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絶対必見オススメ映画「マリウポリの20日間」~真実を知る事の重大さ~

 ただただ、本作を観て頂きたい、私達に今出来る事は。ただただ観るだけ。何も出来なくとも本作を観て、現実世界で今起こっている真実を知る事が出来ます。もちろんこれは現時点においてすらほんの一部の局地的なものなのは確かです、ウクライナだけでなくガザにおいてもイエメン危機でも、ソマリア内戦においてもビルマでも、強者による弱者への理不尽な殺戮が行われている。けれどそのほんの一部でも真実を目撃する価値は十二分にあります。

ロシアとの国境のすぐそばの都市

 パワーバランスによって、各国の思惑も絡み一枚岩ではない西側諸国にほとんど翻弄されるウクライナにおいて、ゼレンスキーの立ち回りを非難する向きもあるけれど、その根底にある現実を見過ごしてはならない。もし、もし、いつかこの侵攻が終結した暁においても、確実に残るのはウクライナ民のロシアへの激しい憎悪です。多分100年経っても霧散することは決してありません。本当かしら? と、ご疑念ならば直ちに本作をご鑑賞頂きたい。市井の市民の口から吐いて捨てるように罵るロシア憎しの激しさを。

ニュース映像でも見た記憶があり、本作作者の奮闘によるものだったのね

 本作に登場する爆撃音は通常映画の音響ではなく本物の爆音、同様に大量の血糊が画面に流れるが無論これは本物の血、そして数多登場する死体、おぞましくもベビーの亡骸も、何もかも本物の死体である。あまりの死体に埋葬どころか同胞の手によって泣く泣く掘った穴に次々と放り投げられる様には言葉もない。その作業の1人が言っている「死体に対する感覚がマヒしてくるが、夜になると激しく込み上げる」と。テレビのニュース映像では、遺体にはほぼボカシがかけられるが、本作では無論現実の人の死体である。これが戦争だと。

写真の臨月近い妊婦は結局ベビーともども助からなかった

 先制攻撃に備える、侵略を予想して軍備に金をつぎ込む、緊急事態に国民の自由を制限する法律も作った、でも前線に送られるのは私達フツーの市民で、大義名分をかざす張本人等は当然のことながら爆撃に慄く事は決してない。それはロシアの侵攻に対しプーチン及びその周囲が一切危険に晒されていない事が証明している。戦争なんて一旦始まってしまったら、兵士、警官、警備隊、そして巻き込まれる市民を死体に変えるだけ。ガザの惨状を観れば明々白々。「身を捧げる覚悟がある」方々だけで前線に行っていただきたい、そして相手国民を殺し、その家族たちからの憎悪の炎に油を注ぐだけでしょう

憎しみのみが増大する

 本作はAP通信のウクライナ人記者・ミスティスラフ・チェルノフによる作品で、アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を見事受賞しているが、受賞したご本人が「こんな作品は撮りたくなかった」とスピーチされている、当然でしょう。ただ、修羅場の現場でひとりカメラを回す姿は、多分現場では煙たい存在だったでしょう、生きるか死ぬかの瀬戸際なんですから。でも一部の人々は是非この真実を世界中に広めてくれ、と身をもって協力してくれる。もはやこの現場を記録として真実を世界中に広める事、すなわち国際社会に訴える事しか出来ない現実だから。嘘にまみれたロシアの偽プロパガンダに対抗するには真実ただ一つ。よって、撮った映像を直ちに送信したく、Wi-Fiの繋がる場所をそれこそ必死で探す。報道の本来の姿の原点をまざまざと描いている。

 テレビのドキュメンタリーで十分などと知ったかぶりをなさらないで下さい。有料の映画で観てこそ、収益は作者にそしてウクライナに行くはずなのですから。本作を観た夜夢を見ました、銃撃の訓練を受け観光客を装ってモスクワへ、狙い定めてプーチンを暗殺、なんて夢を。

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