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療育の専門家って? 言語聴覚士編

 今回は言語聴覚士(Speech Therapy 略称ST)さんについてです。

 筆者が言語聴覚士なので今回はある程度詳しく説明できると思います。

 順を追って説明していくのでタイトルから話がずれている所があるかもしれませんがご了承下さい。

STってどこにいるの? 

 前に投稿した内容に少し書いたかもしれませんが、一般的に病棟が多いと言われています。

 そして病棟でも小児ではなく、成人(老人が多い)のリハビリテーション科という所に配属されることが多いのではないかと思います。

 療育の支援者は小児のリハ科、児童発達支援事業所、放課後等デイサービス、学校関係などで働いていることが多いと思うのですが、その話に行く着くまでに少しSTについて少し解説をさせて頂きたいと思います。

STってどんなことをしているの?

 脳にダメージを負った人や認知症の人に対する認知機能訓練をメインでやっていることが多いイメージがあるかもしれませんが(そもそも知らない)実は、昨今脳梗塞より肺炎で亡くなる方が多く、肺炎の原因の一つとして誤嚥(気管、肺に食べ物が入ってしまうこと)の関係性を言われている方がおり、言語→会話→口の動き→食事といった繋がりと、緊急性(命に係わる)が高いといった理由から誤嚥に対してリハビリテーションを行うことが多いと聞きます。

・・・勿論働く場所によると思いますが。

 高齢化と言われ、社会的ニーズもあってか、学校では成人分野(老人のリハビリテーション)に関することが多く、元々小児分野志望だった私は興味ないなぁと思いつつも何か子どもさんに役に立つ情報になるのかもしれないと、難しい医学用語に頭を抱えながら勉学に励みました。

専門家について思うこと

 専門とは何かの分野に特化しているという意味合いで使われる言葉ですよね。

 療育において言語聴覚士が果たす専門的役割とは?・・・と考えた時に先程挙げた、言語、会話、口の動きに関してお子さんにも当てはまる項目ではないかと思います。※食事も含まれると思いますが関係が深いと思われる脳性麻痺や重症心身のお子さんは経験が少ないので申し訳ないですが割愛させて頂きました。

 保育士さんや教師の方も上記の分野を見られることが多いかもしれませんが、恐らく他にも見ないといけない側面が多くあり、特定の分野を集中的に考える専門とはまた違う役割を果たすといった所でしょうか。

 そして現場ではチームで取り組むことが多いと思いますので、専門性だけに目を向けず他分野の情報もある程度知っておく必要があるのではないかと感じています。

 そもそも専門的に考えすぎると見落としが多くなることや、違う分野のことは全くわからなかったりします。

 なので専門家は偉いわけではないのです。特化していること以外は案外ポンコツだったりします。かく言う私もコミュニケーションとか発声とかポンコツだったりします。(STってなんだっけ?)

 そもそも保育士さんや教師の方々が専門家ではないと私は思っていません。例えば保育士さんはお子さんを育てる専門家ですし、先生は学習に関する専門家に当たると私は思っています。ただリハ職はその中でも更に細分化され特化しているのではなかろうかといった所でしょうか。

STが療育で果たす役割

 まず、言語、会話、口の動きの中にある言語についてですが、これのインプット、アウトプットするツールとして文字を使うのが一般的になっていますよね。そして文字に対して読み書きが出来ることが、お子さんの就学前後に求められるスキルになっていると思います。

 小児では学習障害(LD)という言葉があると思いますが、STが学習障害を任される理由として、まずLDの定義の中に知的に遅れはないが読み書きに特異的な遅れがあるといあります。

 この読み書きについて、成人分野の高次脳機能障害の一つである失書や失読においても知的な遅れはなくても書けなくなったり、読めなくなったりすることがあり、脳機能面で共通する部分が多く、成人分野での方法や考え方を取り入れて、実践されている所もあることから任されるケースが多くなっているのではないかと考えられます。

 次に会話について同様にインプット、アウトプットで考えると、インプットは聞く、アウトプットは話すになると思います。まずこのスキルが習得されないと文字言語を学習しても使いこなすことは難しく、ここを習得した上で文字言語に移行するとスムーズに習得できると言われています。

 勿論相互性があるので、しっかり習得するまで移行しないという意味ではありません。そもそも何をもってして習得したと捉えるのか様々な考えがあります。何にしても新しいことに取り組むのは本人の興味が大きく関係しますので、お子さんの興味第一で、あまり興味がない時は能力に応じたやり方を促しつつ成功体験を積ませて自己肯定感を下げないように様子を見るといった形でしょうか。失敗すると次に繋がりにくくなりますからね。

・・・脱線しましたすいません。

 時を戻して聞く話すについてですが、どちらかだけでは一方通行になり会話が成り立たなくなるので、相互的なやりとりを行うために必要となる部分をコミュニケーションという項目で評価することがあります。

 この聞く、話す、コミュニケーションの3指標で言語発達障害、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症の3疾患を分けて考えることができます。

 まずコミュニケーションに問題ないですが、聞いたり話す事が苦手な子の事例では言語発達障害に近い状態象になるのではないかと考えます。話すことや聞くことが上手ではなくても持ち前のコミュニケーションスキル(笑顔や注意面、相互性など)から説明足らずなこともありますが私より上手にコミュニケーションを取るなぁと思うこともあります。聞くスキルは保たれていることが多い印象がありますが一概には言えないようです。

 次に話す機能や聞く機能が保たれている事が多いですが、コミュニケーションの強弱が難しい事例は注意欠如多動症に近く状態象になるのではないかと考えます。話す機能は強すぎて一方的に話し過ぎたり、逆に聞く力は弱すぎて全く聞いていなかったり、そのアンバランスさで話題がコロコロ変わったりとある程度会話をコントロールしなければ今何しようとしてたっけ?という状態になることがあります。他には口より先に身体が動く(暴力を振るうという意味ではありません)こともあったりします。

 3つ目は聞くことや話すことに偏りがありコミュニケーションが取りづらくなるといった事例があります。これは自閉スペクトラム症に近い状態象になるのかもしれません。例として話す内容が自分の興味のあることしか話さなかったり、興味のある話題では情報を聞きすぎて忘れられなかったりしますが、逆に興味のない物に対しては全く入らないということもあるようです。乳幼児では周囲の音声情報に全く興味が持てないことで言葉に繋がらないこともあるような印象を受ける事例があります。

 勿論併存例もありますし(注:学習障害と知的障害は併存しません)、注意欠如多動症は言語活動の問題もありますが普段の生活上での障害を中心にして判断されますし、自閉スペクトラム症は言語活動のみならず感覚面や行動の偏りなどが評価項目入っているので言語活動だけでは明示しづらいと考えられます。後、私はSTであって医師ではないので、医師の診断に基づいて任された患者さんの傾向や現行の診断基準(DSM-5)に基づいて考えると上記で説明した内容になるのではないかと考えています。

 長くなりましたが、後、口の動きが拙いことで上記で挙げた3項目(聞く、話す、コミュニケーション)が問題なくても何を言っているのか判断できないレベルの子も稀にいます。

 これに関しては器質性(口の形態に何らかの異常がある)運動性(口の動きに何らかの異常がある)機能性(前の二つで説明できない機能の低下)で分かれてますが、器質性は病院内で手術やリハを行うことが多くて療育では中々見る機会がないかもしれません。運動性は小児の場合個人差なのか、経験不足なのか、後天的に脳にダメージを受けた事実がなければ言いづらいと所があり、基本小児では運動性と思われる臨床像でも機能性に分類されることが多いと思います。器質性も診断基準に入らなければ舌や口腔内面積が大きかったり小さかったりしてもスルーされるので結果的に小児では機能性が多くなる傾向があると考えます。

 現在、口腔機能低下症という名称や発達性協調運動障害(DCD)の一つとして取り扱われることもあるような話も聞いたことがあります。

まとめ

 一つ一つ説明していくと更に細かく説明できますが、今回はSTの紹介ということでざっくりとした療育との関係性を書かせて頂きました。

 結局言語機能に限らず様々な機能で偏りがあると生活していくことが困難になりますし、多面的にサポートすることが療育では必要なことではないかと感じています。

 特に日常的な生活の場になる児童発達支援事業や放課後デイサービス、園、学校などにおいてはお子さんと関わる機会も多いことからそれらの果たす役割は大きくなるのではないかと考えられます。

 特定の場所だけで活躍するような専門家だけではなく生活の場でも活躍される身近な専門家が増えることを願いつつこの辺で締めとしたいと思います。

 

ここまで読んで頂いた方、ありがとうございました。

 また違う記事でも会えたら嬉しいです。

この記事は小児発達分野で働く言語聴覚士がお送りしました。

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