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【車輪の上】花道を飾りたくて。

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これは、一昨年にドイツのミュンヘンを旅したときのもの。となりに写っているのは、小沢一郎さんです。

といっても、コワモテの政治家のほうではなく、こちらは出版界の小沢一郎さん。同姓同名なんです。そして、私の人生を大きく変えたのが、この小沢さんでした。

当時大学2年生だった私がNHK『青春探検』というドキュメンタリー番組に取り上げられていたのを観て、電話番号検索サービス「104」を使い(牧歌的な時代だなあ…)、すぐに自宅へ連絡をくださった小沢さん。「とても本なんか書けるわけがない」と渋る私に対して、「あなたの発信するメッセージは世の中に読まれる価値がある」と粘り強く説得してくださいました。

その結果、この世に生み出されたのが『五体不満足』(例の騒動により、Amazonレビューがすごいことになってる…)。そう、つまり小沢さんこそが『五体不満足』の生みの親、乙武洋匡を発掘した人物なのです。

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『五体不満足』と言えば、累計600万部を超えるお化けベストセラー作品。ですから、その担当編集者である「小沢一郎」の名は、一躍、出版界に轟くことになります。当然、小沢さんは鼻高々……になるかと思いきや、そうではないんです。小沢さん、ずっと心のどこかで罪悪感を抱いてきたというのです。

『五体不満足』が出版され、私も一躍、有名人となりました。だけど、いいことばかりじゃなかった。「2ちゃんねる」などの匿名掲示板では誹謗中傷を受け、家の前には週刊誌の記者が張り込むようになり、「早稲田大学の前で待ち伏せ、刺し殺してやる」という脅迫の電話もかかってくるようになりました。

「ごくフツーの大学生活を送っていた乙武君を、私が表舞台に引っ張り出してしまった」
「出版を渋る乙武君をあそこまで熱心に説得しなければ、いまでも彼は平穏な生活を送ることができていたはずだ」

たしかに、『五体不満足 完全版』(例の騒動により、こちらもAmazonレビューがすごいことになってる…)でも書いたように、出版直後の数年間は上記のようなこともあり、本を出したこと自体を後悔していたのも事実です。あまりの環境の変化に頭と心がついていけず、一年間ほど原因不明の吐き気に悩まされ、大学病院で精密検査まで受けていた時期も。

いまとなっては笑って振り返ることもできますが、当時そんな私を見ていた小沢さんは、「乙武君の人生を変えてしまった」とずっと自責の念に駆られていたというのです。もちろん、私自身はこの身体に生まれたことで親を恨んだことが一度もないように、小沢さんを恨めしく思ったことなど、ただの一度もないのですが。

あれから長い年月が過ぎました。この間もずっとコンビを組み、映画化もされた『だいじょうぶ3組』やその続編である『ありがとう3組』、東日本大震災直後の被災地を訪れた際のレポート『希望 僕が被災地で考えたこと』など、数多くの作品を手がけてきました。

そして、昨年。『五体不満足』は、めでたく20周年を迎えました。さらに、小沢さんは長らくお勤めになった講談社を定年退職することに。もう小沢さんとコンビを組むことができなくなってしまう……。そんな思いから構想を練り、二人の“卒業制作”となったのが、『車輪の上』(なぜかAmazonレビューが高評価!)だったんです。

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ところが。

先日もお伝えしたように、これがまったく売れていないんです。読んでくださった方の評判はすこぶるいいんですけどね。いかんせん、売れていない。まあ、騒動明けの一作目だしなあ。舞台は歌舞伎町、主人公はホストという大衆受けする設定じゃないしなあ。

と普段だったら、あきらめてしまうかもしれない私ですが、今回はどうしてもあきらめきれません。だって、小沢さんの引退作品なんだもん。もう一緒に本を作ることができないんだもん。これが最後の作品なんだもん。

とはいえ、こんな泣き落としをしたって、肝心なのは中身ですよね。わかっています。でもね、さっきも書いたように、その中身も読んでくださった方からの評判はいいんですよ。

いくつか貼っておきますね。

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そうそう。なんと、あの芥川賞候補にもなった“有名作家”も書評を書いてくださっているんですよ!

「車椅子ホスト」は、身体の障害よりコミュニケーションで挫折、成長する
https:/honsuki.jp/review/11499.html

みなさん、『車輪の上』をどうぞよろしくお願いします。なんとか小沢さんの花道を飾りたいんです。まだ未読の方、ぜひ買ってみてください。「もう読んだよ」という方、ぜひAmazonレビューに書き込んだり、Twitterで #車輪の上 というハッシュタグをつけて感想をつぶやいてやってください。

もちろん、書店で買ってくださっても、Amazonで買ってくださってもうれしいですし、「せっかくならサイン入りが欲しい」ということであれば、こちらのクラウドファンディングにご支援いただければ、サイン本をお送りさせていただきます。

最後に、小沢さんが講談社を退職される直前にふたりで撮った記念写真(撮影・森清氏)。

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そりゃあ、こんな顔になっちゃうよね。

それではみなさん、よい週末をお過ごしください。できれば『車輪の上』をお供に(しつこい)。

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