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よこはま共創博覧会に登場(行イノ#3)

 10月21日(金)~28日(金)の8日間、横浜市役所内でよこはま共創博覧会が開催されました。
 10月21日のオープニングセッション「財政ビジョン、行政運営の基本方針にみる協働・共創」の中で、「財政ビジョン」と「行政運営の基本方針」それぞれに出てくる公民連携の考え方や取組の方向性などを紹介しました。
 今回は、その内容をかいつまんで報告します。

なぜ、財政ビジョンをつくることになったのか

 令和2年8月に、2065年度までの長期の財政推計を試算し、公表しました。横浜市の歳入の約40%が市税収入であり、さらに、そのうちの約半分は個人市民税です。したがって、納税世代が減少すると市税収入の減少にもつながります。一方、歳出は、高齢化の進展が当面続くことや子育て施策の充実などから、社会保障経費は引き続き増えることが見込まれます。将来人口推計データを使い、機械的に試算し、具体的な数値として歳入と歳出の差がどのくらい広がるのか見える化することにしました。

将来見込まれる収支差

 このままいくと、約40年後の2065年度には1,788億円(令和4年8月推計更新バージョン)の収支不足が生じるおそれがあります。しかし、今から収支差解消に向けて取組を進めていけば、このような状態に陥らないわけです。そこで、今だけでなく将来にわたり持続的な財政を実現するために、財政運営の中長期の方針として「財政ビジョン」を策定し、ビジョンに沿った財政運営を進めることにしています。
 

横浜市の持続的な発展に向けた財政ビジョン

 では、財政ビジョンの概要についてみていきましょう。

目指すべき「持続的な財政」の姿


財政ビジョンの概要

 図の右上に、目指すべき「持続的な財政」の姿をまとめました。
 基礎的な行政サービスを提供し続けることができる「安定性」、自然災害等による急激な変化に対して、機動的・柔軟に対応できる「強靭性」、将来のための資金を効率的に調達し、事業を進めることができる「将来投資能力」の3つの性質を備え、市役所としてやるべき役割を将来にわたり継続的に発揮できる財政が目指すべき姿です。
 そして、財政の持続性の状態を指標を用いて定期的にモニタリングしていきます。

財政運営の基本方針

 図の左半分には、目指すべき「持続的な財政」の姿を実現するための基本的な考え方である、財政運営の基本方針があります。基本方針は次の6つです。
①債務管理
    市民一人あたりの債務残高を中長期に管理し、計画的・戦略的に市債を活用します。債務の返済資金は、返済計画に合わせて、予算や減債基金(※1)への積立てにより確実に手当てします。
(※1) 
借入金の将来の返還時期に備え、あらかじめ必要な資金を貯めておくための基金

②財源確保
    財源の安定的・構造的な充実に向けて、総合的に取り組みます。従来の財源調達手段に捉われず、新たな考え方や手法を取り入れながら、財源を確保します。
 
③資産経営
 保有する土地・建物の戦略的利活用により、価値の最大化を進めます。公共施設が提供する機能・サービスを持続的に維持・向上させるため、保全・運営の適正化、規模の効率化、財源創出の3つの原則により、公共施設マネジメントを推進します。

④予算編成・執行
 施策の推進と財政の健全性の維持を両立する予算編成を行います。十分な余力を確保し、臨機応変に対応できる強靭な財政構造を構築・維持します。政策展開・行政運営において、データ活用を徹底します。

⑤情報発信
 財政に関する現在・過去・未来の情報やデータを共有し、協働・共創による市政を推進します。

⑥制度的対応
 持続可能な市政運営の基盤となる地方税財政制度の充実に向け、行政現場の実情と客観的なデータに基づく具体的な国への提案・要望に取り組みます。

将来アクション

 図の下側に山型のイラストがあります。右に行くにつれ、山の高さが高くなっています。この高さは将来見込まれる収支不足額をあらわしています。収支不足を解消し、必要な行政サービスを行っていくために、財政運営の基本方針に基づいた将来アクションに取り組みます。

①収支差解消アクション
 2030年度までに、減債基金に頼らず(※2)収支差を解消します。
  (※2) 
 借入金の返済のために、もともと予定していたタイミングよりも前に、減債基金を取り崩して活用してしまっている状態。先に使ってしまった分を基金に積み戻していかないと、将来の借入金返済時に必要な資金がなく、資金ショートしてしまうおそれがあります。

②債務管理アクション
 一般会計が対応する借入金市民一人当たり残高を2040年度に現在水準(約84万円)に抑制(※3)
(※3)
人口減少していく見込みのため、これまでの同規模の新規の借入金を続けていけば、市民一人当たり残高は増えていきます。そこで市民一人当たり残高を意識して債務管理することで、新規の借入金をコントロールしていきます。
   
③資産経営アクション
 公共建築物の床面積を2040年度時点で現在水準より増やさず、2065年度までに▲10%縮減します。
 未利用等土地を2030年度までに30ha2040年度までに60ha利活用しま す。

④国への要望
 地方税財政制度への提案を行います。

財政ビジョンでの共創についての考え方


 将来にわたり持続可能な財政運営であるために、財政ビジョンでは、協働・共創の取組をこれまで以上に推進していくことにしています。財政運営の基本方針④予算編成・執行、⑤情報発信を中心に、その考え方をまとめています。


予算編成・執行の基本方針での「共創」の内容

 
 ④予算編成・執行の基本方針の中では、市民協働・公民連携の推進について、「公共」の担い手について、市民協働・公民連携の取組を一層発展させ、多様化・重層化を図るとともに、自立的で、公共サービスの革新に意欲
的な
民間の多様な主体が活躍できる環境を創る、としています。

情報発信の基本方針での「共創」の内容

 また、⑤情報発信の基本方針の中では、市民との「協働・共創」につながるオープンデータの加速化について、財政に関するデータは公共財産であるという視点に立ち、公・民での「協働・共創」や、民間でのイノベーションを促すため、徹底したオープンデータを推進する、としています。

横浜市財政見える化ダッシュボード


 オープンデータの一環として、「横浜市財政見える化ダッシュボード」を公開しています。トップページには、行政サービスの分野別のアイコンがあります。このアイコンをクリックすると、当該分野の予算額や、関連事業一覧のデータなどがわかる検索ページに移ります。検索ページにある事業一覧の事業名をクリックすると、個別事業ページに移ります。このページでは、当該事業の予算額推移や、関連データ、事業概要などを確認できます。あわせて、その事業に対し、公民連携提案できるフォームも掲載しています。
 

行政運営の基本方針(素案)での共創についての考え方

 次に、行政運営の基本方針の中での共創についての考え方をみていきましょう。

行政運営の基本方針の位置づけ


 行政運営の基本方針とは、財政(財政ビジョン)を土台と下持続可能な市政のもと、これからの政策(中期計画)実現を支えていくために、横浜市役所の「組織・人材」や「運営の仕組み」をどのような考え方で今後進めていくかをまとめたものです。2030年頃に向けた今後10年程度の方針です。
(第1号の投稿で紹介していますので、ぜひ、そちらも読んでください!)
 基本方針の構成は下図のとおりです。

行政運営の基本方針の構成


 行政運営の基本方針では、目指すべき姿である、「信頼ある行政運営」、「責任ある行政運営」に向けての取組の基本的な考え方である3つの重点方針と、市役所・職員の基本姿勢である3つの視点を設定しています。
 重点3に「住民自治の充実と協働・共創による地域の更なる活性化」、視点③に「公民連携」を掲げていて、共創は、重点取組として、また、手法としても力強く推進していくとの思いをこめています。
 では、行政運営の基本方針での協働・共創の記載について確認していきます。

重点事項としての共創

 協働・共創の考え方として、下のスライド2つにあるように、3つを掲げています。

行政運営の基本方針 重点3での協働・共創の考え方

 
 そして、この考えのもと、具体的な協働・共創の取組の方向もまとめています。

行政運営の基本方針 重点3での協働・共創の取組の方向

 
 大きく2つの方向性を示していて、
 ・地域で活動する多様な主体との更なる連携強化と適切な支援の展開で
  は、例えば、多様な主体や中間支援組織等と行政との連携や協働の強化
  を
 ・市内外の企業・団体などの多様な主体との更なる連携強化やオープン
  イノベーションの推進
では、例えば、
    地域課題の可視化・発信機能の強化
    窓口機能や対話の場・機会の充実
    共創ラボ・リビングラボのような社会実験のためのプラットフォー
    ム機能の強化
を進めていきます。

基本姿勢としての共創

 行政運営の基本方針を進めていくうえで、あらゆる場面で、「DX・データ活用」「公民連携」の視点ををもって取り組むことにしています。

行政運営の基本方針 視点③公民連携

重点事項の共創の考え方と重複する内容もありますが、次の5つを意識して市役所・職員は公民連携に取り組みます。
・限られた資源の中で複雑化・多様化する課題に対応し、市民の皆様の満
足度を高めていくために、多様な主体との協働・共創に取り組みます。
・地域・企業などの多様な主体と連携し、各主体がもつ技術やノウハウ等
を最大限発揮していただきながら、公的サービスの提供や市民の皆様の課題の解決を行っていくという発想へと、これまで以上に「創造・転換」を進めます。
・社会課題の解決を目指し、企業をはじめとしたさまざまな民間事業者と行政の対話により連携を進め、相互の知恵とノウハウを結集して新たな価値を創出する「共創」に積極的に取り組みます。
・民間事業者の知恵とノウハウを発揮していただくためには、市が持つ資源・データをオープンにするとともに、市が自ら抱える行政課題・地域課題を積極的に可視化・発信し、対話の場や機会を充実していきます。
・さらに、公民連携によるオープンイノベーションを推進することにより、民間同士の連携へと波及していく好事例を増やしていきます。

 以上、財政ビジョンと行政運営の基本方針における共創の位置づけを紹介しました。
 横浜市は、これまでも共創の取組を市内の至るところで行ってきました。その成果も踏まえながら、この取組をさらに広げていくこと、深化させていくことをこれまで以上にやっていく、そんな意気込みを2つの方針から感じ取っていただけたのではないでしょうか。
 市政運営、行政運営、財政運営というと、市役所・職員が中心となって行うものといったイメージをもってしまいます。しかし、行政だけでまちづくりはできません。多様な主体と一緒になって「都市を経営する」との発想がより大切です。ともに考え、ともに行動していくことを通じて、横浜市をより良くしていく。そして、将来にわたって、住みやすく、働きやすく、活動しやすい街をつくっていく。公民連携をあえて意識しなくても、自然に取り組めている、そんな横浜市にしていきたいですね。