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原状回復・敷金返還相談センターの存在意義

なぜ多くの人が「非弁行為(弁護士法第72条)」、「非弁提携(弁護士法第27条)」、「非弁護士との提携の罪(弁護士法第77条)」について検索しているのでしょうか?

「非弁行為」に関する検索が多い社会的情勢の原因は、実はデジタルシフトした社会である

コロナ禍の影響により、原状回復に伴う敷金返還の相談件数が急激に増加しています。独立行政法人国民生活センターによると、2021年には14,109件、2022年には8,759件の相談が寄せられています。賃貸住宅の原状回復ガイドラインがあるにも関わらず、社会情勢の変化によって問題が多発している状況です。

「原状回復」とは、日本で独自に発展した物件の明渡しに伴う美装工事の総称です。法律用語では借主の原状回復義務であり、原状回復が終わらないと敷金返還請求権が確定しません。

敷金(預託金)を支払っている場合、原状回復の問題は「敷金返還事件」として扱われます。
ガイドラインの対象である賃貸住宅は速やかに調停で解決できますが、事業を行うための賃貸契約では、個人、法人に関わらずガイドラインの対象外となるため、中小企業や個人事業主の明渡しに伴う原状回復・敷金返還のトラブルが後をたちません。

日本全国の中小企業、個人賃貸借のトラブルは、更新協議、家賃滞納、家賃の増減額協議、原状回復高騰問題、敷金返還など、毎年およそ2万件を超えるといわれています。

コロナ禍によりビルオーナーもテナントも財務が損傷したため、このような社会情勢となっています。このため、当協会には、家賃の滞納、空室率の上昇、オーナーからの退去要請に伴う原状回復・敷金返還問題など、多くの相談が寄せられています。

カリフォルニア州サンフランシスコでは、金利が上がり銀行がデジタル・バンク・ランにより破綻し、商業不動産ローンのデフォルトが多発しています。また、空室率は史上最大35%を超え、家賃も15%程度下落し、土地建物査定額(アセスメント)も2019年対比で2割から3割下落傾向です。これは、テレワーク、ハイブリッドワークが8割に迫るカリフォルニアにおいては、ライフワークスタイルが急激に変化し、ビジネスパーソンの価値観も変わったためです。この傾向は、全米や英国連邦ロンドン、カナダ、オーストラリアでも顕著に見られます。

では日本はどうでしょう?
東京5区では、テレワークやハイブリッドワークの導入が約50%に近づいています。ワークスタイルが急速に変化し、ハブ&スポーク型のオフィス・店舗がトレンドとなっています。

働き方をサーベイし、ワークプレイスを見直し、賃貸契約を解約となった場合、明渡しに伴う原状回復義務履行と敷金返還について協議する必要があります。
強い姿勢で相手と協議する場合には、エビデンスが必要です。ビルオーナーの代理人であるAM、PM、BM業者から、原状回復の適正金額の根拠を求められることもあります。相見積もり業者と話し合いをすることは、非弁行為となるため注意が必要です。テナントの移転責任者は、法律について調べる必要が生じます。

こういったことから、弁護士法についての検索が多くなった原因は、デジタルシフトした社会によりワークスタイルが変化し、ビジネスパーソンの意識が変わったことが最大の理由だと考えられます。

オーナー側業者も、テナントの代理人である弁護士との協議に参加すると、法律に反する非弁行為になります。オーナーもテナントもトラブルは回避したいところです。

トラブルになった時、弁護士費用を考慮して費用対効果を考え、依頼する必要があります。しかし、中小企業にとっては弁護士費用が高額であり、費用対効果が低くなってしまいます。

この課題解決を目的として当協会では「中小規模オフィス・店舗専用|原状回復・敷金返還相談センター」を運営しております。

※上記は筆者の実体験に基づく個人的な意見です。

非弁行為とは?弁護士法第72条と関連する弁護士法を分かりやすく解説

弁護士法についての解説ですが、特に弁護士法第72条と関連する内容を分かりやすく説明します。
弁護士法に関するよくある質問(FAQ)は、主に弁護士法第72条、第27条、第77条に関するものがあります。

弁護士法第72条「非弁行為」

弁護士でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訴訟事件及び審査請求、再審査請求等行政庁に対する不服申し立て事件、その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁もしくは和解などを禁止する法律です。これらの行為は「非弁行為」と呼ばれています。また、周旋屋として事業を行うことも禁止されています。

弁護士法第27条「非弁提携の禁止」

弁護士は、第72条乃至第74条に規定に違反する者から事件の周旋を受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。これは周旋屋と組んで弁護士業務を行わないということです。「非弁提携の禁止」と呼ばれています。

弁護士法第77条「非弁護士との提携の罪」

いわゆる非弁行為及び非弁提携ならびに係争権利の譲受の禁止に関する罰則規定です。罰則規定は弁護士に対する規定が主です。2年以下の懲役又は300万円以下の罰金の対象となります。


原状回復費用の高騰問題は全て敷金返還が関連しており、敷金返還事件として事件番号が指定されます。東京地裁では民事22部の建築専門部会で審議することになります。この仕組みは、高い専門知識が必要な建築設備と借地借家法に基づいて審議し、より公正な裁判を行うために作られたものです。

簡単に説明すると、
原告、被告、そして裁判員のいずれもが、原状回復の見積もり作成やその内容を監査できる建築設備と借地借家法の専門家の存在を求められる仕組みです。

7つの重要書類である契約書、指定業者原状回復見積書、原状回復特約、工事区分、原状確定図書、原状変更図書、館内規則を理解してはじめて法令遵守の原状回復見積を作成できます。

執筆者ワンポイントアドバイス

ビルの管理は、AM・PM・BM業者に委託されています。借主が中小企業であれば、弁護士や専門家が不在の場合が多いです。
原状回復高騰問題、敷金返還問題など専門性の高いエビデンス(原状回復適正査定)を作成することは、弁護士でさえ不可能です。原状回復・B工事の適正査定を業とする業者に依頼するといいでしょう。

弁護士の業務は、エビデンスによる原状回復問題点の指摘、問題についての法的考察からなるロジックの構築、そして争点の明確化です。全ての判断基準はエビデンス(原状回復適正査定書)なのです。

2020年4月より民法が改正され、原状回復や敷金についての定義と目的が明文化されました。第621条により原状回復の範囲や工事内容もより詳しく明文化されています。
敷金についても第622条の2第1項により、敷金の定義、敷金返還時期の明文化は貸主責任となりました。

全ての法的基準は、改正民法が最大の考慮要件です。


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