微分形式練習-物理を例に(1-1)
ゲージ理論というか、微分形式の練習のための前提条件としてのゲージ場の話まとめをしておきます。
この辺の話はいろんなサイトに書いてあるし、
「わかりやすい! 誰でもわかる10分物理動画」
みたいなので誰かしらがやってるでしょうから、そっちを見たほうが手っ取り早くわかった気になれるかと思います。
そういうの作ってよって言われても、もう10番煎じくらいでしょうから、再生数稼げないし、作る意味は皆無だと思ってます。世知辛いのよ。
そういうのじゃなく、真面目に手を動かして本当になんのかなとやりたい方は毎度のごとくペンと紙をご用意の上お付き合いください。
途中計算をしつこく書いてるので、確認しながら進めると、私の誤植もよく見つかるかと思います。
win-winですね。利害の一致。
まぁ、真面目にやると言っても、数学者じゃないから、テキトーに飛ばしてやっていくわけですけどね。ベクトル解析とか。幾何学的な部分とか。
ベクトル解析は、真面目に全成分書き下せばそうなることはいずれわかりますから、やりたい人はやってみましょう。
なおこの一連の記事、いつにも増して誤植がおそらく多いです。
texで昔書いたモノを移植している関係で、noteでは使えない記法が多々あったんですよ。
かつ、元々は「だである調」で書いていたものを「ですます調」に直してます。
かなり変換に手間かかっている分ミスが予期されるわけですね。しんどい。
なんでこんなことになったかというと、元々この記事は何か本の形にしてみようかなと思っていたんです。理学系同人誌としてね。
なんですけど、私のやりたいことの90%をやった教科書が出てしまいまして……。
佐古彰史『ゲージ理論・一般相対性理論のための微分幾何入門』
この本はちょっと衝撃的でした。というのも微分幾何ってどうしても数学なので、すごく数学に偏ったキレイな記述がメインで、物理の立場との接点が薄い本ばっかりなんです。
結果、数学的な記述を自分の手で泥臭い物理的な記述に直す必要があったのですが、この本は常にどっちも書いてくれています。
つまり物理と数学の橋渡し的な部分を丁寧にやってくれています。
ただ一方でその両方を取ろうとしたがために、数学サイドからも物理サイドからも「もっとアレが欲しかった」みたいな意見も出てくるのですが、それは正直贅沢に思えます。
この手の橋渡し的な本で有名どころは
ナッシュ,セン『物理学者のためのトポロジーと幾何学』(絶版)
中原,佐久間『理論物理学のための幾何学とトポロジー』
が有名です。"中原,佐久間"は長らく絶版でしたが最近出版社を変え、第二版が出ました。
この2冊、書いてあることは佐古先生の本より多いのですが、物理的な例がタイトルの割に少なく、物理の学部生、特に独学でやるとなるとまあきついです。
(そもそも学部生だとMaxwell方程式、せいぜい一般相対論、知ってて非可換ゲージ理論くらいしか知らないわけですから)
その点この佐古先生の本はゲージ理論と一般相対性理論に絞ってくれているので、学部生でも十分に読めると思います。
それもそのはずで、佐古先生の授業、実は私も受けたことがあるのですが、数学科の授業でも物理学科の人が受けていることを前提にして話してくれているんですね。
さて、そんなすごい本が出たおかげで、役割の9割を失った本稿。
ネット空間に放流することで供養しようというわけです。
今回から数回にわたって、前提知識のまとめになります。
Maxwell方程式
本稿で用いるマクスウェル方程式は
$$
\begin{array}{}&&\nabla \cdot {{\bf E}}=\dfrac{\rho}{\epsilon_0}\\\\&&\nabla \times{{\bf B}}=\mu_0 {\bf j}+\mu_0\epsilon_0\dfrac{\partial{\bf E}}{\partial t}\\\\&&\nabla \times{{\bf E}}=-\dfrac{\partial{\bf B}}{\partial t}\\\\&&\nabla \cdot {{\bf B}}=0\end{array}
$$
です。ここで$${\nabla}$$は
$$
\begin{array}{}\nabla=\left( \dfrac{\partial}{\partial{x}},\dfrac{\partial}{\partial{y}},\dfrac{\partial}{\partial{z}} \right)\end{array}
$$
という演算子で、ナブラと呼ばれる微分のカタマリになっています。
こうやって微分をベクトル的に方向ごとにまとめると色々便利なのです。
こんな風にこのMaxwell方程式は微分を使って書かれているので、しばしば「微分形のMaxwell方程式」と呼ばれます。
ベクトル解析のStokesの公式やGaussの公式
$$
\begin{array}{}\displaystyle\int_S\nabla \times{{\bf A}}\cdot d{\bf S}&=&\displaystyle\oint_C {\bf A}\cdot d{\bf l}\;\;(Stokes)\\\\\displaystyle\int_V\nabla \cdot {{\bf A}} d{V}&=&\displaystyle\oint_S {\bf A}\cdot d{\bf S}\;\;(Gauss)\end{array}
$$
を利用することで上記の(微分形の)方程式は(左端の数式だけを取るとそれぞれ変形後の左辺右辺になります)、
$$
\begin{array}{}\displaystyle\int_V\nabla \cdot {{\bf E}}dV&&&=&\displaystyle\oint_S{\bf E}\cdot d{\bf S}\\\\&=&\dfrac{1}{\epsilon_0}\displaystyle\int_V\rho dV&=&\dfrac{1}{\epsilon_0}Q_{\in V}\\\\\displaystyle\int_S\nabla \times{{\bf B}}\cdot d{\bf S}&=&\displaystyle\oint_C {\bf B}\cdot d{\bf l}&=&\mu_0\displaystyle\oint_C {\bf H}\cdot d{\bf l}\\\\&=&\mu_0 \displaystyle\int_S{\bf j}\cdot d{\bf S}+\mu_0\dfrac{\partial}{\partial{t}}\displaystyle\int_S\epsilon_0{\bf E}\cdot d{\bf S}&=&\mu_0 I_{\in S}+\mu_0\dfrac{\partial{\Phi_E}}{\partial t}\\\\\displaystyle\int_S\nabla \times{{\bf E}}\cdot d{\bf S}&&&=&\displaystyle\oint_C {\bf E}\cdot d{\bf l}\\\\&=&-\dfrac{\partial}{\partial{t}}\displaystyle\int_S{\bf B}\cdot d{\bf S}&=&-\dfrac{\partial{\Phi}}{\partial t}\\\\\displaystyle\int_V\nabla \cdot {{\bf B}}dV&=&\displaystyle\oint_S{\bf B}\cdot d{\bf S}&=&0\end{array}
$$
まとめると、
$$
\begin{array}{}&&\displaystyle\oint_S{\bf E}\cdot d{\bf S}=\dfrac{Q}{\epsilon_0}\\\\&&\displaystyle\oint_C {\bf H}\cdot d{\bf l}=I+\dfrac{\partial{\Phi_E}}{\partial t}\\\\&&\displaystyle\oint_C {\bf E}\cdot d{\bf l}=-\dfrac{\partial\Phi}{\partial t}\\\\&&\displaystyle\oint_S{\bf B}\cdot d{\bf S}=0\end{array}
$$
という積分の形にできます。
途中で定義した$${{\bf H}}$$は(補助)磁場です。
普通$${{\bf B}}$$は磁束密度と呼ばれる量ですが、特に素粒子系の人間は$${{\bf B}}$$を磁場と呼んでしまうんです。
$${{\bf H}}$$は基本的に登場しない量なんですね。
それだと$${{\bf H}}$$はなんと呼ぶのかというと、補助磁場、補助場などと呼日ます。
でも補助場はまた別の用語で登場するのでとてもややこしい状況だったりします。
$${\Phi}$$は磁束、$${\Phi_E}$$は電束と呼ばれる量です。
磁束はまだよく聞くかもしれませんが、それの類推で電束も定義されるわけですね。
またここで式の添え字にある$${\in V,\in S}$$はその領域内に含まれるモノをカウントするという意味の略記です。
めんどうなのでこう書いていますが、ちゃんと書くなら、
$$
\displaystyle\sum_{i \;{\rm in}\; V}Q_i
$$
などとするべきです。
この結果はそれぞれガウスの法則、アンペール(・マクスウェル)の法則、ファラデーの(電磁誘導の)法則、磁場におけるガウスの法則で、ともすると高校生でも聞いたことがあるかもしれません。
Maxwell方程式はこんなふうに積分とベクトルだけで書けるので、ベクトル解析を深く知らないうちはこっちの積分形を主に学んで、Maxwell方程式と呼ぶことが多いと思います。
ただ、一度ベクトル解析を知ると、前者微分系の方がシンプルだし、微分方程式なら解き方がある程度わかるということもあってか、大学も三年くらいになると微分のMaxwell方程式を特にMaxwell方程式と呼ぶことが多いんです。
特に、ふつう素粒子の界隈ではMaxwell方程式と言ったら微分形のMaxwell方程式を指すようで、ウチの教授なんかには「積分形なんて言い方するんだ」「(積分形の方を指し)それMaxwell方程式って呼ぶ人初めてみた」と言われたほどです。
ポテンシャルによる表記
以上のMaxwell方程式は電場や磁場での記述ですが、これをポテンシャル$${\phi}$$やベクトルポテンシャル$${{\bf A}}$$といった別の量で表現することも可能です。
$$
\begin{array}{}{\bf E}&=&-\nabla{\phi}-\dfrac{\partial {\bf A}}{\partial t}\\{\bf B}&=&\nabla \times{{\bf A}}\end{array}
$$
こんなふうに導入して、
$$
\begin{array}{}-\nabla \cdot\nabla{\phi}-\nabla \cdot\dfrac{\partial {\bf A}}{\partial t}&=&\dfrac{\rho}{\epsilon_0}\\\\\nabla \times\nabla \times{{\bf A}}&=&\mu_0 {\bf j}-\mu_0\epsilon_0\dfrac{\partial}{\partial t}\nabla{\phi}-\mu_0\epsilon_0\dfrac{\partial}{\partial t}\dfrac{\partial {\bf A}}{\partial t}\\\\-\nabla \times\nabla{\phi}-\nabla \times\dfrac{\partial {\bf A}}{\partial t}&=&-\dfrac{\partial}{\partial t}\nabla \times{{\bf A}}\\\\\nabla \cdot\nabla \times{{\bf A}}&=&0\end{array}
$$
こうすると下二つはベクトル解析の恒等式から$${0}$$といえます。
$$
\begin{array}{}&&\nabla \times(\nabla{\phi})=0\\\\&&\nabla \cdot (\nabla \times{{\bf A}})=0\end{array}
$$
同じくベクトル解析の式として、
$$
\begin{array}{}&&\nabla\cdot\nabla\phi=\nabla^2\phi\ \\\\&&\nabla \times \nabla \times{\bf A}=\nabla( \nabla\cdot {\bf A} )-\nabla^2 {\bf A}\end{array}
$$
があるので、上の二つの式は、
$$
\begin{array}{}&&-\nabla^2{\phi}-\nabla \cdot\dfrac{\partial {\bf A}}{\partial t}=\dfrac{\rho}{\epsilon_0}\\\\&&\nabla(\nabla\cdot {\bf A})-\nabla^2{\bf A}=\mu_0 {\bf j}-\mu_0\epsilon_0\dfrac{\partial}{\partial t}\nabla{\phi}-\mu_0\epsilon_0\dfrac{\partial}{\partial t}\dfrac{\partial {\bf A}}{\partial t}\end{array}
$$
を経て、下の式はもう少し変形し、
$$
\begin{array}{}\nabla(\nabla\cdot {\bf A})-\nabla^2{\bf A}+\mu_0\epsilon_0\dfrac{\partial}{\partial{t}}\nabla{\phi}+\mu_0\epsilon_0\dfrac{\partial^2 {\bf A}}{\partial t^2}=\mu_0 {\bf j}\\\\\nabla\left(\nabla\cdot {\bf A}+\mu_0\epsilon_0\dfrac{\partial}{\partial t}{\phi}\right)-\left(\nabla^2-\mu_0\epsilon_0\dfrac{\partial^2}{\partial t^2}\right) {\bf A}=\mu_0 {\bf j}\end{array}
$$
以上から二式は$${\mu_0\epsilon_0=\dfrac{1}{c^2}}$$であることを用い、
$$
\begin{array}{}&&-\nabla^2{\phi}-\nabla \cdot\dfrac{\partial {\bf A}}{\partial t}=\dfrac{\rho}{\epsilon_0}\\\\&&\nabla\left(\nabla\cdot {\bf A}+\dfrac{1}{c^2}\dfrac{\partial}{\partial t}{\phi}\right)-\left(\nabla^2-\dfrac{1}{c^2}\dfrac{\partial^2}{\partial t^2}\right){\bf A}=\mu_0 {\bf j}\end{array}
$$
さて、ここで相対論のことを考えると、$${t}$$はそのままより$${ct}$$の組になっている方が良いでしょう。
そこで一式目を$${c}$$で割り、その他$${ct,cdt}$$をまとめるよう努力すると、
$$
\begin{array}{}&&-\nabla^2\dfrac{\phi}{c}-\nabla \cdot\dfrac{\partial {\bf A}}{\partial (ct)}=\dfrac{\rho}{c\epsilon_0}=\dfrac{c\rho}{c^2\epsilon_0}=\mu_0 c\rho\\\\&&\nabla\left(\nabla\cdot {\bf A}+\dfrac{\partial}{\partial (ct)}\dfrac{\phi}{c}\right)-\left(\nabla^2-\dfrac{\partial^2}{\partial (ct)^2}\right){\bf A}=\mu_0 {\bf j}\end{array}
$$
ここで、いわゆるゲージ固定条件を考えます。
ローレンツ条件$${\dfrac{1}{c^2}\dfrac{\partial \phi}{\partial t}+\nabla\cdot{\bf A}=0}$$の場合、
$$
\begin{array}{}&&-\nabla^2\dfrac{\phi}{c}-\dfrac{\partial}{\partial (ct)}\underline{\nabla \cdot{\bf A}}\\\\ &=&-\nabla^2\dfrac{\phi}{c}+\dfrac{\partial}{\partial (ct)}\dfrac{1}{c^2}\dfrac{\partial\phi}{\partial t}\\\\ &=&-\nabla^2\dfrac{\phi}{c}+\dfrac{\partial^2}{\partial (ct)^2}\dfrac{\phi}{c}\\\\ &=&\left(\dfrac{\partial^2}{\partial (ct)^2}-\nabla^2\right)\dfrac{\phi}{c}\\\\&=&\mu_0 c\rho\\\\\\ &&\nabla\underline{\left(\nabla\cdot {\bf A}+\dfrac{\partial}{\partial (ct)}\dfrac{\phi}{c}\right)}-\left(\nabla^2-\dfrac{\partial^2}{\partial (ct)^2}\right){\bf A}\\\\ &=&\left(\dfrac{\partial^2}{\partial (ct)^2}-\nabla^2\right){\bf A}\\\\&=&\mu_0 {\bf j}\end{array}
$$
このように、綺麗に式がまとまります。
$$
\begin{array}{}&&\left(\dfrac{\partial^2}{\partial (ct)^2}-\nabla^2\right)\dfrac{\phi}{c}&=&\mu_0 (c\rho)\\\\&&\left(\dfrac{\partial^2}{\partial (ct)^2}-\nabla^2\right){\bf A}&=&\mu_0 {\bf j}\end{array}
$$
大変恣意的だが、このように見ると$${(c\rho)}$$が$${{\bf j}}$$の仲間に見えてくるし、それと同じ対応で$${\dfrac{\phi}{c}}$$も$${{\bf A}}$$の仲間としてみるべきに思えますね。
そう思えたらあなたもすっかり相対論の術中にはまっているわけです。
なんでも四成分に見えませんか?
$$
A=\left(\dfrac{\phi}{c},{\bf A}\right), J=\left(c\rho,{\bf J}\right)
$$
としてしまいます。
そのあかつきには、
$$
\begin{array}{}&&\left(\dfrac{\partial^2}{\partial (ct)^2}-\nabla^2\right)A=\mu_0 J\end{array}
$$
となるでしょう。
もっと相対論的にいえば、ナブラ$${(\nabla)}$$の二乗もナブラが三成分なのが気持ち悪くなるので、
$${\square=\dfrac{\partial^2}{\partial (ct)^2}-\nabla^2}$$
なんて置いてしまうわけです。
大雑把に言って$${\nabla^2=\triangle}$$と書くので、それに倣って四角なんですね。
$$
\begin{array}{}&&\square A^\nu=\mu_0 J^\nu\end{array}
$$
みたいになるのですな、この辺り$${\square}$$のいろいろな意味などは以下続々みていくことになります。
ここまでくるとMaxwell方程式もキレイというか妙にこざっぱりした印象になりますね。
計量、微分、ベクトル
Minkowski空間の計量の定義は
$$
\begin{array}{}g_{\mu\nu}=\begin{pmatrix}1&0&0&0\\0&-1&0&0\\0&0&-1&0\\0&0&0&-1\end{pmatrix}=(+---),\;\;g^{\mu\nu}=\begin{pmatrix}1&0&0&0\\0&-1&0&0\\0&0&-1&0\\0&0&0&-1\end{pmatrix}\end{array}
$$
でとします。すなわち、
$$
\begin{array}{}(ds)^2=(cdt)^2-(dx)^2-(dy)^2-(dz)^2\end{array}
$$
というわけです。
計量の符号の取り方は、多様でして、途中式や項の正負が他の文献と異なるところがあるかもしれません。
たとえば計量については$${(-+++)}$$をとる流儀もあります。
これだと空間部分がユークリッド空間、つまり普通の三平方の定理の形になるんですね。
計量を用いることで添字の上下を動かすことができます。
$$
\begin{array}{}V_\mu V^\mu=g_{\mu\nu}V^\nu V^\mu=V^\nu V_\nu=V^\mu V_\mu\end{array}
$$
ここで、上下に同じ添字が出てきた場合は添字を適切な数値、例えば(1+3)次元の時空なら(0,1,2,3)で和を取ることを意味します。
この添字はペアになってさえいれば和が取れるものなので、その文字そのものにはあまり深い意味はない。
私がよく話す冗談ですが、$${V_も V^も}$$や$${V^猫V_猫,;V^@V_@}$$でもよいということです。
この規則に従うと、例えば、
$$
\begin{array}{}V_\mu V^\mu&=&V_0V^0+V_1V^1+V_2V^2+V_3V^3\\\\g_{\mu\nu}V^\nu V^\mu&=&g_{00}V^0V^0+g_{11}V^1V^1+g_{22}V^2V^2+g_{33}V^3V^3\\\\&=&V^0V^0-V^1V^1-V^2V^2-V^3V^3\end{array}
$$
となります。本noteでは特筆しない限りギリシャ文字は時空間を表し0~3を、ローマ文字は空間を表し1~3をとるものとします。
偏微分もベクトルのようにして扱うことができます。添字の上げ下げについて、
$$
\begin{array}{}\partial_\mu&=&(\partial_0,\partial_i)&&=&&\left(\dfrac{1}{c}\dfrac{\partial}{\partial{t}},\dfrac{\partial}{\partial{x}},\dfrac{\partial}{\partial{y}},\dfrac{\partial}{\partial{z}}\right)\\\\\partial^\mu&=&(\partial^0,\partial^i)&=&g^{\mu\nu}\partial_{\nu}&=&(g^{00}\partial_0,g^{11}\partial_1,g^{22}\partial_2,g^{33}\partial_3)\\\\&=&(\partial_0,-\partial_1,-\partial_2,-\partial_3)&&=&&\left(\dfrac{1}{c}\dfrac{\partial}{\partial{t}},-\dfrac{\partial}{\partial{x}},-\dfrac{\partial}{\partial{y}},-\dfrac{\partial}{\partial{z}}\right)\\\\&=&(\partial_0,-\partial_i)\\\\\partial_\mu\partial^\mu&=&g^{\mu\nu}\partial_\mu\partial_\nu&&=&&\dfrac{1}{c^2}\dfrac{\partial^2}{\partial t^2}-\dfrac{\partial^2}{\partial x^2}-\dfrac{\partial^2}{\partial y^2}-\dfrac{\partial^2}{\partial z^2}\\\\&=&\square\end{array}
$$
となります。
ここにも出てきた$${\square}$$はダランベール(d'Alembert)演算子、またはダランベルシアンと呼ばれる量です。
改めて紹介すると、コイツは三次元ユークリッド空間で言うところのラプラス(Laplace)演算子、これの四次元時空版の演算子です。
以上の定義から具体的な量を成分で表すことができます。例えばベクトルポテンシャル$${A^\mu}$$やソース$${J^\mu}$$は、
$$
\begin{array}{}A^\mu&=&\left(\dfrac{\phi}{c},A^i\right)&=&\left(\dfrac{\phi}{c},A_x,A_y,A_z\right)\\\\A_\mu&=&\left(\dfrac{\phi}{c},A_i\right)&=&\left(\dfrac{\phi}{c},-A^i\right)&=&\left(\dfrac{\phi}{c},-A_x,-A_y,-A_z\right)\\\\J^\mu&=&(c\rho,j^i)&=&(c\rho,j_x,j_y,j_z)\\\\J_\mu&=&(c\rho,j_i)&=&(c\rho,-j^i)&=&(c\rho,-j_x,-j_y,-j_z)\end{array}
$$
と書けます。
今回はこれだけ長い記事を書いて、記法とMaxwell方程式の変形しかしていませんね。
先が思いやられる量ですが、なにとぞこの先もお付き合いを。