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理学療法士は関節の位置異常を修正できるかもしれない

こんにちは。

今日は、Positional fault (関節の位置異常)についての説明と、それに関する論文についてお話していきます。


今後、機能改善やパフォーマンス向上につながる徒手理学療法やエクササイズについてお話していきたいのですが、前提として知っていただきたい考え方なので先に説明させてください。


Positional faultとは、"関節の位置異常"です。

ざっくり説明すると、関節は何らかの理由で本来あるべき位置から逸脱していること(=Positional fault)があり、それにより痛みや可動域制限、筋出力の低下など、機能障害を生じることがある、というものです。

私が臨床でよく用いるMulligan conceptの根幹とも言える概念の1つです。


徒手理学療法に精通している方なら、聞いたことあるかもしれませんね。


もし、Positional faultを知らなくても、整形外科に勤務されている方や、人の体に触れる機会が多い方ならこの概念は納得できるはずです。

みなさんはこんな人みたことありませんか。

・上腕骨頭が前方に偏位している
・脛骨が過度に外旋している
・距骨が前方に出ている
・左右で上前腸骨棘の位置が違う

これらにより機能障害がある場合、Positional faultが存在し、徒手理学療法の適応になるでしょう。


Positional faultの存在について、いくつかの論文でも触れられています。

以下、足関節のPositional faultについての論文です。

3つほど、ざっくり紹介します。


①Fibular Position in Individuals with Self-Reported Chronic Ankle Instability
慢性的な足関節不安定性を訴える人における腓骨の位置について

著者:Tricia J Hubbardさんたち

Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy(2006)に掲載

方法
横からレントゲンを撮影し、脛骨遠位前縁〜腓骨遠位前縁までの距離を測定、慢性的な足関節不安定性がある人とない人の間で差があるかどうかを評価

結果
慢性的な足関節不安定性がある人は、不安性がない人より優位に腓骨の位置が前方にずれていた

②Anterior positional fault of the fibula after sub-acute lateral ankle sprains
亜急性足関節捻挫受傷後の腓骨の前方位置異常

著者:Tricia J Hubbardさんたち

Manual Therapy(2008)に掲載

方法
亜急性足関節捻挫患者とそうでない人に脛骨遠位に対する腓骨遠位の位置を測定、腫脹の程度と腓骨の位置の間に相関があるかどうかを評価

結果
亜急性足関節捻挫患者では、そうでない人たちよりも優位に腓骨位置が前方にずれており、腓骨位置のずれと腫脹の間に強い正の相関が認められた

③Is there a positional fault at the inferior tibiofibular joint in patients withacute or chronic ankle sprains compared to normals?

急性または慢性足関節捻挫患者は
健常者と比較して下脛腓関節に位置異常が存在するか?

著者: J Kavanaghさん

Manual Therapy(1999)に掲載

方法
健常者、片側または両側足関節を慢性的に捻りやすい人と急性捻挫患者の左右足関節外果に対してAP(前から後ろへグライド)モビライゼーションを実施、この腓骨遠位部の動きと必要な力を計測

結果
足首の急性捻挫患者では少ない力でも腓骨の動く量が有意に多かった=腓骨の位置が前方に行きすぎていた


上記は足関節(下脛腓関節)にPositional faultが存在するという文献でした。

そして、次にMulligan conceptのMWMという手技が有効であることを示した文献を紹介します。

MWM:Mobilization with movementは
運動併用関節モビライゼーションという、位置異常を修正するための手法です。


※日本語はダサいので、私は使わないようにしてます


①Efficacy of mobilization with movement (MWM) for shoulder conditions: a systematic review and meta-analysis
肩の症状に対するMWMの有効性
システマティックレビューとメタアナライシス

著者:Kiran Satputeさんたち

Journal of Manual & Manipulative Therapy(2022)に掲載

方法
肩の筋骨格系疾患患者の痛み、ROM、MWMの効果を評価
五十肩および運動機能障害を伴う肩痛のサブカテゴリーについてメタアナライシスを実施
・MWMのみ
・MWM+運動療法
・MWM+電気治療
・MWM+運動療法+電気治療
の効果を評価


結果
五十肩の場合はMWMを併用することで疼痛、肩屈曲・外転ROM、機能障害が大幅に改善

運動機能障害を伴う肩の痛みの場合はMWMを併用することで疼痛、屈曲・外転ROM、機能障害が大幅に改善


②The effects of caudal mobilisation with movement (MWM) and caudal self-mobilisation with movement (SMWM) in relation to restricted internal rotation in the hip: A randomised control pilot study
股関節内旋制限に対する尾側へのMWMとself MWMの効果

著者:Riche Walshさんたち

Manual Therapy(2016)に掲載

方法
股関節内旋制限がある若い健康な男性被験者
・MWMを実施
、MWMセルフエクササイズを実施
・コントロール群(何も実施しない人たち)
上記の3群で股関節内旋可動域(機能的内旋テストと受動的内旋テスト)の即時効果を比較


結果
MWMを実施した群は、対象群よりも股関節の機能的内旋テスト結果が優位に改善




MWMに関しては、肘や膝など他の多くの関節でも有効性を示す論文が出ています。


Pubmedで検索すればたくさん見つかるので、興味ある方は調べてみてはいかがでしょうか。

英語の論文検索サイトですが、Google翻訳を駆使すれば読めなくはないです。

MWMが有効であった=Positional faultがあった
と言ってもいいのかもしれませんね。

上記の著者らも、そのように考察しています。

もう少し様々な関節でPositional faultの根拠を示す論文が出てくるといいですね!

そしてMWMの有効性を示せれば、徒手理学療法の価値が高まるかなーと思います。


研究者の方、頑張って論文化(それも英語で)してください。

(私は研究には疎いので、、他力本願ですみません)


私見ですが、Positional faultを知っていることで割と多くの現象に応用できると考えています。

Mulliganの手技を知らなくても、みなさんがすでに持っている知識とスキルでPositional faultに対応できることもあると思います。

ぜひ、Positional faultを考慮して患者、クライアントさんをみるようにしてみてください。

次回、少しだけPositional faultを修正する手技のヒントやMWMについてお話したいと思います。


今日はここまで。

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