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漢方とその先生のこと

漢方を飲み始めてから2年以上が経った。

漢方がどのくらい効いているのかは、正直なところよくわからない。けれども、本当に少しずつ、少しずつ、体調はよくなっているので、ちょっとは効いているのだろう。

からだには、もともと自分で治る力が備わっている。漢方は、こころとからだのバランスを取り戻す手助けをするだけなのだ。と、私の通っているクリニックのホームページに書いてあった。

私は、もともと薬を飲むのが嫌いで、風邪を引いたときも、できるだけ薬に頼らずに治してきた。そんな私にとって、漢方のような存在はありがたい。

漢方は、飲んですぐに効果が出るものではないようだ。本当にじんわり、じんわり、少しずつ効いてゆくイメージで、そんな鷹揚なところも、私と相性が良いのではないかと思っている。

からだに異常はないけれど、こころはなぜだか泣いていて、痛みまで出しているのだから、何か理由があるのだろう。薬で無理やり抑えて解決を急ごうとせず、ゆっくりとその声に耳を傾けてあげよう。

そんなことを考えつつ、そのときどきの体調に合わせて、少しずつ種類を変えてもらいながら、漢方を飲み続けてきた。


私は、基本的に人の話を疑ってかかるところがあるので、初めてクリニックを受診したときは半信半疑だった。本当に信頼できる先生なのか。漢方は私の症状に効くのか。変な薬を勧められないだろうか。薬は正当な価格なのだろうか。

私の受診したクリニックでは、基本的に薬は漢方薬しか用いないので、他の薬が必要であれば、別の病院の受診を勧められる。

初めて診察を終えたとき、「これだけで終わりなんだ」と率直に思った。症状に合う漢方の話がメインで、深く踏み込んだ話はしなかった。

先生は、仮面をつけていない大人だった。


先生は、良い意味で、お医者さんらしくない先生だ。いつだって優しくて、理性的で、的確な判断を下す。けれども、威圧的なところがまったくなくて、いつも肩の力が抜けている。

私は、密かに先生に憧れていて、いつか先生のような存在になれたらいいなと思っている。

職場でも、憧れる女性にはたくさん出会ってきたけれど、どこか自分とはタイプが違うと感じていた。男性と対等、もしくは、それ以上に強くて、威厳もあって、頼もしい女性。

私は、そんな女性とは正反対のタイプで。他人の表情や発言がいちいち気になって傷ついてしまうし、気も弱ければ打たれも弱いし、職場で泣いたことだってある。

そんな私と少し似たところを感じる先生。
なんというのだろう、持って生まれた感性がぴったり合うというのか、2年以上のお付き合いになるけれど、これまで接してきて不快に感じたことは一度もない。

漢方が効いているのかはともかく、月に一度、先生に会いに行って、のほほんとお話するのが心地よくて、漢方を飲み続けているところもある。

なんとなく調子が悪いということは、人に相談したり共感を得たりするのが意外と難しいのだけれど、そういうことをこっそり打ち明けられる人が身近にいるのはありがたいなぁとしみじみ思う。

そんな悩みを否定せずに優しく受け止めてあげられるような存在に、私もいつか、なれたらいいな。


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