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サニーデイを聴き始めた頃の自分へ


田舎特有の国道から脇にそれたところに広がる田んぼ道。実家時代、お決まりの散歩道。
10代特有の大人への憧れから背伸びをし、斜に構えた心を元に見つけたサニーデイサービス。

これはなんだか洒落たバンドだなあと成人したてほやほやの生意気な感想を抱きつつ、本命のバンド!までハマらなかった当時からすると、28歳目前に好きな人類第一位間違いなしというほどにハマっていった今。人生にはかなりの想像力が必要らしい。

4/21の渋谷はあの日のように暖かい風が吹いた日で一日中胸が躍った。
DOKI DOKIのアルバムツアー。DOKI DOKIはどの曲もまるで青春真っ只中のように駆け抜けていくので、こわれそうやノーペンギンを聴くとまるで自分が18歳、いや、中高生の時のような無数の可能性に包まれてるような無敵感が包む。

生歌で改めて痛感したが、曽我部恵一のボーカルの声量がとにかく凄い…。ノーペンギンの『朝目覚めて』部分の朝の声量がもう圧巻の熱量。
CD音源で聴く以上にロックチューンだった。虜。

かくいう4/21の東京はもう桜は散り、深緑に包まれ、最高気温も20度半ばの日が続いていた為諦めていた曲もあったが、『次に行く北海道は、今が桜の見頃だって』という穏やかなMCが全てをひっくり返してくれた。
桜 super love。なんとなくは聴き始めたサニーデイサービスの中にグッッと引き込んでくれた一曲。田舎道を歩きながら、こんなに心地よいメロディがあるのかと放心したあの瞬間。
漠然と自由を求め上京し、揉まれ奮闘し、サブカルに熱を費やしてきたこの数年がまるで肯定されたかのような包容力のあるイントロに全てが救われ涙が流れていた。あんなに優しい顔して歌うんですね曽我部さん。

そんなしっとりした一曲の直後、春の風。コンビニのコーヒー。やはりライブハウスはこうでなくちゃと思わせてくれる観客の熱量。思わず拳が突き上がる。50代シングルファーザーの失恋ソングとは思えない。

ラストのセツナはもう言わずもがなの圧巻の時間。adidasのジャージにバンTであんな高貴なギターを無我夢中にかき鳴らす50歳。あまりに刹那的で、サニーデイサービスというバンドの走馬灯の中に引き摺り込まれているような感覚に陥った。おそらく私の走馬灯の中にもこの夜は間違いなく駆け巡る。

終演し帰宅すると想像以上の熱量と感動値に当てられ頭をくらくらさせながら床についた。
あれだけのキャリアがありながらサニーデイサービスの演奏はあまりに猛烈で昔見たような若いロックバンドの誰よりもパンキッシュだった。
おかげで、どれもCD音源では物足りなくなってしまったので、ある種良い後悔である。

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