高校時代の彼氏の話 骨折編(後編)

前編はこちら

学校を遅刻したり早退したりサボったりしてきた高校3年生が、9月下旬に1ヶ月半入院するとどうなるか?

答え・卒業が危うい。

進学就職以前の問題である。

点数よりも出席日数が足りない。

病室で補講

入院中に担任が何度も来てくれた。

担任「晴嘉さん、出席日数が足りません。卒業が危ういです。」

私 「はい。わかっております。」

担任「プリントを出すのでやってください。
プリントをちゃんとやったら授業に出たことにします。」

私 「え?真面目に出てる子に申し訳ないです…」

担任「プリントをちゃんとやったら授業に出たことにします。」

私 「…ありがとうございます。頑張ります。」

受験シーズンに進学校の先生になんてめんどくさいことをさせたのか。
本当に申し訳ない。
卒業させてくれてありがとうございます。

担任「あと、卒業アルバムのクラス写真、うちのクラスだけまだ撮ってません。
晴嘉さん待ちです。
僕もみんなも学校で待ってますからね。」

私 「ありがとうございます。みんなごめん…」

事故にあう2ヶ月前に休学届を出していたような気がするんだけど…とは言えなかった。
(入院直後に保護者により撤回されていた模様)

一番辛かったのは体育の補講。
自業自得だけど骨折あがりで体育の補講は辛い。
体育館独り占めできるのはちょっと楽しかったかな。
進学校で体育教師は直接関係ないとはいえ、先生もめんどくさかったと思う。

クラスメイト

退院して何日目だったか忘れたけど保護者に車で送られて学校復帰した。

クラスメイトが優しくてたまらない。
3年の教室は2階で、出勤時と退勤時は友達が荷物を持って付き添ってくれた。
移動教室の時も荷物を持って付き添ってくれる。
時は受験シーズン。
そして進学校である。
松葉杖でゆっくり階段を上り下りする私に付き合っている場合ではない。
私はすでに落ちこぼれているがクラスメイトには未来がある。
授業に遅れちゃうから先に行って、と言っても付き添ってくれた。

卒業アルバムの集合写真は復帰初日に撮った。
締切があるので待ったなし。
身長的には最前列だが、松葉杖が映らないようにと3列目に誘導されたが顔が映らず、2列目に移動。
むちゃくちゃ待たせているのに、担任もクラスメイトもニコニコして待ってくれた。
この配慮のおかげで、右上にワンショットではなく、みんなと一緒に集合写真の中にいる。
ほとんど学校に行ってなかったのになんであんなによくしてくれたんだろう。

同級生

ギプスがさらに小さくなって松葉杖なしで歩けるようになり保護者の送迎がなくなった。
学校は坂の上にあって、行きはいいが帰りが怖い。
校門あたりで同級生が「生きとったんかいな笑」とか話しかけてくる。
「5メートル飛んだけど生きとる、けど補講でしんどる」とか適当に返す。
そして慎重に歩く私と一緒に、ゆっくりゆっくり坂を下りる。
男の時もあったし女の子の時もあったけど、年末まで一人で坂を下りたことは一度もなかった。
送ってくれたんやな。

何度も言うが受験シーズンの進学校の話をしている。

彼氏

私の実家は暗黙のルールで男子禁制。
彼の家はフリーダムだが遠い。
二人とも高校生で足がない。
そして私がそれどころではない。

というわけで彼氏とは全く会えていなかった。
ずっと電話だけ。
彼氏はバイトを始めていた。

バレンタイン

2月に入って卒業がの目処がついた。
体育の補講で鍛えられたので彼氏の家に行けそうな気がした。
チョコを渡しに行こう。
持ち金から電車代を引くとボッキー1箱しか買えない。
保護者が出してやろうかと言ったがそれは断った。
ボッキーを英字新聞でラッピングして電車で行った。

丸くて白いお月様みたいな顔がとびっきりの笑顔になった。
本当に嬉しそうで、こんなもので喜んでもらえるんだと私も嬉しくなった。
ボッキーでごめん、保護者が出してくれるって言ったけど断ってしまった、と言ったら、保護者と俺の話をしてくれたことが嬉しい、と言った。
病院で会ってもあんまりよく思われてない感じやった、と。
単に保護者と仲が悪いだけのどこにでもある家だと思っていたが、私の家庭環境はあまり良くなかったようだ。
そして私の保護者は感じが悪い人のようだ。

チョコを渡したのはこれが最初で最後になった。













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