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インサイド・アウト(長編小説)

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2019年3月の記事一覧

インサイド・アウト 第10話 仕組まれた邂逅(2)

 ——PM7:23 5/6(Wed)  夜空に漂う満月のように、Sの左手首に映るスマートウォッチの画面…

インサイド・アウト 第10話 仕組まれた邂逅(3)

 限りなく満月に近い月が、山の隙間からこちらを覗いている。  わたしとSは、普段の運動不…

インサイド・アウト 第10話 仕組まれた邂逅(4)

 夢の中で——眠りに落ちた時点でほぼ予想できていたことではあったが——わたしは何者かに追…

インサイド・アウト 第11話 幾望の月(1)

 河口湖駅から二時間以上乗り継いで、僕は御茶ノ水駅へと戻ってきた。  駅前を流れる神田川…

インサイド・アウト 第11話 幾望の月(2)

 《左右対称の顔の女》は、初めて会った時と全く同じ服装をしていた。黒いリクルートスーツに…

インサイド・アウト 第11話 幾望の月(3)

 左右対称の顔の女から「一緒に寝て欲しい」と言われた僕は、戸惑いながらも女に導かれるまま…

インサイド・アウト 第11話 幾望の月(4)

 降りそそぐ穏やかな陽光と窓ガラス越しに伝わる冷気で、僕は気持ち良く目を覚ました。久しぶりの爽快な朝だった。ベッドの脇のLED時計には『AM5:30 5/7(Thu)』と表示されている。それは、ゴールデンウィークが終わり、仕事や学校に行かなければならない憂鬱な日が始まったことを意味していた。  だけど、僕にはもう、関係のないことだった。  横では、左右対称の顔の女が安らかに寝息を立てている。  昨日、あれから僕たちはすぐに眠りに落ちたようだった。その証拠に、僕は衣服を身

インサイド・アウト 第12話 夢の終わりに(1)

 月明かりを頼りに闇の中を歩いていると、後ろから何者かの足音が聞こえてきた。  その音は…

インサイド・アウト 第12話 夢の終わりに(2)

 自分の思い描いた光景が夢に現れるのならまだわかるが、他人の見た夢が自分の夢に現れる理由…

インサイド・アウト 第12話 夢の終わりに(3)

 くぐもった電車の走行音で、わたしは目覚めた。がたんごとん……という現実以上に現実的な音…

インサイド・アウト 第13話 満月の夜、穴の中(1)

 久しぶりに帰って来た故郷はあたたかく僕を迎え入れてくれるわけでもなく、待っていたのは鉛…