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怪談 超ショート あっという間に読める恐怖の物語。

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実体験、体験者からの伝聞、創作など、様々な怪奇と不思議な短編をまとめました。 #ショートショート #短編 #怪談 #不思議 #恐怖
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「絶対当たる占い師」 作・夢乃玉堂  絶対の恋を求めて占い師の元を尋ねてきた女性を待ち受けていた運命とは?

「絶対当たる占い師」 作・夢乃玉堂 緑鮮やかな渓流の流れは、意外に冷たく早い・・・ それが、その時の印象だった。 岩に当たって弾ける水しぶきが入り口を濡らす丸太小屋に、真野智花(まのともか)は入った。 肌にまとわりつくようなお香の香りが、智花に仕事を思い出させた。 壁際の影の中には、設え付けの棚が隠れるように鎮座していて、 埃を被ったアンティークな装飾品が並んでいる。 智花は、小屋を訪れた目的も忘れ、それらの品々に見入っていた。 「

「みっちゃんインポッシブル」・・・ラヂオつくばで放送された作品です。

火曜日(16日)に、ラヂオつくばの 「つくば You've got 84.2(発信chu)!(つくば ゆうがたはっしんちゅう)」で、朗読された私の短編です。 ・・・・・・・・・・・・ 「みっちゃん・インポッシブル」 作: 夢乃玉堂 和馬(かずま)に別れを切り出されたのは、 大好きな俳優のスパイ映画を観終わった後だった。 「この映画のアクションって、主演俳優が全部スタントマン無しでやって るんだって、あんなトップスターが爆発の中走ったり、列車に飛びつい たり、凄いよね

「怖がりの彼女」・・・怪談。ラジオ「清原愛のGoing愛way」で読まれた作品です。

タレントで朗読家の清原愛さんのラジオ番組、「清原愛のGoing愛way」。 いつも元気で、こちらも明るい気分になって来る。 前回4月11日16時からの放送で朗読された怪談の作品を紹介します。 ・・・・・・・・・・・ 「怖がりの彼女」   by夢乃玉堂 「何と言われようとも、絶対に入らないから」 遊園地のお化け屋敷の入り口。美緒は真顔で拒否した。 「怖いのは嫌いだって言ったでしょ。 ビックリして心臓麻痺で死んだらどうするのよ」 「死なないよ。通り抜けるのに五分もか

「嘘であってくれと祈りたくなる漫画」・・・脳外科医 竹田くん

今最も読むべき漫画だとも思う。 「脳外科医 竹田くん」 下手の横好きで手術をしたがる医者が、当然のように回復不能な患者を増やしていく漫画。 はてなブログで連載されているのだが、次々と描かれる恐ろしく下手な手術と、その後遺症に衝撃を受ける。 いっその事、今話題のあのテレビ局で ドラマ化してくれないかな、と思うくらいだ。 だが、最も恐ろしいのは、 この漫画の主人公「竹田くん」に、モデルがいると言う事だ。 【第1話】履歴書 - 脳外科医 竹田くん (hatenablog.

「凍り付いた男」・・・東北のある地域の怪談。

「凍り付いた男」*再録 東北の、ほとんど人の入らない人里離れた山の中に、こごえ滝という 小さな滝がある。 落ち武者が追っ手に見つからないように、小声で話したとか、 ここで話した悪口はなぜか下の村人たちに伝わってしまうので 小声で話せとか、いくつか名前の由来は伝わっているようだが、 どれも確かなものはない。 ある日、嘉助という男が、渓谷で魚釣りをしている時、 腰に挿していた小刀を、こごえ滝の滝つぼに落としてしまった。 小刀を拾うため、嘉助が滝つぼに飛び込むと そこにはこ

あなたの告白できない想いはなんですか?・・・例えば。

「告白できないこの想い」を募集していますが、 サンプルになるかどうかわからないけど、 例えばこんなちょっと怖いお話でもOKです。 ・・・・・・・・・ 「なんであんな男と、って思うんだけど 全てを許そうと思う瞬間があるから、 この年まで添い遂げることが出来たのよね」 母が父の遺影を切り刻みながらつぶやいていた。 私は外で煙草を吸って笑っている夫を見て、 母と同じように深いため息をついた。      おわり #父 #遺影 #夫 #母 #告白 #吐露 #告白できないこの

「ゴーストフォン」・・・超ショート怪談。幽霊の声が聞こえる。

変人で有名はエヴァンス博士が、ついに幽霊の声を聞くヘッドフォンを 発明した。 ある種の音波を聞かせることにより、鼓膜の感知能力に新たな力を与え 幽霊の声を聞くことができると言う。 エヴァンス博士は、早速自分の耳にそのヘッドフォンを付けてみたが、 3分も経たないうちに、取り外した 助手のスコットが慌てて聞いた。 「博士。どうしたんですか?失敗だったんですか?」 「いいや。発明は大成功だ。すぐに幽霊たちの声が聞こえて来た。 幽霊たちの言葉は恨み言がほとんだだった。 アタシ

「署名」・・・超ショート怪談ヒトコワ的都市伝説。

これは、本当に都市伝説。いやもはや噂の域を出ない話だが、 それでも良ければお聞き願おう。 ・・・・・・・・・・・ 「署名」 通常、変死した遺体の行政解剖は、警察が指定した医大などで行われ 他の病院などが使われる事は無い。 だが、被害者の多い事件が起こった時や緊急性の高い案件が立て込んだ時、 通常の行政解剖の一部を、別の大学病院に依頼する事がある。 話の主は、そんな大学病院に勤務する若い研修医だった。 名を仮に康村としよう。 康村は、この大学病院で監察医の助手に決まっ

「幼馴染」とは・・・超ショート。恋のきっかけとは、

これは私の友人が昔言っていた言葉から発想しました。 実在の人とは関係がありません。 ・・・・・・・・・・・・・ 「幼馴染は、男でも女でも友達でも恋人でもない、別の生き物だ」 俺は、毎朝学校に行く前に、いつもそう心の中で唱えていた。 小学4年で転校していったアキが 高校の入学式の日、人混みの中から近づいて来て 「また会えたね・・・」 と耳打ちしたからだ。 その瞬間、俺は、恐ろしい視線を感じた。 その相手が誰だか、いまだに分からない。 ただ、学校でアキに会うたび

「ひとり遊び」・・・超ショート怪談。息子が語るのは。

息子の祥太は一人遊びが得意だ。 夫婦共働きのため、家にいてもかまってやる時間が少なく、 自然と一人で遊んでいる事が増えた。 あまり良い事ではないと言う奴も多いが、自立心が育つと言う奴もいた。 俺たちは寂しくないように、色々なおもちゃを買い与えた。 介護職の妻は、夜勤も多いので 俺が残業を控え、早めに家に帰るようにしている。 保育園に迎えに行き、祥太を連れて家に帰ると、 妻が今から帰るとメールを送って来た。 『急がなくっていいよ』 一行だけ送って、リビングにいる祥太を

「サッシの外」・・・超ショート怪談。

「コンコン」 早苗のマンションに遊びに行った夜。 少し風が出て来たのか、ベランダ側のサッシに何かが当たる音がした。 キッチンでつまみの用意をしている早苗は気が付かないようだ。 「風が強くなったみたいだよ。洗濯物、取り込もうか?」 アタシは立ち上がって、ベランダに近づいた。 後ろで早苗が、あっと小さく声を上げたようだが、 何も気にする事はないのに、こんな時は女同士、下着の柄を知られたとて 何の気にすることがあろうか。 アタシは、元カレが物干し棹から赤い下着をいやらしそう

「素振りの生徒」・・・怪談。夜のグラウンドで見たものは。

学校の近くに自宅があると、つまらない事で呼び出される。 その夜も、高校のグランドで夜遅くまで素振りをしている野球部員がいる、 というPTAからのクレームを受けた教頭から、 「とりあえず、見に行ってほしい」 と連絡が入った・・・もう11時を過ぎていると言うのに。 美術部の顧問で野球部とは全く縁が無い。 それどころか、グラウンドにも滅多にいく事は無い。 「こんな夜中に誰だ。これだから体育会系の連中は困るんだよ。 練習熱心なの良いけれど、いい加減にしてくれよな」 俺が働く

「カメラの横」・・・怪談。スタジオのカメラに映り込んだものとは。

久しぶりにスタジオの技術者と話をすることがあり、 「撮影スタジオも、その技術も随分と替わりましたよ」 と聞かされた。 「もうロートルには出番はないよ」 と聞かされているような気分になったが、 実際そうなのであろう。 グリーンバックでの撮影が主流になって以来、 照明が全体でどうなるか、人物に当たっている照明だけで 確認しなければならない。仮の背景を入れてくれることもあるが、 その背景に引っ張られると、映像に緊張感がなくなる。 そのハードルは年々高くなる。 という訳で、古き懐

「柱の傷は」・・・あっという間に読める超ショート不思議な話。

「柱の傷は」 「母さんが亡くなったぞ」 父から電話があったのが金曜日の午前10時。 その日の仕事を同僚にお願いして、九州の実家に飛んだ。 空港からタクシーで40分。 里山と田んぼに囲まれた一軒家が俺の生まれた家だ。 農家の長男として生まれた父は、25歳で母と結婚し、 生涯先祖代々の農地を守って生きて来た。 「家を継ぐ必要なんかないぞ」 俺が18の時、父はそう言って大学に行かせてくれた。 その言葉に甘えて俺は東京の大学に行き、東京で就職した。 年に数回の帰省が、年に