見出し画像

一部にオススメ映画「ニューノーマル」~夢も希望もある方には最悪、そうでない方にはドンピシャ映画~

 あのチェ・ジウ様がまったく久しぶりの映画ご出演、この一点だけで鑑賞を決めたけれど、なにこれ? オムニバスならそうと明記してくださいよ。そもそもオムニバスってのはそれぞれは独立したお話でも、トータルで浮かび上がるものがあるはず、せめて何かしらの共通項で繋がっているのですが。確かに結局のところ日本以上に進んだ韓国の現代の病根をホラータッチで描くのは共通で。しかも監督はすべて同一ってのが曲者で、微妙に話がリンクするのかしないのか、悩ましいところで寸止め。だからカタルシスが全く無く、何これで終ってしまった。

車いすおばさんの恐怖 Do The Right Thing

 しかし、個々の映画手法的には、なかなかのテクニシャンで、ちょいと不条理なシチュエーションを嘲笑するかのように自虐的に描いてゆく。チョン・ボムシク監督の前作「コンジアム」は未鑑賞で、技量も何も分かりませんが、描写に抜かりはありません。ただ、それで、何なのさ、なのです。

 6話で構成され、それぞれに映画のタイトルのような意味深な言葉が英語で示される。同時にDAY1とか日にちもテロップで出る。第1話で登場のチェ・ジウが、オムニバスと判った時点でがっかりしたものの、後になって唐突に再登場のややこしさ。流石のチェ・ジウ様も時の流れには抗えず、なのは仕方ありません、それでも十分にバッチリメイクのお陰で、美しく高級マンションがお似合いのエレガンスを漂わせます。相手の男にセリフで「美人じゃね~か」と言わしめる程の自信あり。

マッチングサービスも便利なようで恐怖のもとでもある

 魅惑の一編は半地下に住む女優志願の女のエピソード。案ずる母親に虚勢を張るいじらしさ、実態は深夜のコンビニ勤務で期限切れの食品で食いつなぐ。このコンビニの実態が実に面白く、丸一日コンビニのレジ後ろにカメラを据えれば現代が如実に反映した作品が出来るでしょうね。そんなカスハラに対抗すべく、女の遠慮の無い対応が痛快だから面白い。日本のそれと違って飲食スペースが多めで、その滅茶苦茶な食い散らかしぶりもまた興味深い。秀逸なのは電動ボードで真夜中の街を静かに走る光景でしょう。彼女の不安と孤独が無言で立ち昇る画造りが見事。

 そもそもタイトルがニューノーマルって、「新しい普通」の意図でしょうから、この刹那の現実が恐ろしくも受け入れざるを得ない無力に陥ってしまう。夢も希望もありゃしない。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?