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もう夫の行動を笑わないと誓った日。


夫、出張中。そのためひとりで淡々と夕食を食べ終え、午後8時。なんだか口寂しい。一日のしめに、甘いものをひと口食べたい。ゼリーでもヨーグルトでもプリンでもチョコレートでもなんならホットミルクでも何でもいい気分だって言うのに、こんな日に限って冷蔵庫はすっからかんである。今から買いに行く気力は残っていない。

冷凍庫を開く。すると、カチカチに凍った「フローズンドリンクゼリー ライチ味」が光りを放っている。家の中に、甘味を見つけた…。15分くらいわたしの手で揉んで溶かしたらいい感じにシャリシャリになりそうだあ…。食べたい。しかし…。

この「フローズンドリンクゼリー ライチ味」は、数日前に夫とスーパーへ買い物に行き、野菜やら肉やらをカゴに入れてレジに並んでいたところ、夫がレジのすぐ横の陳列棚から「これ買っとこっと」と言って三つ四つほいほいとカゴに入れたゼリーのうちのひとつである。

そのとき、わたしはその行動を笑ったのだ。レジの横にあるお菓子みたいな小物をひょいひょいとついで買いしてしまうのは、店側の思うツボである!あなたは誘導されている典型的な消費者だ!フローズンドリンクゼリーライチ味を食べたいだなんて一度も思ったことなかったくせに、ちょっと列に並んでいる間に「買っとこ」と言って三つ四つ。これでお会計が500円上がったではないか!わたしは緻密な計算に基づいて、計画的に食材の買い出しをしているというのにあなたはいつも衝動でお会計金額を上げてくる!と思って、あきれて笑ったのである

夫は普段から、「そりゃ、営業の人はそう言うだろうよ…」と思うようなセールストークに見事に乗っかったり、購買意欲をかき立てるお店の仕掛けにまんまと誘導されて衝動買いしたりするところがある。そのたびにわたしは「また手のひらで転がされてる…」と思うのだった。


そんな風に夫の行動を笑ったわたしが今、夫がついで買いした「フローズンドリンクゼリー」を食べたくて仕方なくなっている

もしもこれを食べるのならば、もう今後、夫のレジ横のついで買いを笑わないと誓わなければならない気がする。冷凍庫の前で葛藤を続けていると、わたしの口は、ライチの口になってしまった。溶かそう。そして、食べよう。

「フローズンドリンクゼリー」をテレビを見ながらわたしの体温で溶かす。せっかちな性格が出てしまい、早く食べたくてフライングするが吸っても出てこない。再びふたをして溶かし、吸ってみて、また溶かし、吸ってを5回くらい繰り返したらやっと食べごろになった。

食べきって満足し、ごみをごみ箱に捨てて、考えた。

わたしは自分が綿密に計画をして食品の買い出しをしていると主張しながら、自分が夕食後に無性に甘味を食べたくなることを計算に含められていなかったではないか。夫の衝動買いを笑ったわたしが、いちばん衝動に負けてしまったのだ。もう夫を笑いませんと誓った。

おわり


▼夫のものを勝手に食べるシリーズ

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