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NO.2の育て方⑭NO.2は多重人格者がいい

仕事をしていて優しいのか、厳しいのか、いい加減なのかと人によって印象が全く異なる人がいます。人の性質はなにもひとつではありませんので、いろんな面があってもいいと思いますし、むしろそれが自然です。そしてNO.2のポジションにいる人こそ多重人格者と思われるほど多様な側面を持ち合わせていた方がいい、今回はそんな話です。

■孫子の兵法に見る優れたリーダーの5つの条件

孫子の兵法、計篇の中に将軍の5つの条件というものが記されています。将軍とは君主に仕え、現場を統括するリーダーを指します。これをNO.2に読み替えて解説していきます。

「将軍とは、智、信、仁、勇、厳なり」

智 勝算のあるなしを見分ける能力。状況判断能力、先見性。
信 約束を守る。信用、信頼。
仁 思いやり。
勇 決断力。
厳 ルールを守る、守らせる厳しい態度。

孫子の兵法「計篇」

ぱっと読んでどのようなイメージが浮かんだでしょうか。冷静沈着で厳しくとも人の気持ちに寄り添う器量を併せ持った人物が浮かぶと思います。諸葛孔明を思い浮かべる人もいるかもしれませんね。

現場を指揮するにあたり、言われてみればどれも必要な要素かもしれないと改めて感じる方も多いのではないでしょうか。

頭が良く、正論を突き付けられてもそれだけは人はついてきませんし、あまり深い考えもないまま猪突猛進でも現場は困るでしょうし、優しいだけの人、厳しいだけの人も同様だと思います。

ちなみに、孫子の兵法で言うところのリーダー像のこの5つの条件は智→信→仁→勇→厳という優先順位があり、必ずしも同列で扱ってはいません。順位はあるものの、同時に兼ね備えていなければいけない性質として列挙しています。先ずは冷静沈着さを求めているのは特徴的かもしれません。

リーダーシップやマネジメントを説いた書籍においても、さまざまなリーダー像や性質やスキルについての言及が多いと思いますが、孫子の兵法に要約されているのではないかと個人的には考えています。

■人との関りにおいては多面的な性質を持ち合わせていなければ対応できない

頭がいいだけ、優しいだけ、厳しいだけの人に部下としてついていくのはかなり困るというのが現実だと思います。本稿タイトルでは多重人格者と少々大袈裟な表現を使いましたが、状況に応じて、態度や行動が変わるのはむしろリーダーとしては当然であるはずです。

部下の中には、厳しくされると萎縮してしまったり、不満や反発心を覚えたりする人もいるでしょうし、優しく接してもらっていてもどこか頼りなく感じたり、上司に対してなめてかかったりする人もいるでしょう。

組織は人の集合体ですから、統率する対象である部下もさまざまなタイプの人間がいますし、また状況にもよりますから、臨機応変に対応することはNO.2としても必須の能力と言えます。

自分の性格は●●だからという理由で、対応が偏りがちになるリーダーは多いと思います。そのことへの警鐘として本稿があります。

対応方法もまたやり方次第です。優しい対応や表現でも内容自体は厳しいこともあるでしょうし、厳しいようでも愛情を感じる場合もあるでしょう。人によって受け止め方もさまざまですから、柔軟に対応しなければなりませんし、自分の性格を言い訳にして、厳しくできない、優しくできないのでは現場のリーダーとして失格です。

■NO.2は得体の知れない人と思われていい

得体の知れない人と思われるのは嫌だなと感じる人もいるかもしれませんが、その心理は無意識に自分というものを理解して欲しい、認めて欲しいといった気持から来るのではないでしょうか。

NO.2の存在は、社長を補佐する縁の下の力持ち、裏方とこれまでも再三お伝えしてきましたが、自らの職務を遂行するためには、乱暴な言い方をすれば、部下から個人的にどう思われたいかという気持ちよりも、NO.2の職責を全うするために変幻自在に振舞うことを優先した方が良いと思います。

その結果、得体の知れない人と思われるのであれば、仕事冥利に尽きると感じられるのが正しいNO.2の在り方です。社長の補佐役として多くの課題に対峙するNO.2には組織を良くするという大きな使命がありますから、成果を出すためにどんな役回りも演じ切る覚悟が必要です。

■人間というものを深く理解するのも仕事のうち

孫子の兵法で智が貴ばれるのは考えなしに行動することの愚かさを説いている訳ですが、以下は対人における信頼や思いやりといったソフト面と組織を維持するための規律や秩序を遵守するハード面を説いています。組織活動というものは人間が持つ矛盾する感情や欲などといかに向き合い、取り扱うかが重要になってきます。

組織を牽引していくために最も必要なことは部下をはじめとする人間というものへの深い理解ですから、その理解に基づき、時としてNO.2は鬼にでも仏にもなる必要がある訳です。

部下に慕われる優しいだけの上司を演じるか、恐れられるばかりの厳しい上司を演じるか、その両方をいかに両立させるか、NO.2は組織において社長以上に立ち振る舞いが難しいポジションではありますが、敬愛する社長の補佐役を全うするためにも考えてみて頂きたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます。