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乳と蜜の流れる食卓⑥はちみつから覗き見る農業のこと

温かいヨーグルトにそばのスパイス

気温が下がり、朝食にはヨーグルトよりスープが欲しくなる季節となった。こんな時は、お腹を冷やさず食べられるホットヨーグルトがおすすめだ。50~100gのヨーグルトなら電子レンジ500wで40秒程度でほどよく温まる。乳酸菌は38℃~40℃で活性化し、60℃で死滅するらしいので温めすぎには注意が必要だ。はちみつをたっぷりかけていただこう。
砕いたナッツをトッピングしてはちみつをかけるのだが、ここでかけてみたいのが、そばはちみつ。先月のサブスクで届いたのをかけてみる。
雅蜂園によるそばはちみつの説明はこんなふう。👇

 北海道のそば畑は圧巻です。白く小さな花からは想像できない真っ黒なはちみつですが、どのはちみつよりミネラルが豊富で特に鉄分が多いので女性にはおすすめです。ただ、香りが悪いのも特徴ですが、のどが痛い時や咳が酷い時にそのまま食べると効果があるとアメリカの学会で発表されていました。何度もテレビで特集されるはちみつで、根強いファンが多いです。

そばはミネラル分豊富で体にいいはちみつとして知られるが、味は非常にクセが強い(牧場風味)のでスプーンで何杯も、というわけにはいかない。
ホットヨーグルトにかける場合は、スパイス的な使い方がベスト。しかもトッピングで。かき混ぜ禁止だ。かき混ぜてしまうとヨーグルト全体がそばの味になってしまい、「牧場を食べている」気分になってしまう。
スプーンでヨーグルト表面にたらーっとたらして、ヨーグルトにトッピングした状態でいただくのがそばはちみつのお作法だ。 
朝はホットヨーグルトだが、夜におススメしたいのが、ブルーチーズ+そばはちみつ。もう、何杯っでもワインが飲めますっ。
おやつには濃厚なバニラアイスやソフトクリームにかけてもおいしい。
昔、ラムのシチューにそばはちみつを入れたことがあったが、大失敗。臭みがとれるかと思ったが、口の中で牧場風味の羊が駆け回っただけだった。
そばはちみつはかき混ぜ禁止、煮込み禁止トッピング専用のスパイスはちみつとして味わおう!
 そして、芸術の秋。ヨーグルトの上にラテアート風のお絵かきはいかが?
黒色のそばはちみつならではの楽しみだ。

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じつは増えている、国産そばの生産量

国産のそばはちみつは昔から売られてはいたが、ここ数年よく見るような気がする。それに対して昔はしょっちゅう目にしたれんげはちみつの影が最近影が薄いのは、明らかにれんげの植栽面積が減少しているからだ。
1985(昭和60)年のれんげの植栽面積は21900haだったが2018(平成30)年はわずか4200ha。5分の1に減っている。(「養蜂をめぐる情勢」令和元年11月農林水産省生産局畜産部)
一方、ソバの植栽面積を調べてみたところ1986(昭和61)年19600haだったのが、2018年には63900haと3倍以上に増えている! その規模は昭和20年代と同程度だ。国内の自給率は小麦の11%をしのぐ27%もあるとは、なかなかやるな!(「特定作物統計調査」令和元年農林水産省など)。そんなわけで、そばはちみつは近年たくさん採れているんだろう。

養蜂業における主要蜜源植物は、れんげ、みかん、りんごと軒並み減少傾向にあるのに、そばは植栽面積と生産量を増やしている。背景に、2011(平成23)年、戸別所得補償制度がスタートし、水田の転作作物として積極的に導入されたことがあるらしい。そばは播いてから3か月程度で収穫できるので、米、麦、豆類、ばれいしょとの輪作に組み入れやすい作物なのだそう。一番の産地は北海道だが、西日本では福井県が一大産地。私は大晦日には福井の「今庄そば」を買うが、これからは大晦日以外にも意識して国産そばを食べようと思う。

生薬生産も国産復活の兆し

9月に送られてきたもうひとつのはちみつはきはだ。これは本当に美味しいはちみつで、糖度と酸味のバランスが絶妙でそのままでいくらでも食べられる。雅蜂園さんの説明はこんなふう👇

本州ではキハダと呼ばれる樹ですが、北海道ではシコロと呼ばれています。キハダの幹の皮をはぐと、あざやかな黄色が現れ乾燥させて漢方薬として使われます。同じように蜂蜜も黄色みが一番強いはちみつです。私はこのはちみつが一番好きです。懐かしい味で、まるで黄金糖の飴を食べているように、ほろ苦い甘さが特徴です。毎朝のエネルギー補給として、スプーン1杯食べてみて下さい。いつもより頭の回転が早くなりますよ。

きはだ(黄柏)は漢方薬に使われる樹木だが、主に胃腸薬、整腸薬に使われる。かつては北海道産きはだが国内供給の8割を担っていたというが最近はほとんどが輸入らしい。漢方薬原料の生薬は、ここ数年、主な輸入先の中国が経済発展で国内需要が増え、輸出に制限をかけるなどで、国産ニーズが高まっている。国内の生薬栽培は農協などを通さず製薬企業との契約栽培が中心らしいが、農水省は生薬の安定確保のために生産者とのマッチング事業を始めているようだ。(「薬用作物(生薬)をめぐる事情」令和2年2月農林水産省)

コロナ禍のなかにも山々は色づき、秋の到来を教えてくれる。みつばちははちみつの向こうにある農業のいろんな変化を教えてくれる。

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