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生活者イノベーターを大解剖!共創を成功させるヒントを探る/USER INNOVATION LAB. レポートVol6

本記事は博報堂と法政大学西川英彦研究室の共同で立ち上げましたユーザー・イノベーションの研究会「USER INNOVATION LAB.」の活動をレポートする連載です。
 (「ユーザー・イノベーション」「USER INNOVATION LAB.」の詳細は下記をご覧ください。)

こんにちは!
 博報堂ブランド・イノベーションデザインの比留川と申します。

 2020年に博報堂に入社した2年目で、主に企業の商品開発の支援を担当しております。

今回のテーマは、生活者イノベーター(高いイノベーションスキルを持つ生活者のことで、消費者イノベーターとも呼ばれる)との共創です。

よく「イノベーションが大事だ!」とか「イノベーティブな生活者と商品開発しよう」というフレーズを見聞きします。

でも、実際に「イノベーター」と出会ったことはありますか?

「正直、本当にイノベーターがいるのかわからない」「生活者からイノベーティブなアイデアが出ることなんてなかった」など、「イノベーター」がよく理解できない存在になっている人も少なくないのではないでしょうか?

それもそのはずで、ある調査(※)によると日本人全体における生活者イノベーターの割合は3.7%という結果が出ています。

※MIT教授であるエリック・フォン・ヒッペルを中心とした日本、米国、英国の 3ヶ国の 18 歳以上を対象にした調査。
出所:von Hippel, Eric, Susumu Ogawa, and Jeroen P. J. de Jong (2011), “The Age of the Consumer-Innovator,” MIT Sloan Management Review, 53(1), 27-35 .

100人に3、4人の確率ですので、とりあえずユーザーを集めてヒアリングしてみても生活者イノベーターにはなかなか出会えません。

そこで本レポートでは、生活者イノベーターの実態を理解すべく、実際に生活者イノベーターをお招きした4回目となる研究会(以下、研究会#4)の内容をご紹介。

「イノベーターって何をしているの?」「イノベーターとの共創で大事にすべきポイント」の2点に絞ってお伝えします。

「イノベーター」って何をしているの?

研究会#4では、ゲストとして3名の生活者イノベーターをお招きしました。 まず、彼らのプロフィールとイノベーション活動についてご紹介していきます。

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1人目は、筆者と同じ博報堂ブランド・イノベーションデザイン(※)でプロダクトデザイナー/プランナーをしている德田周太です。(※研究会当時の所属。2021年4月より北陸博報堂。)

高専と大学でプロダクトデザインを学んできた経験を生かし、個人でも制作活動を行っています。趣味で3Dプリンターを使ったものづくりもしているそうです。

徳田さんのイノベーション活動では、身の回りの困り事を解決するようなモノを自分で作ることが多いとのこと。

例えば、「親にスマホの操作を遠隔で教えるのに苦労した」「手を拭いたびしょ濡れのタオルをそのままカバンにしまうのが嫌だ」など、自分の身の回りで感じる課題や不満を常日頃メモしているそう。

日常的にメモしている不満を、業界や企業が抱える課題やシーズとかけあわせてプロダクトを試作したりしているそうです。

イノベーションというと大層な取り組みをイメージしてしまいますが、徳田さんは、イノベーション活動を「まずは身の回りから便利・快適にしていく試み」と解釈しています。

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2人目は、某IT企業でプランナーをしている清水覚(さとる)さん。本業では、ブランディングに関する企画ディレクションやコピーワークをされています。

清水さんのイノベーション活動では、クラウドソーシングのサイトを活用し、企業から募集のある案件に応募しているとのこと。

(前回の記事で、クラウドソーシング法について詳しく解説しています。)

面白いことに、清水さんはスポーツマーケティングなど自分の本業では関わることがない領域のテーマにあえて応募しています。

業界知識があまりないからこそ、その業界になかった発想でアイデアを提案できるそうです。

自分が詳しくない領域の商品やサービスのアイデアを考えるのって難しいのでは?と疑問に感じるところですが、清水さんはクラウドソーシングのプラットフォーム上で自分に不足している知見を持った人を集め、チームを作って取り組んでいるとのこと。

ドローンスポーツのサービスの提案をする際には、ドローンサッカーに詳しい人を見つけ参加してもらったそうです。

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3人目は、某自動車メーカーで企画・設計の橋渡しをしている池戸憲夫(のりお)さん。余暇の時間は、個人事業主としてガジェットの筐体などの開発・販売を行っています。

趣味のダイビングでは、アマチュア最高峰の資格をとるほどの極めっぷり。全力で遊び、自分が徹底的にユーザーになることでニーズをみつけ、自分が欲しいと思ったものを自分で作る。

周りの反応がよければ、販売まで一人で行うというスタイルで活動されています。

スノーボードも趣味の一つで、「10万円以上する高価なスノーボードをゲレンデに放置して食事をするのがストレスだった」という自らの経験から、安心して食事ができるように、 遠隔監視できるデバイスを開発したそうです。

加えてデバイスを開発して終わりではなく、そのデバイスにニーズがあるかを確認するため自らさまざまな展示会に出展するなど精力的に活動されています。

イノベーション創発活動を行うモチベーション

3人のお話しを聞いていると、本業もあり忙しい中で、お金も時間もかけてイノベーション活動に取り組んでいることに気づきます。

何が彼らを突き動かすのか?
3人がイノベーション創発活動を行う動機について聞いてみました。

德田さんは、身の回りを少しずつ快適にしたいから。
清水さんは、自分の本業ではできないことがしたいから。
池戸さんは、目立ちたいから。(かざらないその返答に一同驚きました。笑)

清水さん、池戸さんの回答に注目してみると、ユーザー・イノベーションの学術的な観点から、とある面白いことに気づきます。

ユーザー・イノベーションの研究では、企業が自社の分野から離れた分野の情報にアクセスできると、ブレイクスルーにつながるイノベーションが起きやすいと言われています。

清水さんは、本業では得られない経験をしたいという動機から、あえて自分の領域から遠い企業の課題に挑戦。

また、池戸さんはすごいと思われたいから、自分と同じスキルを持った人があまりいない領域でのイノベーション活動に取り組むのだそうです。

企業から見ると、清水さん、池戸さんは自社の領域から遠い分野に強みをもっている存在。

図らずとも、お二人のモチベーションは、イノベーションを起こしたい企業の「自社の分野外の情報にアクセスしたい」というニーズとマッチしているのです。

イノベーターとの共創で大事にすべきポイント

3人のイノベーション活動についてイメージがわいたところで、もう参加したくない/また参加したいと思ったプロジェクトとその理由についても深掘ってみました。

その中でも特に議論が盛り上がったポイントをお伝えします。

こんなプロジェクトは嫌だ:集めたアイデアを実現する意志が見えない

清水さんは、「実現可能性が低いテーマや、募集企業が自社のアセットを生かしていないようなテーマには応募しない」と言います。

また、池戸さんは「生活者の意志よりもSDGsなど流行りのテーマを取り入れたいという思いが優先されたプロジェクトには参加しない」とのこと。

プロジェクトをその企業がやる意味が明確になっており、実際にビジネスとして実現させようとする意志がみえることが重要だということが伺えます。

こんなプロジェクトなら参加したい:担当者個人の想いが共有され、チームの一員として参加できる

3人とも口をそろえて言っていたのが、「企業側が、単にアイデアをもらうだけというスタンスの場合は、参加したくない」ということ。

逆に、「自社内でここまで取り組んだけど、うまくいっていないから力を借りたい」など、コンペ形式でのアイデア募集に至った背景や企業担当者の想いがきちんと説明されているプロジェクトには参加したくなるとのことでした。

「アイデアを出すユーザーと、もらう企業」という関係ではなく、想いを共有し一緒にプロジェクトの成功を志す一つのチームとしての関係を築くことが大事なのだと思います。

この研究会に参加している企業の方からは、「よくわかんないから外にだそう、という話ではだめ。考え抜いて、自分たちの悩みを明確にすることが大事だと感じた。」と気づきの声があがりました。

以上が、研究会#4の内容のまとめです。

個人的に驚いたのは、3人とも自分を「イノベーター」だと思っていなかったこと。清水さんは「しがない副業サラリーマン」と自称していました。

イノベーターの割合は3.7%というのは先述のとおりですが、「イノベーターの人、集まってください」と声をかけて集まるものでもないということです。

だからこそ、前回までの記事でお伝えしてきたリードユーザー法やクラウドソーシング法といった生活者イノベーター探索の方法論に基づくことが大事になります。(ということが、実際のイノベーターの話を聞いてやっと腹落ちしました。)

次回、ユーザーから製品アイデアを集めるプラットフォームの苦悩を聞く

今回は企業と共創する生活者イノベーターの話を伺いましたが、次回は生活者イノベーターと共創する企業側のお話を伺います!

ゲストは、100均の商品アイデアを投稿・応援するプラットフォームの「みん100」を運営する株式会社みん100さん。

クラウドソーシング法を活用したユーザーとの商品開発での成功談・失敗談を赤裸々に語っていただきます。

またレポートしますので、お読みいただけますと幸いです!
(ついでにフォローもいただけると嬉しいです!!)

★社内だけでの製品開発に限界を感じている方、ユーザー・イノベーションを自社で取り入れてみたい、と興味がわいた方は、ユーザー・イノベーション・ラボ事務局(uilab@hakuhodo.co.jp)までお気軽にお問い合わせください。

<参考文献>
von Hippel, Eric, Susumu Ogawa, and Jeroen P. J. de Jong (2011), “The Age of the Consumer-Innovator,” MIT Sloan Management Review, 53(1), 27-35 .



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