見出し画像

安全第一に向けて我々に出来ることはあるのか?

安全第一を達成することが何よりも重要である。

製造業の方なら一度は耳にしたことがある言葉です。

この考え方は1906年にUSスチール社のゲーリー社長が、工場の経営方針を「安全第一、品質第二、生産第三」と改めたことに由来するといわれています。

当時労働災害が多かったことに心を痛め、生産第一の考え方を変えることで安全な職場を達成する。労働災害が減ることで品質改善や生産効率も良くなったため安全に働くことは本当に大事です。

日本でも労働安全衛生法が制定され、職場における労働者の安全と健康を確保するように取り組んでおります。

労働環境は過去から改善されております。「きつい、汚い、危険」の3K作業も高度経済成長期に比べると減っております。

作業の棚卸し、機械の導入など様々な改善によって働きやすい職場へと多くの会社が変化しております。


では安全な職場になったことで災害がなく、品質や生産効率がよい職場になっているのでしょうか?

労働者の災害発生状況は死亡者数は減っておりますが4日以上の死傷者数は増加しております。

令和5年労働災害発生状況より
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40395.html

完全にゼロにすることはチャレンジングな事ではありますが増加しているということは残念な事です。

製造業の推移を見ても同様の傾向であり、ここ数年は死亡者数、死傷者数共に増加しております。

一生懸命安全な職場にしようと一人一人が取り組んでいるのになぜ災害はなくならないのか?

人が悪いのか仕組みが悪いのか対策が悪いのかと頭を悩ますことばかりだと思いますので一緒に考えていきましょう。



思考停止状態に陥りがち

昔は良くも悪くも痛い目をみて覚える文化でした。

ちょっとした怪我など「赤チンでも塗っておけ!」というベテランの一言で終わった事例も数多くあったことでしょう。

痛い目をすると人は考えるようになります。もう二度と痛い思いはしたくない。そのために目の前の作業に細心の注意を払うようになります。

自分の目でどこに危険源があるかを確認し、どのように作業すれば安全なのか自分の頭で考える。過去の先輩方は作業手順書や保護具に頼らなくても安全に作業出来ていたのです。

今は徹底的に作業手順書を作成し、誰でも作業できるように標準化されてきました。少しでも危険がある作業を実施する際には適切な保護具を着用するようになりました。

先輩方のご尽力で安全な職場になったのですが新しく入った若手は安全な職場が当たり前だとつい勘違いするようになります。

マニュアル通りにやれば怪我なんてするはずがない。

マニュアルを絶対の神様と信じ、安全だと思い込む。これで思考停止状態の出来上がり。

書いてあることを読むだけでは本当の危険性に気づけない。現地を見てどういう危険があるのかを想像する。KY(危険予知)シートは妄想だけでは書けないのでしっかりと現地を見るようにしましょう。

自分の目で見て自分の頭で行動する。忘れないように。

大ベテランの不在

製造業なら一度は聞いたことがあるその道〇〇年のレジェンド。今のルールに従うことを嫌がり、保護具だって着用するのを断る。破天荒な大ベテランだがどこに危険があるのかはよくわかっている。

大ベテランは丁寧に作業を教えてくれるわけではありません。俺の背中を見て覚えろというタイプです。

ひとたび現場へ行くと何らかの異常を見つけて帰ってくる。体の中にセンサーでも仕込まれているのでは?と思うくらいの達人業である。

それは決してマニュアルには書かれているものではありません。長年培った経験から気づくことが多いのです。まさに暗黙知の鬼である。

大ベテランはここぞという場面で適切な指導をします。不安全な行動を取ると厳しく怒る。若手がミスしないように密かにフォローしてくれる。みんな大ベテランに一度は助けてもらったことがあるのです。

そんな大ベテランも徐々に引退しています。

暗黙知を後輩に伝えることが出来ずに引退されたり、自動化によって暗黙知がないがしろにされてしまったりと技術伝承がうまく行われなかった職場が多くあります。

暗黙知を知らぬまま導入した自動化装置。本当に役に立つのでしょうか?

あの時もっと話を聞いていればよかったと後悔しても仕方ありません。

残されたメンバーで声を出し合い、問題があった時には徹底的に話し合う。そこで決めた対策を迅速に行う。

地道な積み重ねによって安全な職場を達成していくのです。継続は力なり。

経験したことないことが増えている

先人たちの努力によって作業改善がされ、負荷の大きい作業頻度が減ってきております。

1週間に1回実施していた3K作業も今では年に1回あるかどうか。5年間やってないという作業ももしかしたらあるのかもしれません。

作業頻度が下がると負荷も下がるのでいいことではあります。他の事に時間を使えるようになれば新たな改善を生み出すチャンスを得ることが出来ます。

しかし経験したことがないことが増えると心配なこともあります。いざという時の対応が遅くなるのです。勘が鈍って手順書に書くまでもない基本動作を忘れてしまって怪我することだってあります。

いざという時のために備えることはいつだって必要です。安全討議や日々の声がけはこれからも必要なのです。

人と人とが直接会って会話することが益々重要になります。

さらにテクノロジーの進化によってVRを使った体験も可能となりました。リアルに近い事故や災害の経験が出来るのはありがたいことです。

実際に怪我することなく体験できる。テクノロジーの進化に感謝です。

まとめ

過去の失敗から人は学び改善を繰り返すことで製造業の職場はとても安全で安心になってきました。

自動化設備も導入されてきたので人への依存度は下がっております。

でも人が不要となることはありません。最後は人の力によって安全を達成する必要があるのです。


「かけがえのない仲間を誰一人ケガさせない」と入社したときに口酸っぱいく聞かされてきました。

皆さんにとってのかけがえのない方は誰でしょうか?家族や友達。色んな方々の顔が思い浮かぶことでしょう。

その方々にとって職場の仲間もまたかけがえのない存在なのです。

だからこそ仲間が安心して働き、怪我をしないで家に帰る。それを達成しなければならないのです。

そのために出来ることは何か?

自分の目で見て自分の頭で行動する。仲間への声がけを徹底し、不安全行動があれば一旦作業を止める。議論して結論が出たらその対策を迅速に実施する。

当たり前のことを当たり前にやっていくことが大事なのです。

一人で行うのではなく会社全体で動きかける。トップが強い意志を示す。地道なことかもしれませんが意識改革を徐々に行っていくことで安全な職場を達成するのです。

おかしいと思ったら声を挙げる。その声が安全を達成する上で必要なのです。

いい緊張感を持って働きましょう。安全を達成するために遠慮してはいけません。

トップのリーダーシップを待つだけでなく自分自身が行動し、変化を起こしましょう。


仲間の安全を守るために。



今回もお読みいただきまして誠にありがとうございます。毎年行われております「全国安全週間」は今年は7月1日から7日となっております。

今年のスローガンは「危険に気付くあなたの目 そして摘み取る危険の芽 みんなで築く職場の安全」です。

普段の業務に追われていると安全のことを考えるの忘れてしまいがちですが安全週間を機に改めて考えてみませんか?

職場の仲間、家族と安全について話してみましょう。

今日もゼロ災でいこう、ヨシ!

以上、ご安全に!












この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?