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シュレディンガーの純喫茶


初の大阪出張。難波の離れにホテルをとり、駅までの道中に、それはそれは渋い喫茶店を見つけた。

入り口にモーニングの黒板は出ているものの外から店中を伺うに、照明も暗く営業しているのか定かではない。トーストセットに導く文字だけが黒板に書かれているものの、OPENの文字は店先にない。

これは良い、と予感するも悲しい事に手持ちに現金がない。恨むべしキャッシュレス時代。
いや、前夜にホテル代にきっかし手持ちの現金全てを使い切った計画性の無さが原因に露わである。

喫茶店でのモーニングを断念し出張を終え関東に戻ってきたものの、やはりトーストセットが忘れられなかった。
結局最寄り駅の喫茶店、どんぐり舎にてピザトーストセットを注文。
ソファに敷かれたクタクタの座布団と相反する厚切りカリカリのトーストが出張終わりの体に沁みる。

あの大阪で見た喫茶店は果たして厚切りだったのだろうか。表面に格子の切り込みを入れて焼くタイプなのか。どんなマグカップにコーヒーが注がれたのか。

そもそも営業していたのかも扉を開けてみないと分からないが、旅先で出会った店。もう名前も覚えていない。

もう2度と出会えることはないであろうシュレディンガーの純喫茶、トーストセット。

耳はカリカリでありますように。


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