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社会的養護の出身者以外にも虐待の被害者は沢山いることを知ってください

虐待がひどくても社会的養護に保護される子どもは、今も昔も、ごく僅かです。ほとんどの被害者が社会的養護には保護されていません。
社会的養護の出身者だけを応援したり、寄付するNPOなどの運動が目立ちますが、どれだけ酷い子ども時代を過ごしても、虐待を発見も保護もされずに大人になった被害者への支援には誰も目を向けません。でも保護されないまま大人になる被害者の方が圧倒的に人数が多いという実態を知ってほしいです。

児童虐待防止法(2000年制定)ができる前のわずか20年前の日本は、どれだけ虐待が酷くても、児相など行政への通報体制も整っていませんでしたし、世間も虐待や児相という言葉の認識も非常に低い時代でした。
今の30代半ば以上の大人は、子ども時代に虐待が酷くても、児相介入がほとんどなかった世代です。でも昔から虐待は多かったのです。国が統計を取り出したのが、平成2年頃であり、それ以前の昭和や平成初期は、統計が取られていませんので実態が分かりません。また、「虐待」という言葉の認知が世間に広まったために、児相への通報件数が増え、「虐待が発見されやすい社会になった」ために、児童虐待のグラフは増加を示していますが、実際のところ、増えているのか、減っているのかは分かりません。

児童虐待相談件数


【潜在的児童虐待被害者】という専門用語をネット検索してみてください。子ども時代に本来であれば、社会的養護への保護が必要なレベルのひどい虐待や悲惨な家庭環境だったのに、保護に至らないまま大人になった人が沢山いるのです。どのくらいその数がいるかという推定数がハッキリしておらず(その論文を現在、探しています)、この話は説得力に弱いのですが、私のTwitterで、以下の2つのアンケートを実施してみました。

【質問文】今の35歳以上の虐待サバイバーで、子ども時代、虐待が酷くても〈児相〉は助けにきましたか?また〈児相〉という言葉を子ども時代、知っていましたか?(2021年8月22日。Twitterアンケート実施結果)

上記の質問に対し、以下の通り、254票の回答が得られました。90.9%の虐待サバイバー(今の35歳以上)の方が、「〈児相〉は1度も来ないし(子ども時代に)言葉も知らなかった」という回答をしています。この結果からも、ひどい虐待があっても児相介入すらなく、児童養護施設などの社会的養護に保護された子どもが非常に少なかった実態が分かります。

アンケート(児相介入の有無)2021.8.22実施

【質問】35歳以上の虐待サバイバーの方で、2000年に制定された〈児童虐待防止法〉により、自分自身が受けた虐待被害による精神的・社会的ダメージや、成人後の〈虐待の後遺症〉は、何か救いになりましたか?(2021年8月22日。Twitterアンケート実施結果)

上記の質問に対し、以下の通り、131票の回答が得られました。96.2%の虐待サバイバー(今の35歳以上)が、「防止法の恩恵は何もなかった」という回答をしており、児童虐待防止法(2000年制定)ができる以前の現在のおよそ35歳以上の世代は、虐待があっても、虐待を防止する法律がないため、児相介入もなく、通報してくれる近所や学校の先生も、子どもの顔にアザがあっても、〈虐待〉という理解がなく、<支援ゼロ>のまま大人になっていることが分かります。

アンケート結果(防止法の恩恵)2021.8.22実施

そして、子ども時代に社会的養護に保護されなかったために、成人後に〈虐待の後遺症〉が重度になっても、大人時代も理解ある支援者・治療者につながることが難しく、大人になっても子ども時代のように<支援ゼロ>のまま生きているという実態があります。この被害者たちが<今の親世代>であり、「虐待の連鎖」も止まらないのは、こうした保護されなかった被害者の大人を社会が放置していることも要因として大きいのです。※ただし、必ずしも「虐待の連鎖」が起きるわけではありませんが、元・被害者が「虐待の連鎖」をさせてしまう可能性は高いことは専門家も指摘しています(羽馬 2019)。

社会的養護に保護されれば、子ども時代も支援があり、大人になってからも、ある程度の行政サービスにつながりやすく、十分でなくても民間の寄付や社会的養護の出身者を対象にしたアフターケアなどの相談所、支援や寄付をしようという民間団体が現れます。

一方で、保護からもれた沢山の被害者は、その存在すら社会から知られておらず、大人になっても支援ゼロです。子ども時代に保護されず、虐待環境から逃れられず、〈虐待を受けた年月が長い〉ために、大人になって〈虐待の後遺症〉は、一般的には、社会的養護へ保護された被害者より重症化します(ドナ・ジャクソン・ナカザワ 2018)。

また、社会的養護の保護からもれている被害者は、昔だけでなく、児童虐待防止法が制定された2000年以後の今も生じている問題です。その証拠に、今でも「虐待死」が起きています。虐待が酷い子どもが適切に児童養護施設に保護されているならば、「虐待死」はゼロでしょう。

また、「大人世代だけど、まだ現在進行形で後遺症に苦しみ支援がない30代以上の方はどのくらいいますか?」という文面で、2020年2月26日に私のTwitterでアンケート調査をした結果、回答数は227票で、「30代以上だけど、まだ虐待の後遺症が酷く、支援がない」と回答した虐待サバイバーは、80.9%という高い数値となりました。

クロ現 アンケート結果 - コピー



このため、自殺率・犯罪率・生活保護率・ホームレスになる確率も非常に高く、子ども時代に性的虐待を受けて大人になって虐待の後遺症が重度なのに、社会的養護にも保護されず、大人になってからも支援につながらず30代後半を迎えたある被害者の女性で、自殺してしまった方も私の知り合いにはいます。私も【潜在的児童虐待被害者】のひとりであり、子ども時代も支援ゼロ、大人になって<虐待の後遺症>が重度で、精神科の閉鎖病棟へ何度も入院を繰り返す20代を過ごしても、理解ある支援者につながれず、つながれたのは35歳の時でした。

こうした実態をより多くの人に知ってもらいたいと思い啓発させてもらっています。以下の書籍もご興味があれば、読んで頂ければよりこの実態が解ると思います。

【引用文献】

『わたし、虐待サバイバー』,著:羽馬 千恵(2019).

『小児期トラウマがもたらす病 ACEの実態と対策』,著:ドナ・ジャクソン・ナカザワ(2018).

虐待の後遺症の典型的な症例については、以下の書籍に詳しくまとめてあります。精神科医の和田秀樹先生の監修・対談付き。



虐待の被害当事者として、社会に虐待問題がなぜ起きるのか?また、大人になって虐待の後遺症(複雑性PTSD、解離性同一性障害、愛着障害など多数の精神障害)に苦しむ当事者が多い実態を世の中に啓発していきます!活動資金として、サポートして頂ければありがたいです!!