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タイトルと出演者の多さに惹かれて、内容を確認せず足を運んだ自分を悔いた。 そしてそれに巻き込んだ妻に詫びたい。


以前、つらいダンスショーを見た。

著名作家の本を90分ほどのダンスパフォーマンスに翻案したもので、舞踏やコンテンポラリーダンスなどでよく見られるコンセプトだが、取り組みのスタンスとしては良いと思った。

シンプルな衣装とセットでダンスを際立たせたい、というお題目は分かるが
中核である群舞が、シンクロもインパクトも甘く、少人数のダンスも踊り切る見せ場がない。
全体にただ大勢出ているだけで、観客を惹きつける緊張感がないのだ。
90分も時間があるのに、ダンスも音楽もバラエティが少なく、場面が変わっても、同じダンスのバリエーションの変化だけという印象を拭えない。

毎回完全暗転でキャストが入れ替わるのだが、時間がかかり過ぎて緊張感が途切れ、それを補おうというのか、やたらと音楽が大きい。

その音楽は、のべつ幕無しに大音量で流れている上に、同じような曲調で変化に乏しい。
「音で観客を包みこむように」「音の衝撃で客の頭を叩くくらいのインパクトを」とか言う演出の指示に、ミキサーが苦笑しながら音量を上げているのか、あるいはその逆で演出がミキサーの暴走を抑えきれなかったのか。

同時に原案である文学を声の本職が読み上げるのだが、概念的なセリフを型に力の入った語りで読んでは、きっちりと伝える工夫があったとは言えない。さらに、ハコ(会場)の大きさに対して音楽が大き過ぎ、セリフの肝心のところが聞き取りにくいし、観客が原案の文言を噛みしめて楽しむ余裕も生まれない。
思い切ってセリフだけ、音だけ、ダンスだけの長いパートを作って、舞台の変化を考えるべきではないか。

今回は、ダンス、音楽、セリフにそれぞれに多くのキャストやスタッフがかかわっているのにまるでリモート会議をしているみたいな違和感があった。
「もしかしてそれが狙いなのか」と深読みもしてみたが、「狙い」なら見事に失敗している。観客の心を震わせることが出来なければ、「狙い」は自己満足の範疇を出ない。


だが、一つだけ良い所がある。
この手の作品は、観劇後の会話が増える。
良い作品は、黙ってその余韻を味わいたくなるので、余り話をしない。

今回、妻の感想は、こんな感じ。
「暗い会場だったので良く眠れた」「この手のダンスは、『アートにエール』でやっているみたいに、2分くらいでちょうど良い」「会場から逃げ出せない状態だったから、巻き込まれ、追い込まれるという作品のテーマがまさに痛感できた」


ソクラテスの言葉を模して、この記事を締める。

「よい芸術を見れば幸せになれる。悪い芸術を見れば哲学者になれる」

かな?


                      おわり


これは、以前にあるダンスパフォーマンスを見た時の感想ですが、つい最近も同じようなことがありました。やはり90分ほどのダンスパフォーマンスで、似たようなダンスを繰り返すだけでひたすら退屈でした。同じようなダンスで15分以上見せるにはそれなりの工夫が要りそうですね。ちなみに、その時の感想は、「やっぱり歌の上手い人はミュージカルに出るし、ダンスの上手い人はEXILEに行ったりするんだね」でした。

*注釈 『アートにエール』は、東京都がやっている芸術家への助成事業で、東京都のサイトに上げられた動画をMXTVなどで、冒頭2~3分の部分のみまとめて放送されている。


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