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#現代自由詩

ソラシド

海の中だね、ここ、海の中だね
触れたらはじけて死んでしまうしゃぼん玉の泡を食べながら
きみはくつくつ笑う。
最初から存在しない旅立ちだった
帰ってくることを想定しない
ううん、そうじゃない
帰ってなんて、きたくなかった。

触れていたかった、ずっとふたりきり
きみとだけ一緒に眠り続ける

幼い子に語りかけるように

なでつけて、可愛がるだけの、愛おしい
わたしだけの顔をして

孕まないわたしときみ

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万年

開いた本のカビ臭さに咳をして
ここに何年もあった事実を吐き出す
ただしく
正しく
正常に
折り重ねていかねばならない生活が
目の前にいて
いま、ここ、このいっときに
正しく正常な
反論をせねばならない
思いを全部口にして
投げだされた音が痛い

わたしは
いつかの母と同じ台詞を言って
押し黙る
これきっと血
正しい血統を持ったわたし

何年もここにあって本を手放すということは
わたしが切断されてい

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