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怪談 超ショート あっという間に読める恐怖の物語。

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実体験、体験者からの伝聞、創作など、様々な怪奇と不思議な短編をまとめました。 #ショートショート #短編 #怪談 #不思議 #恐怖
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2023年1月の記事一覧

「叫びは誰に」・・・よーく考えると怖い話。ちょっと嫌な話なので、又、妊婦の方、父親になる方、なりたての方は、読まないで下さい。

「中一でお母さんが亡くなって、それから家の事は 全部私がやってたの」 自称ファザコンと言いながら、料理自慢をする早苗が、 可愛く思えて付き合い始めたのが、2年前。 まだ若いからと渋るのを、強引に説得して結婚に漕ぎつけたのが、1年前。 「赤ちゃんには、パパママって呼ばせたいな」って 二人で話していたのが半年前。 そして、今、それを実現するために、早苗は必死に頑張っている。 「頑張れ!頑張れ! ママになるんだよ」 叫び続ける早苗の耳に、どれくらい届いているか分からない

「怖がりの彼女」・・・お化け屋敷に入りたがらない彼女を。

「絶対に入らないから」 遊園地のお化け屋敷の入り口で、美緒は真顔で拒否した。 「怖いのは嫌いだって言ったでしょ。 ビックリして心臓麻痺で死んだらどうするのよ」 「死なないよ。通り抜けるのに5分もかからないし。 それに、お化けなんかみんな学生のバイトだよ。怖くない怖くない」 身も蓋も無い事を言う俺を、受付の男性が渋い顔をして見つめた。 美緒は横を向いたまま、こちらを見ようともしない。 「いいよ。それなら俺ひとりで入るから」 俺はお化け屋敷に入って行った。 美緒の性

R怪談「FF」・・・あっという間に読める、ある意味ホラー。

「走馬灯」という薬が新発売された。 忘れていた過去をはっきりと思い出すことが出来るという薬だ。 ボケ始めた老人や認知症患者の治療に使われ、成果を上げたが、 数か月後、「走馬灯」は発禁となり、全ての在庫が回収された。 服用した者が、過去の失敗を思い出して後悔の念に押しつぶされそうになったり、もはや解決する方法の無い恨みや怒りを新たに抱えて、他人の不幸を祈るような性格になってしまう事が分かったからだ。 復讐から凶悪事件を起こす者が多くなったからでもある。 しばらくして、発売

「明日暦」・・・季節ものの不思議な物語

昨日、ラヂオつくばの 「つくば You've got 84.2(発信chu)!(つくば ゆうがたはっしんちゅう)」で放送された短編作品に少々手を加えて修正したものです。 季節ものにまつわるちょっと不思議な物語です。 「明日暦(あすごよみ)」2023 作 夢乃玉堂 日本橋の米問屋「槙野屋」の二代目、 槙野清衛門に念願の一人息子卯之助が生まれたのは、 元禄も終わろうとしていた頃でした。 清衛門は、待ち望んだ嫡男を 目の中に入れても痛くないほど可愛がりました。 甘やかされ

「泉鏡花の神楽坂の七不思議」・・・それって七不思議なの?

かの文豪・泉鏡花が、かつて住んでいた神楽坂の「七不思議」を 記している。 ただその内容は、必ずしも怪奇やあやかしのお話という訳ではない。 例えば、「しし寺のももんぢい」。 獅子寺とは、通寺町(現在の神楽坂六丁目)にあった曹洞宗保善寺の事で、現在は中野区に移転している。 その寺にある弓道場に、奇妙な老人がいて、人に会うたびに 「えひひひ」と奇妙な声を上げて愛想笑いをするという。 ところが、不思議はその老人ではなく、 その老人を見ても泣きださない赤ん坊のこと。 変な老人に

「愛の永遠」・・・怪談。愛の終わりは覚悟の始まり。よーく考えると怖いお話。

愛人の夫が死んだ。 新人研修の時から目をかけ、いつしか深い関係になっていた女子社員だったが、30歳を前にして、同じ部署の部下と見合いを勧め、最初の結婚をさせた。 夫になった部下は1年後にリビングで首を吊って亡くなった。 過労を苦にした遺書が見つかり、葬式の挨拶で彼女は言った。 「人生にどんな苦労があっても私の愛は変わりません」 未亡人となった彼女を放っておくわけにもいかず、 別の部署の部下と結婚させた。 半年後、二人目の夫は半年後にひき逃げにあって亡くなった。 お寺

「蟲毒の女」・・・怪談。彼女を心霊スポットに連れて行く理由(わけ)。

これは大学の心霊サークルで顔なじみになった男の話だ。 文学部の同期だった阿微倉則央の彼女・夢衣は、 霊に憑りつかれやすい体質だった。 新人歓迎会で、心霊スポットに行った時、 夢衣は女の霊に憑りつかれた、と言って突如泣き出し部員を凍らせた。 阿微倉が 「雑誌で覚えた除霊方法を試してみたい」 と言って、夢衣を自分のアパートに連れて行った。 阿微倉はポケットから取り出したお守りをかざして、 玄関を清めてから中に入り、キッチン兼用のダイニングで怪しげな呪文を唱えて夢衣の背中

「予知夢の同窓会」・・・あっという間に読める超ショート怪談。予知夢が流行ったクラスで。

「社会人になって初めての同窓会なんでしょ。思いっきり楽しんでね。 行ってらっしゃい」 妻の無邪気な言葉に送り出された俺だったが、 正直同窓会に行くのは少し不安だった。 中学の頃、俺は相当嫌な奴だった。 天邪鬼で、学校で流行っているものをことごとく否定し、冷めた中学生を演じていた。家庭環境は少し複雑だったこともあったが、要は拗ねていたんだ。 中学一年の時、世紀末ブームが起こり、予言や滅亡をテーマにした映画や小説が大ヒットし、俺の中学校でも未来の予知夢ゲームが流行った。

「十字路」・・・あっという間に読める超ショート怪談。楽しいはずのドライブは。

彼氏との初めてのドライブデート。 絶景の観光地を巡って、美味しい郷土料理を食べて、 帰路についた。 そして、私たちの乗った車は、森の中の道を随分と長く走っている。 日が西に傾き始めて、少し霧が出てきた。 「また十字路ね」 言いかけた言葉を私は飲み込んだ。 ハンドル握る彼氏の顔が真っ青で目が血走っていた。 無理もない、 さっきから七回も、同じ十字路を通っているのだから。 この道から抜け出すことが出来るのだろうか、 霧がどんどんと濃くなっていく。 行き交う車もいつしか

「呼ばれる名前」・・・ちょっと嫌なホラーです。心臓の悪い方、妊娠中の方は読まないでください。

勤務中に急にお腹が苦しくなった志門(しもん)紀子は、同時職場に勤める夫の雄一に付き添われて会社近くの産婦人科に向かった。 「打ち合わせが終わったらすぐに迎えに来るよ」 「大丈夫よ。ちょっと息苦しくなっただけだし、 お医者さんになんか来なくても大丈夫よ。少し休めばよくなるから」 もう安定期に入り、会社の仕事も難なくこなしているのに、 何かというと雄一は心配し過ぎている。 「いいやダメだ。気を付けなきゃいけない。念には念を入れてだ」 「いいから。仕事に戻って」 自分を

「私を信じるな」・・・超ショート怪談。山道で迷った時に聞こえてきたのは。

以前、一人で釣りに行った帰り、とある山の中で迷子になった事がある。 それほど深い山ではなく、来る時もカーナビの案内で簡単に、目的の渓流にたどり着いたものだから、帰りも大丈夫だろうと、山の中の道を走っていたら、急に途中から画面上に道が表示されなくなってしまったのだ。 「困ったな。データが古かったのかな」 画面には車の現在位置を示す矢印だけが映っていて、地図の倍率を広範囲が見えるように変えてみても、かなり山深いところにいるのが分かるだけで、幹線道路に繋がる道は表示されない。

「ケチな客」・・・怪談。高速を嫌がる理由は?

どんな仕事でも効率を無視しては出来ない。 駅前で客待ちをするタクシーは特に顕著だ。 井田徹はタクシー乗り場に並ぶ長い空車と、客の列を数えながら、自分の車に乗る客を計っていた。 「月末の金曜日だ。セコキンは御免だぜ」 長距離乗ってくれる客は一回でも金になる。 しかし近場に行くだけのせこい客、つまり「セコキン」だった場合 戻ってきた頃には、タクシー乗り場の列は捌けて、 稼ぎ損ねる。 終電後、最初に乗せる客が肝心なのは、タクシー業界のセオリーだ。 「あと3人、どうやら恰幅