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オススメ映画「ウーマン・キング 無敵の女戦士たち」~ソツなく練上げた女性アクションもの~

2022年作品、日本では配信のみprime video にて

 激しいアクションから仲間への友情そして母娘の秘話まで描くベタな展開ですが、王国を守る女戦士部隊アゴジェ(Agojie)に入った少女の成長談を通し、奴隷制度の根源にも触れる娯楽大作。なにより主演スターであるオスカー女優ヴィオラ・デイヴィスの圧巻のウォリアーぶりと女の性の狭間を強烈に打ち出すのが大目玉。女っけゼロを徹底する役者魂には平伏すのみ。

この迫力ですよ

 19世紀にアフリカのダホメ王国(Dahomey)にて実在した女戦士軍団を基にしたフィクション。ただし男女逆転の世界ではなく、男の軍団も確かにあり、なにより王国は男のキングに支えられている。西アフリカに現存する国家・ベナン共和国が舞台で実際にここで一部の撮影をしたとのこと。奴隷海岸と呼ばれる頃は確かにダホメ王国だったとのこと、ダメホ王国ではなくダホメ王国です。

前列左が先輩格のイゾギで、ドン・チードルに似過ぎてますよね

 要は19歳の少女ナウィ(Nawi)で、里親の決めつけた結婚話を蹴った挙句、アゴジェに入隊させられるお転婆娘。当然にあれこれと生意気に反発しまくりですが、多くの映画がそうであるように次第に目的を見出し見事な戦士に成長する過程が本作の縦軸。扮するトゥソ・ムベドゥがやたら可愛く安心して観られます。部隊の仲間のうち先輩格のイゾギ(Izogie)が良い役で、教育係でもあるがラスト近くの戦闘で殉死し涙を誘う。扮する女優が有名な黒人男優であるドン・チードルそっくり、笑ってしまう程似てますね。国王はジョン・ボイエガが扮してますが、なかなかの色男として登場なのは驚いた。「スター・ウォーズ フォースの覚醒」に登場の際には朴訥が売りだったのにね。

こんなにカッコいいのですよ、国王は

 おや、遂に100%黒人によるハリウッド映画かと思った頃に、奴隷商人の白人がブラジルからやって来る。メインとなる2人のイケメンのうち、一人は肌がやや濃く白人と黒人のハーフと言う、奴隷商人でもないとか。おゃ?と思う間もなく、少女ナウィと出会が描かれ、横糸のドラマが拡がる作劇。奴隷制度が成立する背景には、黒人を売り飛ばす黒人支配層(オヨ王国)がいるわけです。ダホメの国王も最初は達者なポルトガル語で白人と対峙するも、王国内では現地の言葉を使えと白人を諭すシーンがありますが、結局喋るのは英語なわけで笑ってしまう。ローマ帝国の映画でも喋るのは英語ですから、笑ったらいけませんね。

右側が女戦士軍団で左側は男の軍団です

 いよいよもってヴィオラ・デイヴィス扮するアゴジェの将軍ナニスカと少女ナウィの秘話をセンチメンタルに描き、暴君国家オヨと白人奴隷商人を相手にラストの戦闘がクライマックスとなる。無論、勝利し平和が訪れるのは当然です。なんと本作の監督も女性とのこと、憎々しい野郎どもがバッサバッサとアゴジェにやられる場面こそが、本作の醍醐味でしょう。

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