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柘榴・偽

ただ働いて、泥のように眠る毎日の繰り返し。
もうここには居たくないと、
逃げるように田舎に戻った。
やはり都会の水が僕には合わないのだ。
幼い頃に野山を駆け回った記憶が蘇る。
未だに無人駅の改札を抜けると、
畑仕事をしている老人に話しかけられた。
「もうザクロの実を食べたのだろう?」
穏やかな笑顔を張り付けているが決して笑っていないのは分かった。
もうここにも居場所が無いことを悟り、
僕は折り返してきた電車に乗った。

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