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「泉鏡花の神楽坂七不思議・その3」・・・最後は、「女」がらみのもの。


もしかしたら今回の二つが、最も不思議かもしれない。

・「菓子屋の鹽餡娘(しほあんむすめ)」
「餅菓子店の店にツンとすましてる女性がいる。
『生娘の袖誰がひいてか雉子の声』
で、ケンもほろろの無愛嬌者(あいきょうなし)だ。
そのくせ、(餡子は)甘いから不思議だ」

・「絵草紙屋の四十島田(しまだ)」
「女主人にてなかなかの曲者。
『小僧や、紅葉さんの御家へ参って・・・』などと
一面識もない大家の名を聞こえよがしにひやかし
おどかす奴である、何を考えているか気が知しれないから
不思議だ」

共にお店に立つ女性を上げているが、
前者は今で言うツンデレなのか、餡子の甘さだけが売りだと言いたいのか。当時神楽坂には8~9軒のお菓子屋があったというから、どの店かは分からぬが、今も「塩対応」などと言うから、この「鹽餡娘(しほあんむすめ)」という表現は中々面白い。

後者も曲者で何を考えているか分からぬ女を不思議と呼んでいる。

女性というものは、総じて何を考えているか分からない。という
意味だろうか。これを書いた真意は想像に任せるしかないのだが、
どこかに「女性は母のように受け入れてくれる存在であって欲しい」と
思う心があったのだろうか。

だが、興味を持つのは裏腹で、気の強い、取り付く島もないような
態度を取る女に目を引かれるのは確かだろう。

思えば、「外科室」の貴船伯爵夫人も
その真意を語らぬまま物語が進み、死ぬまでその信念を貫く。
だが、その心の内には、甘い恋の思いを秘めている。

「婚姻に因りて愛を得むと欲するは、水中の月を捉へむとする猿猴の愚」
「恋愛と結婚は矛盾する」

と語る鏡花にとって
女性こそが、七不思議だったのかもしれない。

おわり

*これはあくまで個人的な考察です。


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