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映画「花束みたいな恋をした」感想・考察

映画を見るか、本を先に読むか・・・?ノベライズを買ってしまってから悩んだ「花束みたいな恋をした」でした。 結局映画を先にみて、本を読んでもう一回。じんわりと良さがこみあげてきてしまった。
※ネタバレを含みます。

あらすじ

東京・京王線の明大前駅で終電を逃したことから偶然に出会った 山音やまね麦むぎ (菅田将暉)と 八谷はちや絹きぬ (有村架純)。好きな音楽や映画が嘘みたいに一緒で、あっという間に恋に落ちた麦と絹は、大学を卒業してフリーターをしながら同棲を始める。近所にお気に入りのパン屋を見つけて、拾った猫に二人で名前をつけて、渋谷パルコが閉店しても、スマスマが最終回を迎えても、日々の現状維持を目標に二人は就職活動を続けるが…。まばゆいほどの煌めきと、胸を締め付ける切なさに包まれた〈恋する月日のすべて〉を、唯一無二の言葉で紡ぐ忘れられない5年間。最高峰のスタッフとキャストが贈る、不滅のラブストーリー誕生!
──これはきっと、私たちの物語。 (公式サイトより)


終わっていく恋が印象的

趣味も好みもぴったりと合い、あっという間に意気投合して恋に落ちた2人。前情報にもほとんど触れずに観たのでキラキラ系恋愛映画だと思っていました。実際はあっという間に2人の距離が縮んでいく恋の始まりと、その後、最高に幸せな時期よりもギクシャクと音をたてながらすれ違っていく様のほうが、すごくリアルで共感できました。(麦と絹は楽しかったことのほうが多いはずなのですが。)
”これはきっと、私たちの物語。”というコピーの通り、恋をしたことがある人なら誰もが思い当たる部分があるのではないでしょうか。


”趣味が同じ”に潜む罠

同じ漫画を見て、一緒に泣く。服のテイストも似ていて、オシャレ。そいういうのはうらやましい。(こんなカップルを知っています。)でも、今回この映画を見て趣味が同じなのはいいけれど、どちらかがその趣味の全てに興味を失った時の危機というのがあるのだなと思いました。
相手の興味があることに興味を持つっていのも悪くないし。お互いの感覚の違いを楽しむのもいいし。小説を読まなくなってもビジネス書を読み始めたら、一緒に興味を持てばいいのです。前田裕二さんの”人生の勝算”を読んでいたっていいじゃないですか。

すれ違い

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夢と理想から抜けられない絹。社会に揉まれ、現実的な大人になる麦。どんんどん価値観も生活のリズムもずれていってしまう。
転職して好きなことを仕事にしたいと言う絹はAwesome City  Club(ファミレスのお姉さん)のイベントを手掛けるようになる。まさに好きを仕事に。仕事=辛いものでお金を稼ぐためと言う麦。絹が麦に転職を反対されるシーンが見てて辛かったです。
仕事で疲れて新しい本を読む気にもなれないことも、目の前のことをこなすことでいっぱいになってしまうこともあるよね、と思いました。

突然の先輩の死を一晩中語りたかった麦。
実はDVで彼女に貢がせていたのを知っていたから悲しむ気にもならなかった絹。翌日にその話をしようとしたけどもう遅かった。
大人になって気づいたけれど、恋人の大事な人(例えばお世話になった先輩とか)が自分にとっても大事だとは限らず。親友の親友さえ、合ってみたら全然話が合わないということもあるのだ。

最初から自分の分身のように分かり合えていたからこそ、分かり合えないことがどんどん二人のすれ違いを生んでしまったのかなと思いました。

印象的だったシーンとセリフ

絹のナレーション(海でのデート)
(はじまりはおわりのはじまり)
出会いは常に別れを内在し、恋愛はパーティーのようにいつかは終わる。だから恋をするものたちは好きなものを持ち寄ってテーブルを挟み、おしゃべりをし、その切なさ楽しむしかないのだ、と。
(そこに自分の恋を重ねるつもりはない。ただ、私たちのパーティーは今最高の盛り上がりをの中で始まっただけなのだ)

付き合い始めのことから”いつかは終わりがくるかも”と絹が意識をしているセリフが随所に見えるのはこのブログの影響でしょうか。(「絶対別れないっていう自信がないとお揃いのタトゥーなんてできないよね」とか)
これからもずっと絹と一緒にいると信じている麦との温度差を感じたシーン。

麦の言葉
「絹ちゃん、あのさ。俺、就職するね」

「就職しようかな?」(相談)でも「就職したよ」(事後報告)でもなく「就職するね」(告知)だったところに麦の優しさが表れているなと思いました。

麦の言葉(就職が決まった翌日)
「絹ちゃんと出会って二年、楽しいことしか無かった。それをこれからもずっと続ける。僕の人生の目標は、絹ちゃんとの現状維持です」

「現状維持が目標?」とも思うけど、実は現状維持には想像以上に努力が必要なのです。

加持さんの言葉
「恋愛って生ものだからさ、賞味期限があるんだよ」
「そりゃあ、ひとりの淋しさよりふたりの淋しさのほうがより淋しいって言うし」

さすが、海千山千って感じ。シンプル、かつ本質を突くお言葉。オダギリジョーさんの存在感が良かったです。

絹の言葉(別れのファミレスで)
「ありがとね...まあ、そのひと言なんだけどさ。楽しかったことだけを思い出にして、大事にしまっとくから。麦くんも、さ」

嫌いで別れるわけではない2人はこうやって別れるのね。

2人の距離感を象徴するサブカルとファッション

”めい”さんの「恋愛生存率」というブログを除けば、映画に出てくる小説、音楽、マンガなどの固有名詞はすべて実在します。(ブログ、無いですよね?)私もほとんど読んだことが無かったので、詳しくは「麦と絹の恋を彩るブックリスト」参考に。

ちなみに、出会った日にカラオケで歌った曲はこちら。

コンビニエンスストアで 350mlの缶ビール買って
きみと夜の散歩 時計の針は0時指してる
「”クロノスタシス”って知ってる?」 
「知らないときみが言う」
「時計の針が止まって見える 現象のことだよ~♪」

1つ現実的なツッコミをするとすれば「トイレットペーパーは最寄り駅のコンビニで買うかな・・。4人家族だからって・・2パックもいる?」って思いました。笑

読んでいた本を読まなくなったり、お揃いの靴が変わっていったり。と、細かいところに二人の距離感を象徴するアイテムがちりばめられていいて。その分色々と考えさせられることが多かったです。久しぶりにもう一回観たいなと思う映画でした。

「花束みたいな恋をした」は書下ろしなので原作の小説は無く、ノベライズがあります。映画でのナレーションと麦の素敵なイラストが挿絵になっていて、映画の後に読むと2度感動できます。



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