「悪いことより良いことを想像する方が、エネルギーが湧くでしょう」・・・同じ時間同じ空間を共有することが大のだ。ワーニャおばさん。
「ワーニャおばさん」オフィス由衣 目黒キンケロシアターにて
有名なチェーホフの「ワーニャ伯父さん」のパロディーかと思うとそんな事はなく、全くのオリジナル作品だった。
この芝居は、二度にわたる初日の延期など
様々な不可抗力に巻き込まれて、公演自体危ぶまれたという。
しかし、主宰の駒塚由衣さんを始め、出演者、スタッフ全員が
決してあきらめず、この素晴らしい劇空間を生み出した。
私が当初予定していた公演日も、出演者などの体調不良によって、休演となり、結局私のスケジュールが都合つかずに配信での観劇となった。
配信を観た後で、この空間に直接居られなかったことがとても残念に思え後悔した。それほど見ごたえがある作品である。
ただ配信で見て良かったのは、聞き逃したセリフなどや、出演者たちの熱演を表情細かく、再度確認することが出来た事だ。
物語は、サロンの経営と借金による土地の買収問題を縦軸に
母と子の秘めた思いが交錯していく、というものだが、
その中で出てくるセリフの数々が、まさに珠玉である。
うろ覚えながら、一部を並べてみると、
「運命のまま素直に死んでなんかやるもんですか」
「悪いことより良いことを想像する方が、エネルギーが湧くでしょう」
「正しく怒らなければいけないのよ。何度も何度も正しく怒るべきなのよ」
こう並べてみると、ある種哲学的でもあるが決して堅苦しくはなく、
(前作のネタである)ヌードカレンダーがらみのセリフや
「どっこいショーンペン」なんていう軽い笑いも
会場にいたらもっと楽しめただろうなぁ、と思いながら拝見した。
実は私は、少し占いをかじっている。
占いでは、人それぞれが持つ「運気」を読み解くのであるが、
その中には、生涯幸運でのんびり生きる人もいれば、
『楽には生きさせてくれない人』もいる。
たくさんのプレッシャーやたくさんの責任がのしかかり、
自分の意志とは関係なく、様々な障壁や重荷を背負わされてしまう人だ。
「うわ~苦労ばっかりで嫌だな」と思った方、大丈夫です。
そのような運気の人は、
課せられた重荷を跳ねのけ、障壁を乗り越えた時に、
さらに大きく発展し見事な実を結び、
人物としても大きくなれる。というのが占いの世界での常識なのである。
だから今回の「ワーニャおばさん」も、製作上での苦労が、
素晴らしい芝居となって結実したに違いない。
それは、実感を伴う本物のセリフとなって観客に伝わっていたと思う。
まさに、「自分の方が他人より不幸だと言う比較の森」に陥ることなく、前向きに生きていこうと思える作品であった。
本公演は既に終了しているが、いつか再演を期待したい。
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