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【小説】わたしの本棚 その3【10選】

いままで読んだなかで印象に残った小説たちです。


どちらでもいい アゴタ・クリストフ

短編集です。
全体的に暗いです。全部面白いです。

今では、私にはほとんど希望が残っていない。以前、私は探し求めていた。片時も同じ所にはいなかった。何かを期待していた。
何かとは?それは一切分からなかった。けれども私は、人生がこんなもの、つまり無同然のものでしかないなどということは、ありえないと思っていた。人生は何かであるはずだった。で、私はその何かが起こるのを期待していた。その何かを探し求めてさえいた。
私は今、期待すべきものなど何もないと思う。それで、自分の部屋から外へ出ず、椅子に腰を下ろしている。何もしないでいる。

Je pense / 私は思う より

「わがままなのはパパとママだ。親として恥ずかしくないのかよ。平気で嘘を言ったり、優しいふりをしたり!僕が大きくなったら、パパとママなんか、殺してやる!」

L'enfant/子供 より

モーパッサン残酷短編集 ギ・ド・モーパッサン

暗鬼 乃南アサ

告白 湊かなえ

生命式 村田沙耶香

「その人が食べているものは、その人の文化なんですよ。その人だけの個人的な人生体験の結晶なんです。それを他人に強要するのは間違っているんですよ」
「私は、食べることはそれを生産した世界を信じることだと思うんです。でも、信じない誠実さもあると思うんです。私も、夫が買ってなければこんなもの食べてないです。色も変だし、プラスチックみたいな舌触りだし、芳香剤みたいな臭いがするし。ゴミですよね。でも、これを食べている夫が面白くて、ついつい合わせてしまうんです」
「まあ、そうだったの」

素晴らしい食卓 より

しろいろの街の、その骨の体温の 村田沙耶香

コンビニ人間 村田沙耶香

「この世界は異物を認めない。僕はずっとそれに苦しんできたんだ」
「皆が足並みを揃えていないと駄目なんだ。何で三十代半ばなのにバイトなのか。何で一回も恋愛をしたことがないのか。性行為の経験の有無まで平然と聞いてくる。『ああ、風俗は数に入れないでくださいね』なんてことまで、笑いながら言うんだ。あいつらは!誰にも迷惑をかけていないのに、ただ、少数派というだけで、皆が僕の人生を簡単に強姦する」
どちらかというと白羽さんが性犯罪者寸前の人間だと思っていたので、迷惑をかけられたアルバイト女性や女性客のことも考えずに、自分の苦しみの比喩として気軽に強姦という言葉を使う白羽さんを、被害者意識は強いのに、自分が加害者かもしれないとは考えない思考回路なんだなあ、と思って眺めた。自分を可哀想がるのが白羽さんの趣味なのではないかとすら思いながら、「はあ。それは大変ですね」と適当に相槌を打った。

本文より

猿の戴冠式 小砂川チト

太宰治の「猿ヶ島」を思い出しました。

<どのような星巡りの下に生れた存在か>、もう自分でもじゅうぶんに知っているつもりなんだけれど、それでも絶対になにかみどころのあるやつだというこの一点についてだけは未だに、どうしても、底のところで諦めがつかなくて、その考えのせいできっと、いまのこの境涯に納得感を持つことができずにいる。これでいいんだ。こんなものだ、と思うことが、どうしてもできない。それが苦しい。

本文より

迷彩色の男 安堂ホセ

力のある存在から降り注ぐ憎悪が諦めとともに受け止められる一方で、
弱者であるべき人間が燃やしかえす憎悪にこそ人々が監視を強めることは、
もうすでに珍しいことではなくなっていた。

本文より

ジャクソンひとり 安堂ホセ


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