故にネガティブさが前面と押し出されています。終盤まで延々と負のオーラが付きまとい、最後の最後まで「救い」は用意されていません。この世界に浸りたい、という方は少ないと思います。

おそらく一般受けするような小説ではないと思っています。ですが私はこの主人公の等身大の人間らしさに惹かれました。

創作における「主人公」というのはどこまでいっても「理想」なんです。現実ではありません。頭脳明晰で容姿端麗な完璧超人はどこにも存在せず、冴えない人生を送っている人間の方が大半だと思っています。「こんなふうになりたい」「こんな人に憧れる」そんな思いが積み重なって具現化したものが「主人公」です。

だからこそ、ここまで「現実」を描いた小説に、私は惹かれたのだと思います。

失敗ばかりしていても諦めず、最後まで苦しんでもがいて夢を叶える主人公なんてものはこの中には登場しません。負の感情に囚われ同じ場所をぐるぐると停滞して一歩も前に進めない、それがこの本の「主人公」なんです。

そんな主人公に私は愛おしさすら覚えます。どこまでもダメ人間な彼は誰よりも人間臭い人間です。

人生うまくいってない人にはぜひ読んでみてもらいたいです。もしかしたらあなたに寄り添ってくれる1冊となるかもしれません。

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