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突然、炉ばた焼器が届き、動揺しつつエビを焼いた話。


人生には、思いがけないことが起こったりする。それはたとえば、27時間テレビを見ながらゲラゲラ笑っていた日曜の夕方、身に覚えのない「炉ばた焼器」が送られてくるようなことである。

寝耳に炭酸水。この間のそうめんが届いたときより動揺した。動揺してすぐにわかった。

夫だ。

夫が、そうそうたる顔ぶれが並ぶギフトカタログの中から炉ばた焼器を選んだものと思われる。

わたしは何度も釘を刺していた。「物はしまうところがないから、食べ物を選んでね」と。それなのに、夫が選んだのは炉ばた焼器。人生で「あ〜今どうしても食べてぇ〜!」という衝動に駆られたことが一度あるかどうかもわからない「炉ばた焼」の器械。

「なにこれ!話が違うんだけど!」と夫を問い詰めると、(ちょっとまずかったかも)と気づいた夫、「第一希望と第二希望を書くところがあって、第一希望はホタテにした気がするんだけど…ホタテが思うように獲れなかったのかなあ?炉ばた焼器は第二希望にしていたと思うのだけどなあ…」とごにょごにょ言い、ホタテ漁師のせいにし始める。

わたしがため息をつく。すると夫は、一気に方向転換する。「わ!この箱の写真見て?おいしそう!ほら見て!これを使えば、家でも魚介が焼けるし、バーベキューにも持っていけるよ!庭も欲しくなってくるねえ〜次引っ越すときは庭もあるところがいいねえ」。先ほどまでホタテ漁師に責任転嫁していたくせに、今度はこれによって手に入る将来像を想像させる、つまりベネフィットを訴求する営業マンのような語り口へと変わった。

わたしの表情が変わらないことに気づいた夫は、慌てて収納棚を整理し始める。そして扉をぎゅう〜っと閉めて、「ほら!収納できたよ!?えらい!?」と聞いてくる。満員電車のように無理やり押し込んでいた。

「…呆れてる?なんで?」と夫が次第に泣きそうな顔になってきて(※30代男性)、さすがにかわいそうになり、不満はあれどもう届いたものだから、これをできる限りたのしもうと、やっと気持ちを切り替えることにした。


となれば、翌日さっそく焼けそうなものを買いに行く。まずは海鮮。それからウインナーに野菜。炉ばた焼の食材を買いながら、「意外に何でも焼けて便利なのかもしれない」と、その可能性の幅に気づき始める。

そして焼く。月曜の夜から、マンションの一室で炉ばた焼をしている夫婦。note中探しても、わたしたちくらいじゃないのか。いつもは5円玉くらいのサイズのエビをちょこちょこ食べているが、今日は言うなれば炉ばた焼器のこけら落とし。奮発してぶりんぶりんのエビを買った。

本日はウインナーがシャウエッセンではないため、
いつもの川の字フォーメーションがきまらず
(元ネタはこちら


食べてみると、ホットプレートで焼くよりも、ぐんと香ばしさが増しておいしい!炭火焼きとまではいかないけれど、それに近いものがある。居酒屋に居るような、バーベキューに来たような、ちょっとした高揚感。煙とにおいは結構出るが、まぁそれも雰囲気が出てよいかと思える。さすがのIwataniさん。

ちくわのような庶民派食材も
炉ばた焼でよりおいしく
調子が出てきて牛タンまで
焼いてしまった


魚介も肉も魚もウインナーも、その持ち味が生きている。正直、「炉ばた焼専門の器械なんて。そんな用途が限定されたものなんて」と思っていた。しかし今は、なんでもおいしくしてしまう、こんなにも「包容力のある器械」はなかなかないのではないかと感じている。尖っているようで、実はとても懐が深く、なんでも受け入れてくれる器械だったのだ。

我が家の炉ばた焼営業マンが、「ほら!炉ばた焼器選んでよかったでしょう?」としたり顔をする。炉ばた焼器届いて地固まる。来週は焼き鳥と、それからマシュマロでも焼いてみようかしらと、るんるんしている。


おわり

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