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怪談 超ショート あっという間に読める恐怖の物語。

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実体験、体験者からの伝聞、創作など、様々な怪奇と不思議な短編をまとめました。 #ショートショート #短編 #怪談 #不思議 #恐怖
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「絶対当たる占い師」 作・夢乃玉堂  絶対の恋を求めて占い師の元を尋ねてきた女性を待ち受けていた運命とは?

「絶対当たる占い師」 作・夢乃玉堂 緑鮮やかな渓流の流れは、意外に冷たく早い・・・ それが、その時の印象だった。 岩に当たって弾ける水しぶきが入り口を濡らす丸太小屋に、真野智花(まのともか)は入った。 肌にまとわりつくようなお香の香りが、智花に仕事を思い出させた。 壁際の影の中には、設え付けの棚が隠れるように鎮座していて、 埃を被ったアンティークな装飾品が並んでいる。 智花は、小屋を訪れた目的も忘れ、それらの品々に見入っていた。 「

「ファッションだけじゃないのよ」・・・怪談。同じ靴を選ぶ理由。

女性のファッションは、戦闘服だと言って人がいる。 それは時に、所属意識の象徴であったり、時に営業のツールであったり、 わが身を隠す迷彩服になることもある。 今回は、そんなファッションの重要なアイテム「靴」のお話。 『同じ靴』 里奈は、いつも同じスニーカーを履いている。 最初気付いたのは、仕事帰りに会った時だった。 黒のビジネススーツに不釣り合いの赤いスニーカーを履いている。 「足が疲れるから、ヒールは会社のロッカーに入れて、これで通勤しているの」 そんな言い訳をその時

「自転車」・・・実際に聞いた話ともう一つ。

『自転車』 あれは確か、学生ホールでQ子を含めた4、5人で話している時だった。 誰からともなく怖い体験の話題になったんだ。 多分、Q子がいたからだろう。 後輩のQ子は、よく絡まれる。 但し、絡んでくるのは人間ではなく、妖怪・幽霊の類だ。 Q子が引っ越してくると平穏なアパートは事故物件並みに騒がしくなり、 結婚式では花嫁の入場曲になぜかお経が流れて、スタッフが大慌て。 海水浴で海に入ると、必ず足首に人の手の形をしたあざが浮かび上がる。 七不思議が八つにも、九つにもなると

「未来の記念日」・・・怪談。カレンダーには忘れられない予定と・・・。

『未来の記念日』 今田佐代子を襲った悲劇は、同僚たちの同情を誘った。 32歳。お見合いから半年で結婚をし、そのひと月後に交通事故で夫を亡くしたのだ。 同僚の中野美玖たちは、もしかすると、このまま会社を辞めてしまうのではないか、 と噂したが、その心配は杞憂に終わった。 「おっはようございま~す」 1週間後、出社した佐代子は以前に増して明るくなっていた。 予想外の態度に驚いた、美玖は思わず無神経な言葉を発してしまった。 「どうしたの? 旦那が亡くなってまだ忌引きの休みが

昔のスピリチュアルな人の話

村の除霊師が行う、成仏させる方法とは一体何か。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 『クウさん』 昔は「拝み屋」とか「除霊師」と呼ばれる霊媒職の人が、どの町にも一人や二人はいた。 私が子供の頃住んでいた村にも、 「クウさん」と呼ばれる除霊師がいた。 主に、不幸の続いた家の葬儀の席に 小さな壷を持って現れ、 お経とも祝詞とも言えない呪文を唱え、 「お納めいたしました」 と言って帰っていく。 クウさんは、どんな時もお金を受け取ることは無く、 お礼には、酒と塩を受け取

「エレベーターの女」・・・怪談。女は何を恐れたか?

「ちょっと前なら覚えちゃいるが・・・」 という歌詞?の歌がありましたが、 人間の心は移ろいやすいものです。 今回は、そんなお話です。 ・・・・・・・・・・・・ 『エレベーターの女』 「怖い!」 エレベーターに乗り込んだ途端、中にいた女が口元を抑えながら 奥の壁に張り付くように下がった。 何が怖いんだろうと目線を追うと・・・どうやら私の事らしい。 狭いエレベーターの箱の中に男と二人きりになって 不安なのは、分からないでもないが、怖いと口に出すほどではないだろう。

「割れる指輪」・・・怪談。決意のその向こうに待っていたものは。

プロポーズの瞬間というのは、緊張するものです。 準備に準備を重ねて、この人なら大丈夫と思っていても、不安は残ります。 時には、その不安が恐ろしい形で現実になることも・・・。 ・・・・・・・・・・・・ 『割れる指輪』 これは、とある事で知り合った人から、『友人の話だけど・・・』と前置きをして聞かされた話である。 その友人が30歳の誕生日に、付き合って一年になる女性と高級レストランで食事をしたらしい。 デザートが運ばれて来たところで、友人はプロポーズの言葉ともに ケース

「絶対当たる占い師」(リトライ版)・・・本日放送。演出が変わるとどう変わるか。

本日、14日木曜日。SKYWAVEラジオで私の短編が朗読されます。 番組は、16時00分~16時59分の「清原愛のgoing 愛 way」 おなじみの、ナレーター俳優として活躍中の清原愛さんが、元気なMCでお届けします。 朗読で読んでいただく作品は、このサイトのトップでも読める「絶対当たる占い師」。 以前、清原愛さんが一度チャレンジされたのですが、 今回は、さらにバージョンアップした新演出での朗読です。 果たして、清原愛さんがどのように料理するのか。 皆さんも是非お楽

「すきま」・・・怪談。隙間を恐れる男は何を見たのか。

真夜中に、障子や襖がほんの少し開いていることに気づいた時、 わざわざ布団を出て閉めに行く勇気がありますか? 今回は、そんな怖い隙間のお話です。 ・・・・・・・・・・・・ 『すきま』by 夢乃玉堂 「目が覗いてくるんだ」 杉田は、明らかに神経過敏になっていた。 レスリングのインターハイに向けた強化選手に選ばれた杉田が 練習にも大学にも顔を出さなくなって二週間。 業を煮やした部長の命令で、同期の俺と吉野がアパートを訪れたのだが、 杉田は奇妙な話をするばかりだった。 「

「高速嫌い」・・・怪談。深夜のタクシーに乗ってきたのは。

昨今では少なくなりましたが、一時期タクシーは効率の良い遠方客を優先、 ひどいときには、「近くは行かない、別のに乗ってくれ」なんて言うものまでいました。 今回はそこまでひどく無いですが、似たようなお話。 ちなみに、今は都心を除くとタクシー自体がつかまりにくく、深夜に移動するのは至難の業です。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 『高速嫌い』 バブルの頃よりは少なくなったとはいえ、金曜の夜は今でもタクシーの稼ぎ時である。 タクシードライバーは歩合制なので、どれだけ効率よ

「闇が覆う村」・・・不思議な話。薬売りがたどり着いた村は、なんとも奇妙だった。

『闇が覆う村』 元禄が終わり、江戸の人々が華やかだった時代の名残を忘れつつあった頃。 越中で眼病に聞くという新しい点眼薬を仕入れた薬売り仙吉が 武蔵国を目指して脇街道を歩いていた。 「おかしいな。これまで何度も通った道なのに」 歩きなれた道のはずなのに、仙吉はいつの間にか見知らぬ田園地帯に出てしまった。 「まだ陽も高いし焦ることはあるまい」 仙吉は持って来た握り飯を頬張り、見通しの良い畔道を歩き続けた。 しばらく行くと、道の真ん中に古い木製の鳥居が立っていた。

「そこに居ないお前」・・・俺じゃない俺。

『そこに居ないお前』 by 夢乃玉堂 始まりは、昼休みに同級生が言った勘違いの話だった。 「坂下。お前昨日、学校サボって自転車でどこへ行ったんだよ」 「昨日? それ誰かと見間違えたんだよ。俺、ずっと風邪で寝込んでたぞ」 「いや。お前だったよ。朝学校に行く途中で黒の自転車乗ったお前とすれ違ったんだよ。南高のジャージ着てたし、長髪で銀縁の眼鏡かけたから間違いないって。なのに声かけても返事しなくてさ。シカトかよ冷てえなって思ったんだよ」 「だからその時間は医者にいたよ。そ

「扉の裏から」・・・ホラー短編。ホテルでアレを見つけてしっまた時には。

『扉の裏から』 かすかに寝息を立てている女の横で トオルは寝付けないでいた。 「あの護符のせいだ」 クラブで拾った女を連れて入った、薄暗くて狭いホテルの一室。 歯ブラシを探して洗面台の扉を開いた時、 扉の裏に神代文字が書かれた護符、おふだが貼られているのに気が付いた。 しかしその時は、これから行う行為に気が急いていたので 目立たないところに火除けの護符が貼ってあるんだな、 と大して不思議にも思わなかったが 一通り終わって考え直すと奇妙だ。 目的が限られているホテル

「始発前の仮眠室」・・・怪談。駅員に伝わる不思議な話。

鉄道会社によって多少違いますが、駅には仮眠室があります。 これは主に始発に対応するためです。早朝にタクシーや自家用車で駅まで来て、入り口を開けるところもあるそうですが、その鉄道会社では駅の仮眠室に駅員が泊まり込む、と決まっていました。 居残りの駅員は、終電を見送った後、駅の入り口にあるシャッターを閉めて構内の灯りを消し、駅員室の奥にある仮眠室で少し眠ります。 そして翌日の始発が走る1時間くらい前、午前4時前には起きて、 再びシャッターを開けるのです。 以前は、ベテラン駅