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社会課題解決のプロトタイプをつくる「高校生プロジェクト」


【概要】

「高校生プロジェクト」は、農山漁村の課題解決につながるプロジェクトを企画・実施する、高校生向けの活動です。

炭焼き職人や漁師など、農林漁業に携わる方々から頂いた材料(木くずや破れた網などの「廃材」や、採れた野菜など)を高校生がリメイクし、モノづくりや販売を行ないました。

2015~2016年度にかけて実施。
全国各地の高校生20人以上が参加しました。


◆WEBサイトはこちら


この活動は、「聞き書き甲子園」に参加した高校生たちと一緒に立ち上げたものです。


この記事では、運営者として私がどのようなことに気を付けていたかをまとめてみました。




【意識していたこと】

1)「熱い思いを受け止めてくれる人」でい続ける

参加した高校生はもともと、「あの職人さんの為に、自分にできることをやりたい!」というやる気に満ちていました。

しかし、「やる気」だけでは、世の中上手くいきません

そんな「社会の現実」を高校生に押し付けるのも酷な話。まずは高校生に成功体験を積ませることが必要だと考え、「やりたいです!」という思いをひたすら、真正面から受け止め続けました。



2)「自分一人では見えない景色」を見せる

基本的に、私の役割は「高校生の思いを受け止める人」。従って、高校生の思いを具現化するには、どうしても誰かの助けが必要でした。

そこでまずは、高校生と対話をしながら、一緒に誇大妄想をしました。そうやって高校生をワクワクさせ、「自分一人では見えない景色」への憧れを高めていきます。

そして、高校生と「誰か」を引き合わせる。引き合わせた際の化学反応が最大化するように、事前に「妄想」でシミュレーションしたわけです。


(事例1)

「職人さんから頂いた食材で料理を作りたい!」

そう話していたこちらの二人。東京と福岡、離れて暮らす二人は、月に1度の電話会議で話す程度の関係でした。しかし・・・

「せっかく料理作るなら、その作り方を公開できたらいいよね!」
「同世代も含めて、いろんな人に作ってほしいなぁ!」
「だったら、今流行りのレシピ動画とか作れたらいいなぁ!」
「イベントやって実食してもらうのもいいねえ!」

対話を重ねるごとに、二人との妄想は、どんどん広がっていきました。

そうして生まれたのが、「映像クリエイターとコラボした、レシピ動画づくり」

休日のある日。二人は都心から外れた古民家にいました。
丸一日かけて、調理から撮影、そして動画編集まで、クリエイターの方と一緒に行ないました。


「ただのレシピ動画にはしたくないね」
「食材の提供者の名前もわかったほうがいいよね!」
「職人さんの顔写真も入れられるかな・・・」

編集作業中も、二人の妄想は止まりません・・・。


そして、ほぼ一日で一気に、超短納期で仕上げた動画がこちら。

動画のクオリティとか、この動画をつくってどんな意味があるのかとか。そんな小難しいことはいったん置いておいても良いのではないでしょうか。

「やってみたい!」という漠然とした思いから、「予想を超えたカタチで実現出来た!」という成功体験は、誰にとっても重要な経験だ。僕はそう思います。



3)「自分」から「社会」へ、見える世界を広げる

高校生にいきなり「社会を変えよう!」とか「未来のためにがんばろう!」と言っても、響きません。「社会」とは何なのか・・・・その実態が掴めないまま鼓舞しても、あまり意味がないのでは?と私は思っています。

では、何が必要か。

まずは、自分の心の声を言語化し、自分が本当にやりたいことを一緒に整理。そして、「自分はこうしたい」という思いを社会にぶつけられる場を作りました。

独りよがりの「行動」が、周りの人を巻き込み、社会性を伴った「活動」へ少しずつステップアップしていく。そのプロセスを、高校生に寄り添いながらつくっていきました。


(事例2)

宮崎県出身の彼女(当時高校2年生)は、沖永良部島の漁師に取材をしました。漁師の傍ら、島で飲食店も経営されているその方は、島でたった一人の、手作業で網を修繕する技術を持つ方でした。

「この技術が途絶えて欲しくない…」

そう話していた彼女。

「なぜ途絶えて欲しくないの?」
「どうして途絶えようとしているのだろう?」
「誰にこの事実を知ってほしい?」

そのようなやり取りを重ね、漁師の方から頂いた「破れた網」を活用したグッズを製作することに。


そして完成したのが、「網」と沖永良部島の砂を入れて、ストラップやガラスドームインテリアなどです。

完成品は、「聞き書き甲子園」の成果報告イベント(@東京大学 弥生講堂 200人超が来場)にて販売会を実施。

ただ販売するだけではなく、島の現状や、商品に込めた思いを語りながら、来場者の方に手渡していました。


このように、モノを作って売るという、一見シンプルで簡単に見えるこの行為こそ、「自分」だけの狭い世界から、自分以外の誰かがいる「社会」へ足を踏み入れる最初の一歩になったのではないかと考えています。「自分」の思いが、モノを通じて「第三者」へ伝えられたわけですから。


※後日談

ちなみに・・・
大学生になった彼女は、沖永良部島の現状を知ってもらうためのスタディツアーを開催したいと考えています。

私が主宰している「ローカル・クレイジージャーニー」というイベントでも登壇し、共感者を集める活動を続けています。

※ローカル・クレイジージャーニー
「地域で何かしたい!」という学生を、社会人が応援するイベント。高校生・大学生がプロジェクトアイデアを発表し、それに対して社会人がフィードバックを行なっています。プロジェクトをブラッシュアップさせ、「地域」と関わる学生と社会人を繋げる場として、2018年11月以降定期開催しています。





まとめ


冒頭に書きましたが、この活動は、社会課題解決に向けた「プロトタイプ」づくりの活動だと考えています。

先述したように、レシピ動画をつくったり、ガラスドームのインテリアをつくる、というプロジェクト内容一つひとつを考えると、社会課題解決に「直結」するインパクトが足りていない、というのが正直なところです。


しかし、活動の「成果」の指標は、複数あって良いと思っています。

職人や地域など、「自分以外の誰か」に愛着を持ち、その誰かに向けて自分の時間を費やす。頭を使う。努力をする。そんな経験が原体験となり、将来きっと大きなことを成し遂げられる。いや、言うならば「成し遂げられそう!」というイメージが持てる。

青臭いことを言いますが、そんな大きな夢を見られる活動が、世の中にあってもいいのではないでしょうか。

僕自身も、高校生と一緒に活動が出来たことを心から誇りに思っています。運営側としての至らなさも多く、たくさんのことを学べました。

「思い出」として残すのではなく、「糧」として次に活かせるように。そんな思いで書かせて頂きました。


少しでも、皆様の参考になれば幸いです。

最後まで読んで下さりありがとうございました!




(おまけ)

この活動では、他にもこんなこともやってました~というご紹介


▼販売時にお客さんに配布したチラシ。
ただモノを売るだけで終わらせない、思いを伝えるためにモノを売るんだという意志で、チラシも手作りしていました


▼別のチームは、チラシではなくうちわやカレンダーにまとめていました


▼木くずからアロマグッズをつくっていたチームでは、高校の友達にも協力してもらい、木の葉っぱや木くずを砕いたり煮詰めたりしていました。こうして少しずつ、仲間の輪が広がっていきました



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