八角/はっかく/hakkaku

取り敢えず100文字の小説を書こうと思います。最近、200文字も書いたりしました。気に…

八角/はっかく/hakkaku

取り敢えず100文字の小説を書こうと思います。最近、200文字も書いたりしました。気に入ってもらえるといいな。好きなジャンルはホラー。いずれ漫画にも挑戦したいと思います。平日更新。えふらん。ちゅうに。ちゅうと。新卒カードは使わずニート。今は社内ニート。

最近の記事

醍醐味・偽

縛られ、目隠しと猿ぐつわをされる。 私たちの関係も半世紀を超え、 信頼感の上に成り立つこのプレイに行きついた。 もうお互いにずいぶんと年を取った。 衰える体に、文字通り鞭を打って、 それでもこうして彼女の言いなりになっている時だけは、 生きていることを濃厚に感じる。 放置されてから何時間が立つだろう。 ドン! 人が倒れたような音があった。 そう言えばさっき心臓が痛いと言っていた。 あぁ…どうしよう。 脳みそが痺れてくる。

    • 手品・偽

      手品が得意な彼氏の部屋に、 私も手品のように忍び込んでみる。 すると予想通り女と帰って来た。 後ろから二人を強く殴りつけ、 動けない様に椅子に縛り付けた。 目の前の男女はぐったりとしていたが、 暫くして目を覚まし混乱している。 私が彼に得意の縄抜けを見せてくれるように言うのだが、 必死の謝罪を繰り返すだけでつまらない。 女は手品が得意ではないようなので、 ナイフで縄を切ってやろうと近づいたが、 暴れるので手首が切れた。

      • 秘密の占い・偽

        駅裏の細い路地に、 一軒の小さな喫茶店がある。 蔦に覆われたその店は、 知らなければその存在すらわからぬような佇まいで、 来るものを選んでいるかのようであった。 ドリンクのみで軽食すらもない。 噂では秘密のメニューがあると言う。 店主にそれを頼むと、 コーヒーと共に一枚の紙を渡されるそうだ。 そこにはこれから起こるトラブルについて書いてあり、 それがよく当たるらしい。 ただ最後に必ず希望の持てる一言が添えてあると言う。

        • 向こうからやってくる件・偽

          今日は何もかもが上手くいかなかった。 いつもの景色が一層暗く感じる帰り道。 横断歩道の向こうから、 モデルのようにすらりとした女性が歩いてくる。 つい目で追ってしまうが、 日傘のせいで顔は見えない。 いよいよすれ違う瞬間に顔を盗み見ると、 彼女と目が合った。 気まずそうな僕に彼女は微笑む。 かすかな声で彼女は小さく囁き、 そのまま去っていった。 僅かに耳に残る言葉は何を表すのだろうか。 その顔はどこか牛のようにも見えた。

          聞こえた声・偽

          遠距離恋愛中の彼女とスピーカー通話をしている。 普段なかなか会えないから、 無料通話アプリを使って、 毎日こうしてお互いの日常を繋いでいる。 ふと、自分以外の男の声が聞こえた気がした。 その場は平静を装ったが、 電話を切った後には居ても立っても居られず、 衝動的に彼女の元へ向かう。 困惑する彼女の部屋には誰もいなかった。 事情を話すと、 「私にも男の声は聞こえていたよ。」 と言った。 そう言えば、最近ずっと視線を感じる。

          似顔絵・偽

          子供が幼稚園に通うようになり、 毎日の成長がとても楽しい。 今日はパパの似顔絵を持って帰ってきた。 何だか鼻の穴が大きすぎる気もするが、よく似ている。 わが子には才能があるのかもしれない…などと、 暫し親ばかをする。 早速飾ってパパにも見せよう。 帰ってきて最初に目に入るあの壁にしよう。 はみ出んばかりダイナミックに描かれているので、 仕方なくおでこに画鋲を刺し、壁に貼る。 帰って来たパパは、 おでこに怪我をしていた。

          聞き耳・偽

          喫茶店に入りコーヒーを飲んでいると、 隣のボックス席にいる若い二人の女性が会話をしている。 一方の女性がもう一方の女性に相談をしているようだ。 失礼だとは思ったが聞き耳を立てていると、 どうやら彼女の部屋に頻繁に幽霊が出ると言う。 夜中に目を覚ました彼女の脇に人が立っていたそうだ。 ばかばかしくて口にしたコーヒーを吹き出しそうになった。 昨日は彼女の部屋で彼女の寝顔を朝まで見ていたが、 幽霊なんて私は見なかった。

          雨宿り・偽

          梅雨の頃は頭痛が酷い。 頭痛薬を買いに出かける。 せっかくの休日なのに…。 この辺りを歩くのも久しぶりだ。 少し見ぬ間に景色が変わっている。 愛想のよかったパン屋が無くなり、 よく見るチェーン店になった。 古ぼけて味のある駄菓子屋は、 婆さんが高齢のせいか店を閉めた。 街も人も代謝を繰り返して前に進んでいるのだろう。 小雨がちらつき始めたので、 目の前の神社の鳥居をくぐる。 鎮守の森が雨を遮ってくれ、少し頭痛が和らいだ。

          ヘッドホン・偽

          父の葬儀を終え、遺品の整理を始める。 書斎の机には大事にしていたヘッドホンが置いてある。 古いが良いもののようで、よく自慢をしていた。 時々これで何かを聞いていたのを思い出し、 ふとその姿を真似てみる。 辺りの音が一瞬にして消え、 余りの静寂に平衡感覚がおかしくなったのか、 眩暈がして座り込んでしまった。 圧倒されるような無音。 そっとヘッドホンを外し、 ありふれた騒音に舞い戻った。 ジャックはどこにも刺さっていない。

          隠し部屋・偽

          ついに念願だった家を建てた。 子供の頃に冒険小説にあった、 憧れの隠し部屋を大工に作ってもらった。 そのことは家族に内緒である。 大好きな映画を大音量で見られるように防音もばっちりだ。 後は誰にもばれないように、 皆が出かけた隙を見て少しずつ部屋を作り込む。 モニターを運び入れ、 スピーカーを繋ぎ 特にこだわったソファを、 家族不在のこのタイミングに届くように手配して、 何とか一人で運び入れた。 困った…ドアが開かない。

          柘榴・偽

          ただ働いて、泥のように眠る毎日の繰り返し。 もうここには居たくないと、 逃げるように田舎に戻った。 やはり都会の水が僕には合わないのだ。 幼い頃に野山を駆け回った記憶が蘇る。 未だに無人駅の改札を抜けると、 畑仕事をしている老人に話しかけられた。 「もうザクロの実を食べたのだろう?」 穏やかな笑顔を張り付けているが決して笑っていないのは分かった。 もうここにも居場所が無いことを悟り、 僕は折り返してきた電車に乗った。

          獣臭い・偽

          アパートに帰ると、 廊下で隣の部屋の住人とすれ違う。 綺麗な女性なので会えた日は少し嬉しい。 鍵を開け部屋に入ると獣臭い。 換気扇を回し、臭いの原因を探すが特に何もない。 気持ちが悪いので部屋を飛び出した。 近くの喫茶店に入ると、 さっきすれ違った隣の部屋の女性がいた。 これはチャンスだと思い、 「何だか部屋が獣臭くなかったですか?」 と話しかけてみる。 「あ、ごめんなさい。さっき間違えて入っちゃったので。」 と言った。

          入浴中・偽

          まだ暗い早朝に、 電気を点けず半身浴をするのが好きだ。 辺りの騒音もなく、 およそ何の気配もない中で、 自らもじっと気配を消して辺りに溶け込む。 夢か現か、何処までが自分かわからぬまま、 すりガラス越しに段々と日が差してくるのが良い。 ふと、差し込む光が遮られた。 「覗き」かと身構える。 窓の外には行列のような人影が右から左へと進んでいく。 風呂の窓の辺りは防犯用に音の鳴る砂利が敷き詰められている。 それは五分続いた。

          別荘のある村・偽

          僕の生まれ育った村は、 これと言った観光資源もない陸の孤島の様な場所にある。 平和だけが取り柄のこの村で、 連続殺人事件が発生した。 皆がお互いに知り合いで、 其々に思いやりを持って助け合ってきたのになぜ。 緊急の集会が執り行われ。 長老もブルブルと震えている。 何か変わったことが無いかと村人同士が噂を持ち寄る。 そういえば、村から外れた洋館に、 有名な人が来ているらしいと誰かが言った。 名前は…金田一とか毛利とか…。

          別荘のある村・偽

          マンドラゴラ・偽

          最近この辺りで下着泥棒があったらしい。 彼氏に相談すると、 翌日に植木鉢を持って私の部屋にやってきた。 人参の様なものが生えている。 これは何かと聞いたら、 「良いから、ベランダに置いておけ。」 と言う。 そもそもしばらくは下着を部屋干ししようと思っているのだが、 彼なりに心配なのだろうとベランダに置いて、水をやる。 翌朝、突然叫び声が響く。 カーテンを開けベランダを確認すると、 そこに見知らぬおじさんが気絶していた。

          マンドラゴラ・偽

          アンティークのナイフ・偽

          アンティークのナイフを手に入れた。 刃物づくりの名人が、 その切れ味を確かめる為に、 夜な夜な街に出て殺人を繰り返しながら仕上げた逸品だ。 彼は職人としてだけでなく殺人鬼として有名になってしまったが、 そのナイフはとても美しく、 マニアの間では高値で取引されている。 魅入られない様に気をつけろと店主は笑った。 もちろん使う気などない。 ただ、毎晩夢を見るようになった。 夜中にナイフと徘徊する夢を。 夢だと思うのだが…。

          アンティークのナイフ・偽