ずぶ濡れのうたた寝

 わたしが大阪に住んでいた頃の話です。
 たしか小学校の五年生か六年生で、その日は卒業式の次の日で春休みが始まっていました。わたしはおばあちゃんに連れられてアニメの映画を見て、それから普段は買ってもらえないようなお洋服を三着も買ってもらいました。
 嬉しくて、早くおかあさんに見せたい、早く帰って来ないかなあ、なんて風に思いながらうとうとして目を覚ましたら、遠くの地方で地震があったとテレビが言っていました。おばあちゃんはその地方の生まれだったので悲しそうな顔をしていたのを覚えています。その日、新聞記者だったお母さんは帰ってきませんでした。

 それから大学生になってわたしは上京しました。大阪もとても街は賑やかでわたしはあまり得意じゃないのだけど、東京はもっと騒がしくて、電車に乗るのも難しくて、わたしは驚きました。
 その年は台風や大雨がきびしい年で、雨で東京よりもっと北の地方では洪水が起きました。十月だというのに台風がやってきて、その日は早くに終電が終わってしまったので、わたしは彼氏の言うことに従って二人で部屋でパニック映画を見ました。それは男の子が好きそうな映画で、あまり興味がなかったわたしは眠ってしまいました。目を覚ますと、爽やかな青空の朝が来ていて、彼氏はすぐ近くにある実家に木が倒れて大変だ、すぐ行かなくちゃと言っていました。

どうやら私の午睡には不思議で危険な力があるようだし、悲劇はあっという間に起こり、あっという間にさるようです。わたしは、ジュリエットを不憫に思います。

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