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今を明るく楽しく ~虹色で、いい~

書籍「わたし、虐待サバイバー」を最後までお読みくださりありがとうございました。読者の皆さんがどんな立場でこの本を手に取ってくださったのか気になるところですが、一人の当事者の声として、本書のなかの数行でも、皆さんの心に響いてくれたら嬉しく思います。当事者としての絶望ではなく、希望を書きたかった本ですが、それでも、本書を読み終えたあとで、親に対してさらに複雑な感情を持ってしまった方もいるかもしれません。

わたしは、「あなたももう、親を恨まないで。わたしはこんなに過去を客観視できているのだから」と言いたくて、この本を書いたわけではないのです。わたし自身も母に対しては、憎しみもあれば、不憫に思っている気持ちも両方混在しているのです。

虐待サバイバーが、虐待した親に対する想いは、複雑で人それぞれだと思います。心底、親が憎いだけの人もいると思います。なかには虐待した親のことを、「毒親」と呼ばれる方もいます。しかしわたし個人は「毒親」という言葉は使いたくないのです。
子どもとして親を見る視点だけでなく、親も一人の人間として見る<大人の視点>がいると思っています。親も虐待被害者だからといって、子どもを虐待することはもちろん許されません。そのうえで、負の連鎖を断ち切るためには、やはり客観的な視線が必要だと考えています。

「毒親」と言いたい気持ちは痛いほど分かります。でも、親の悪口や恨みを言っているだけでは、虐待問題は解決しないのです。虐待してしまう親が、どうしてそうなったのか、親の生きてきた歴史や社会構造、時代背景などを探っていくことで、強固な負の連鎖の鎖を切ることができるのです。
虐待サバイバーは虹色でいいのです。みんな異なる価値観や考え方、生き方をしています。虹色のサバイバーたち一人ひとりの親に抱く想いには答えが無数にあり、これが正解だと他人が押し付けるものではまったくありません。

 親子関係は百人百様で、「正解」はないとわたしは思います。親を赦そうと、憎んだまま毒親と呼ぼうと、縁を切ろうと、関係回復しようと、「その人の答え」であり、他人がとやかく言うべきことではないと思うのです。
 自分にとって幸せな結論が正解であって、答えは人の数だけあると。
だけど、社会に虐待サバイバーの不幸を発信し、理解を求め、本当の意味で虐待被害者が救われる社会を望むなら、当事者が親の悪口を言うだけでは解決しないという意味で、「毒親」という言葉を社会に広めてほしくないのです。

日本には約75年前、戦争だってあったのです。たくさんの人の生きてきた人生が、ただのDNAの情報としてではなく、歴史的・文化的に現在のわたしたちにつながっているです。虐待問題は、虐待する親だけではなく、社会全体の問題でもあるのではないでしょうか。それゆえ、虐待問題は「親が悪い」では、解決しない問題だとわたしは思っています。本書では精神科医の和田秀樹先生のご協力のもと、対談も収録しました。対談をお読みになって、日本の精神医療の現実に愕然として人もいるかもしれません。
 ぜひ、本書を医療関係者の人にも読んでほしいです。

 特に精神科に相談に行く患者さんは、自分の苦しい症状の原因を自己分析できていない場合が多いです。わたし自身も自己分析し他人に説明できるようになるまでに、かなりの年数がかかりました。
 精神科では、患者と医者との面接という方法で病名やどんな支援ができるかを探るわけですが、患者さんが訴える内容は「氷山の一角」として現れているだけの場合が多く、病状の根本的な原因は、患者さん自身も気がついていなかったり、患者さんの子ども時代のトラウマにあることも少なくありません。

患者さんのことを知ろうと思ったならば、その方の生きてきた「歴史」を知らなければなりません。うつ状態や摂食障害など、今現在、表に出ている症状が、「氷山の一角」として見えているだけであり、患者さんの子ども時代に、親からの虐待や不適切な養育の話があるかどうかも聞き取り、過去の体験のトラウマへのケアというアプローチも必要になってくることを念頭に置いて、患者さんに関わってもらえたらと思います。

また、患者さんを病名で見るのではなく、その人を理解するという視点を持ってもらいたいです。「Aさんはうつ病」ではなく「うつ病をもったAさん」という見方で、病名ではなく患者さん自身に寄り添ってもらえればと思っています。 

虐待サバイバーに限らず、困難を抱えていない人などいない時代の中で、どうか苦しみだけで生きないでほしいのです。人間は過去にも未来にも生きれません。今この瞬間しか生きれないのだから、今を明るく楽しく生きてほしいのです。私は、闇もたくさん経験してきましたが、小さくても光は探せば身近にたくさん転がっています。虐待サバイバーに限らず、全ての人に伝えたいメッセージです。

虐待の後遺症については、以下の書籍に詳しく描いています。


虐待の被害当事者として、社会に虐待問題がなぜ起きるのか?また、大人になって虐待の後遺症(複雑性PTSD、解離性同一性障害、愛着障害など多数の精神障害)に苦しむ当事者が多い実態を世の中に啓発していきます!活動資金として、サポートして頂ければありがたいです!!