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パフォーマンスのすべては集中力次第

先日、食中毒になって体調を崩しました。

その間もなんとか仕事に集中しようと努めていたのですが、体調が悪いと全然目の前のことに集中できず、パフォーマンスがかなり落ちてしまいました。周りの方々にはご心配をお掛けいたしました。。よく健康は、崩したときにその有り難みに気づくと言われますが、私も身をもってそれを痛感しました。

また、そのとき改めて、集中力とパフォーマンスは密接に繋がっていることに気づかされました。パフォーマンスは、集中力次第と言っても過言ではないほど影響しています。

集中できる環境づくりで差が出る

弊社に限らず、世の中でリモートワークを取り入れている企業は増えてきましたが、リモートも集中できる環境づくりで差が出ます。

パフォーマンスの良い人は元々環境づくりも上手なので、リモートになるとより一層仕事が進みます。弊社でも、自宅のデスク・チェア・キーボードなどの環境最適化が得意なエンジニアの方がいますが、高いパフォーマンスを維持されています。

仕事は技術を磨くなど、自分の能力を向上させることも重要ですが、どれだけ能力があっても集中できなければパフォーマンスを発揮することはできません。

タスク管理もそうです。やることが整理されていると気が散らないので、それだけ目の前のことに集中できます。とくに抱えているプロジェクトが多くなっているときほど、うまく管理できているかが影響します。

どのスタートアップも、成長盛りは色んな案件が舞い込んできます。既存事業内での新企画を抱えながら、全く新しい取り組みにチャレンジすることも日常茶飯事です。

そうなると、複数のプロジェクトやタスクを常に抱えながら並行して作業を進めることになります。部署間を跨ぎながら、それぞれのメンバーと進行させていくというのが、メンバー全員に起こり得るのがスタートアップの社内です。

その状況下で如何に一つ一つに集中してパフォーマンスを発揮できるか、素早く切り替えて進めていけるかが大切になります。自分の能力だけに頼らず、ツールを使ったり、誰かにお願いするなども必要になってきます。

そのようなある意味カオスな状況でも、集中する環境を整えられる人は強いです。

組織としては、パフォーマンスを発揮しやすい仕組みづくりを行っていきますが、伸びているスタートアップをみると、その前に各個人で「自分にとっての集中できる環境」を自主的に整えていることが多いです。

仮に1日の集中力が5%変わるだけでも、それに比例してパフォーマンスも上がります。能力を5%上げるのは大変で時間を要しますが、集中力を5%アップさせるのはすぐ可能な範囲です。

食中毒になって吐くか寝るかのときに、朝活に切り替わりました。夜9時頃に寝て、朝3時半か4時に起きるサイクルです。今まで10時に出勤していたところを、朝5時に出勤してみました。

今までは日中打ち合わせばかりで、夜も誰かと何かしらのコミュニケーションをとり、気づけば日付けが変わっているのが当たり前の日々でした。それが朝活を始めたことにより、一気に作業が捗って溜まっていたタスクが片付きました。

このときの1日のパフォーマンスで換算すると、5%以上は上がっていたと思います。きっと誰にも声をかけられない時間が生まれたことにより、私の集中力が一気に上がったと考えられます。

極限の集中状態「ゾーン」に入るためには

集中力に関しては色んなところで研究されており、とくにアスリートの世界では、「いかにゾーン(極限の集中状態)に入るか?」がパフォーマンス最大化の焦点として議論がされています。

その中で、初代日本ラグビー協会コーチングディレクターを務め、2016年アジアラグビーチャンピオンシップにて日本代表ヘッドコーチ代行として指揮をとり、優勝を果たした中竹竜二さんのイベントでの興味深いお話を聞きました。

中竹さんと研究者との対談であったのが、「ゾーン状態は意図的に作れる」ということです。

世界中のあらゆる人たちの状態を研究した結果、この世でもっとゾーン状態に入っている二つの属性が判明したそうです。それが、エクストリーム・スポーツ選手たちとお坊さんでした。

エクストリーム・スポーツとは、過激な速度や高度をはじめ、物理的に難易度が高い目標などに挑戦する、危険性の高いスポーツの総称。例:ロッククライミング、BMX、フリースタイルモトクロス、エクスライダーなど。

エクストリーム・スポーツ

人は極限に追い込まれたときに火事場の馬鹿力が出て、脳がすごく働きますが、どうやらそのようなときが最もゾーンに入りやすいそうです。エクストリーム・スポーツ選手も同様に、いつも死と直面した極限の危機状況でやっているので、ゾーンに入りやすいということがわかりました。

お坊さんは、すごく落ち着いているので全く逆かと思いきや、実はすごく集中しているエクストリーム・スポーツ選手と、脳内の状態が一緒だということが判明したそうです。

お坊さんはストレスを感じないように見えて、実はとてもストレスを感じていると。お坊さんの修行は、可哀想な人を思い浮かべながら行う”思いやり瞑想”というのをやり、脳にストレスをかけている。その人たちを何とかして助けてあげたい、という想いで瞑想をしているようです。

その後呼吸してリラックス状態になり、また救うべき人たちのことを思い浮かべ、脳にストレスを与えます。そしてどうやら、このストレスとリラックス状態の組み合わせが、ゾーンという極限の集中状態に入るステップになるとのことです。

ストレスをすごくかけて、一気にリラックスすると、脳内でセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどのいろいろな快楽物質が出ます。そしてその状態でスポーツや仕事や勉強などを行うと、ものすごいスピード早く処理ができて、高いパフォーマンスが発揮できることが判明したとのことです。

エクストリーム・スポーツ選手の人たちも、極限の状態でストレスを感じている一方で、頭ではリラックス状態になり、ゾーンに入っています。

起業家でもどん底のヤバい状態から、開き直ってポジティブに行動することによって道を切り開いていくことがありますが、まさしくそのような時こそ脳が最大限のパフォーマンスを発揮できる集中モードになっているようです。

①ストレス
②リラックス
③集中

この3つのステップを踏むことにより、意図的にパフォーマンスを最大化する集中力が生まれます。

また、ロッククライミング選手などは一回辺り最大4時間ほどゾーン状態になっているようなので、ビジネスパーソンも毎日コアタイムの4,5時間、極限の集中状態を作るのも不可能ではないかもしれません。

私はあがり症で大切なプレゼン前は極度に緊張してトイレが増えるタイプです。昔は苦痛だったのですが、最近は緊張したときに開き直って「キタキタキタキター!血が巡ってるぜー!」と自身の状態を出来るだけ客観視するようにして、「ここまでやるだけのことはやってきたから後は楽しむだけだ!」と唱えています。身体は緊張しつつも頭はリラックスすることで、その後にプレゼンでの集中力が増す感覚があります。

組織全体でゾーン状態を作り出す

話で興味深かった内容が、企業などの組織全体でゾーン状態を作り出すことは可能か否か?という点です。

ここではラグビー日本代表の話をメインに、アスリートがどのようにチーム全体で極限の集中力を作り出したかの事例が共有されていました。この話で分かったことは、人は理不尽で予測不可能なカオス状況に対峙すると、とても大きなストレスがかかるという点です。

そしてこのストレスは、ゾーンに入るための、最高かつ最初のステップになり得るという点です。

多くの人は、このようなストレスがかかった際に、とてもネガティブな感情を抱きます。怒りや不安、苛立ちや絶望といった感情を抱く人もいるでしょう。しかしより良い人生を送ることを考えると、直面するその状況を乗り越えていかなければいけません。

多くの場合、その追い詰められた状況から道を切り開く必要があり、そのためには最大限のパフォーマンスを発揮することが求められます。

そう考えると、その状況をどのように捉えるのか。企業の場合だと、組織全体でゾーンに入るためのステップとして、うまく生かすことが理想的です。絶望感で落ち込んでいる暇はありません。

また、急成長するスタートアップでは、カオスな状況は日常茶飯事なので、すでに多くの人はストレスがかかっている状況です。極限の集中状態に入るための、最初のステップはクリアしています。

しかしそのままゾーン状態に入れない理由は、まず多くの人がストレスだけで終わってしまっている点にあります。

①ストレス
②リラックス
③集中

ステップ2のリラックスが全然できていない状況です。開き直ってその状況をポジティブに捉え、激しい中でも朗らかな心持ちで打開策を考え、実行するに至っていないことが原因です。

例えば細かい指摘であったのが、デスクワークの姿勢一つでもストレスが常にかかっている状態で、リラックスモードに移行できていないと。

今は殆どの人が、パソコンを使って仕事をしているので、手が縮み、背中が曲がります。これはリラックスの状態から遠ざかっています。この状態だと肺が縮まるので、むしろストレスが溜まりやすくなります。いつまで経っても、ステップ1から抜け出せない状況です。

対談では、姿勢を正し、リラックスして作業ができるような、パソコン環境を整えることもとても大事なことだと指摘しています。

これには二つポイントがあります。一つは机の上にキーボードがある時点でストレスなのです。腕を上に上げなければならないから。本当は膝の上でキーボードを打つと全然肩は凝らないのです。

もう一つは、パソコンのモニタ画面を上げるということです。ちゃんと座った時に、モニタ画面の上三分の一くらいが目線に来るようにすると、まずはリラックスができる。

そして、仮にリラックスが出来たとしても、ステップ3の集中するためのやるべき行動を設定するというのが結構難しいと。

人のパフォーマンスは、日々変化しています。その日その日の体調やメンタルにも影響を受け、どれくらいの行動ができるかというのが違ってきます。本人は自覚していなことが多いですが、発揮できるパフォーマンスは日々波状に上下しています。

長く活躍できるアスリートと、一発屋で終わるアスリートの違いの研究したことがあります。どういう目標設定の違いがあるのかという点で、決定的な違いは、長く活躍できる選手ほど、その日その日でどういう目標設定をするのかというのがすごく上手かったのです。

この練習ではこの目標設定をする、と。

その立て方がどうして上手かったかというと、普通の人はゴールがあって現状があったら、そこまで段階的に上げていこうと考えてしまう。しかし、一流選手はその日によって体調が違うということを知っているから、柔軟に目標行動を上げたり下げたりしているのです。

そのように、毎日毎日適切な目標行動を設定してそれを着実にクリアしていくということをずっとやっているとゾーンに入りやすくなる。

ということが研究で明らかになっているようです。

従って組織全体で極限の集中状態を生み出すためには、スタートアップのカオス状況でストレスを感じながら、リラックス状況を整えること。そしてステップ3の「目標設定の仕方」を工夫することが大切です。

とくに日々の目標設定の仕方を、みんながきちんと行うことにより、組織としてゾーンに入りやすいのだと指摘されています。

集中状態を作り出す実験

以前、電通さんやサントリー食品インターナショナルさんなど複数の企業主催で、作業中の集中力向上についての実験が行われました。

この実験によると、25分ごとの間隔で8分間の休憩を設けること。

その休憩ごとに「ストレス(その場で5回ジャンプし、体に適度なストレスを与える)」と「リラックス(着席して両手を上げて1回伸びをし、3回深呼吸をすることでリラックスする)」状況を作ることにより、パフォーマンスが向上することが判明したそうです。

しかも何もルールを設けず、自由に作業をしてもらったグループと比べて、かなりの集中力の差が生まれていました。

参照:集中力研究プロジェクト委員会

たったこれだけのことで、高度な集中力とパフォーマンスが維持できるとは正直驚きです。同じ労力でもこれだけの差が生まれることを考えると、この休憩法をまずは自分で試してみたいと思います(また結果をnoteに書くかも)。

能力の向上を長期的に行うことは重要ですが、その育んだ能力を発揮するためには(または能力がまだ未熟な状態であったとしても)、各個人や組織全体で集中できる環境を整えることがいかに大切かを改めて感じました。


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