【エッセイ】港町のプラットホーム
私は、港町うまれの港っ子だ。
現在も、この町に住んでいる。
学生時代、私は片道2時間かけて
県境の専門学校まで通っていた。
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プラットホームからは、漁船やヨットが行き来するのが見える。
港は朝日に照らされキラキラと輝き波はイキイキと踊っているようだった。
私はと言うと足取りが重かった。
友達もいたし、学校に慣れなかったわけではない。
ただ、なんとなく余所者(よそもの)と意識させられるのだ。
壁があるように感じた。
言葉の壁というのか方言という壁が
なんとも寂しかった。
我が町と県境のほうでは
方言がガラッと変わるのだ。
聞き慣れない方言が、あちらこちらで飛び交っていた。
[のんびり穏やか]な県民性。
方言も語尾を伸ばす感じのものが多く
[のんびり]している。
学校がある県境は[のんびり、ゆったり]な方言なのだが
我が町は港町らしく[のんびり]した中にも少し荒っぽさがあった。
学校の友達に
「怒ってるの ??
あなたの喋りは荒くて少し怖い」
と度々いわれてしまい気軽に喋れなくなって行った。
喋る時は、 一旦 考えて言葉を選んで喋るようになっていた。
この作業を自然に出来るようになってしまったことも寂しかった。
「うちっちの方言 怖くないのに…
普通なのになぁ…
この方言、大好きなのに…」
しょんぼりしながら 2時間
電車に揺られ、すっかり暗くなってしまった景色を眺めていた。
帰りの電車を降りると港と潮の匂いが「お帰り」と出迎えてくれた。
この匂い、この空気感
そして飛び交う方言にホッとした。
帰ってきたなぁ と感じた
一瞬で癒された。
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あのホームに立つと思い出すのだ
学生の頃の あの気持ちを。
そして我が町 この港町が大好きだと
改めて思うのだ。
私が産まれ育った港町
街並みは 変わって行くけれど
匂いや空気感そして少し荒っぽい
方言は変わることはないだろう。
[完]
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