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速達女子を卒業して、ハーゲンダッツを食べてやる!


わたしは速達女子である。それは、なんでもかんでも、速達で送る人のことだ。

ここ1ヶ月くらい、ちょっといろんな提出締め切りが重なって、中には郵送のものもいくつかあった。もう!令和だって言うのにな!と思いながら汗だくで郵便局に通ううち、クールな仕事人であるおばちゃんスタッフに顔を覚えられて、やさしくしてもらえるようになってきた。ちなみにおばちゃんは、わたしが「速達で!」と言うと、すこしうれしそうな顔をする。かわいい。

速達との出会いは、今から十数年前。わたしがモーレツ就活生だった頃にさかのぼる。大学入試で苦い経験をしたわたしは、就活はいちばん行きたいところに!と、それはもうはりきった。エントリーシートは、覚えてしまうくらい何度も書き直した。書き直しても書き直しても、気になるところが湧いてくる。あれはこう書くべきだった、あれは書き方をミスった、あれはちょっと自慢ぽく思われたかなあ…あああ…。

その後悔の不快さに耐えかねたわたしは、「ぎりぎりまで粘って出せば、後悔を減らせるのではないか」という考えに行きついた。そして、速達に手を染めてしまった。速達で送った書類は無事に届き、春が来て、わたしは社会人になった。これにより、速達で送るとうまくいく(拡大解釈)という人生の教訓を得て、その後も躊躇なく速達を使ってきた。


しかし、落ち着いて考えると速達は普通郵便よりも高い。落ち着かなくても高い。あまり考えないようにして、郵便局のおばちゃんに任せて、ゆけ〜!届け〜!と思いながら払っているけれど、どうやら最低でもプラス260円くらいはしているようである。郵便局の人ががんばって翌日に届けてくれるのだから、そりゃあ260円くらいは、と思う。でも。これは…近所のスーパーのハーゲンダッツとほぼ同額の値段だ…。この極めて重要な事実に、先日ようやく気づいてしまった。

速達か、普通郵便か。いつもわたしはそれを天秤にかけてきたけれど、それはつまり、速達か、ハーゲンダッツかという話だったのだ。わたしは今まで、速達にしたことにより、いったい何個のハーゲンダッツを食べ損ねてきたのだろう。


今は、万年全力疾走だったわたしの人生の中で、いちばんのんびりと暮らしている。時間が昔よりはあるのだから、どんな郵送も速達を使わなくても後悔なんてしないように、前もって計画的に準備をしよう。そしてゆっくりとハーゲンダッツを堪能しよう。

そう心に決め、今週もわたしは郵便局へ。締め切りまで2日ある。もう中身に不備もないはずだし、迷いもない。これは普通郵便案件だ!と、念のため締め切りの日を確認。すると、おそろしい二文字が目に飛び込んできた。


(必着)


ひっちゃく。好きな四字熟語を尋ねられたら、今なら「消印有効」と答えると思う。消印有効がよかった。これが多様性というやつなのか。いや違う、わたしの単なる思い込み。でも大丈夫、だって2日ある。そんなこともあろうかと2日前なのだ。

「お届け先が、〇〇県なので、普通郵便だと3日後になります」とおばちゃんが言う。


速達にしてください!!!!!

おばちゃんがちょっとにやっとする。わたしはとぼとぼと家に帰り、冷蔵庫にあったガツンとみかんを勢いよくかじった。



おわり

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