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おしい!最後の一言、それセクハラですよ… というお話

今回は数年前の職場でのおはなしです。
前回とは別の新卒社員Bさんが登場します。


新卒社員Bさんの初出社の日のことです。彼は朝礼で40数名の営業所員の前で挨拶されました。それはつい数日前まで大学生だったとは思えないほどの堂々たる素晴らしいスピーチでした。そして颯爽と自分のデスクに戻っていきます。まさに期待の新人感ありありでした。


私の職場は一般的な島型オフィスと呼ばれるレイアウトになっていて、営業チーム毎にデスクを島状に向かい合わせにくっつけてあります。
Bさんは私とは違う営業チームでしたのでデスクの島は違いましたが、通路を挟んで背中が向かい合うという距離感でした。


スピーチを終えたBさんが自分のデスクを目指して戻ってきます。そして私が立つ斜め前でくるりと方向を変え、まだ続いていた朝礼の間中もしっかりと姿勢を保っています。

その時、私は気付いてしまいます。

きっと親元を離れて自分で準備したスーツなのでしょう。後ろの裾のバッテンが付いたままでした。濃紺の生地に白いしつけ糸なので少々目立っています。さて、、、

近くにいた他の社員達も気付いていたと思うのですが、誰も何も言いません。

若い女性社員が注意するよりも、私(当時息子が高校三年生だったというところから年齢を推定してください…)が教えた方が良さそうね… 


声を掛けました。

「Bさん、ちょっと付いてきてください 」

『!? はい…  』

幸いなことに私たちのデスクは廊下へ出る扉に近かったのと、出てすぐの打ち合わせ室が空いていました。

安心してください、打ち合わせ室の扉は開けたままです



「新しいスーツ?」

『はい… !?』

「朝礼の時に気付いたんやけど、ジャケットの裾にしつけ糸ついたままやね。はさみを貸してあげるから自分で切って!」

『あっ…!』

Bさんは恥ずかしそうにジャケットを脱ぎ、しつけ糸を確認していました。
そしてこう言います。

『教えていただきありがとうございます、はさみをお借りします』と。

礼儀正しい。そしてカワイイ♡ ニヤけてませんよ。心の中で思っただけです。

糸を解いたBさんは改めて感謝してくれました。そして一緒に席に戻りました。

Bさんとのやりとりはここまでです。


戻ると早速、隣の席の仲のいい同僚がキャスター付きの椅子ごと近づいてきます。彼女も気付いていたのです。

『しつけ糸、切ってあげたんですか?』

「自分で切るように言ったよ。はさみを貸してあげただけ」

『なんで連れて出たんですか?』

「この場で指摘したら周りの目もあるし、嫌な思いするかもしれんやろ…」

『正解ですね!』

「礼儀正しかったで。ちゃんと感謝してるって言ってくれるし、ほんまに カワイイ!

『おしい! 最後の ”カワイイ” はセクハラですよ 』

「えーっ!!息子みたいなもんやのに、あかんの… 」

『ダメです!気をつけましょう』

と指摘を受けたのでした。皆様もお気をつけあそばして!


その後、新入社員だったBさんは皆の期待とおりに大活躍します。
営業成績もすばらしく新人賞も獲得しました。

あれから数年経ちますが、初々しかったあの頃も、頼もしく育った今でも、私にとって可愛い後輩社員です。本人には言いませんがね。


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