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ヘッドホン・偽

父の葬儀を終え、遺品の整理を始める。
書斎の机には大事にしていたヘッドホンが置いてある。
古いが良いもののようで、よく自慢をしていた。
時々これで何かを聞いていたのを思い出し、
ふとその姿を真似てみる。
辺りの音が一瞬にして消え、
余りの静寂に平衡感覚がおかしくなったのか、
眩暈がして座り込んでしまった。
圧倒されるような無音。
そっとヘッドホンを外し、
ありふれた騒音に舞い戻った。
ジャックはどこにも刺さっていない。

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