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ホテルではなく、NOT A HOTEL をつくる。

こんにちは、NOT A HOTELの井上雅意と申します。今、NOT A HOTELという2020年4月創業のスタートアップでCXOとして「世界中に自宅がある、あたらしい暮らし」をつくっています。

「世界中どこでも自宅のように暮らせる」体験を実現するために、建物 → IoT → ソフトウェア → 運営の仕組みを一貫して形にしていきます。正直「わからないこと」だらけです。

今回のnoteでは「あたらしい暮らし」という言葉が指すのはどんな体験なのか、どうやって実現しようとしているかということついてお話したいと思います。これからの暮らし方に興味がある方や、それを一緒に作りたいと思ってくださる方に届けばと思っています。

「NOT A HOTEL NASU MASTERPIECE」外観(完成予想図)

CXOのしごと

CXOの役割は、お客さまに「いい体験」を提供することです。これまでメルカリ、NOT A HOTELと会社の規模もサービスも全く違う2社を経験していますが、これはどんな会社だとしても普遍的なことなのではないかと感じます。

では何をしているかというと、

  • サービスの設計

  • プロダクトビジョンとマイルストーンの設定

  • ソフトウェア仕様の策定

  • UIデザイン

  • プロダクトチーム作り、採用

と様々です。
これだけでもいろいろな感じはありますが、NOT A HOTELの面白い(大変な)のはソフトウェアだけでなく、ハードウェア(建物とIoT)、さらにはホテル運営の仕組みまで一貫したものとしてつくりあげるという点です。

今日は上流に位置している「サービス設計」について深掘りしたいと思います。

「NOT A HOTEL NASU THINK」リビング(完成予想図)

いい体験はどうやってつくるのか

端的に「いい体験」といっても、万人にいい体験など基本的には無いと思っています。むしろ、万人にいいものを作ろうとするほど「誰にとっても“最高”に使いやすいもの、ではなくなる」というジレンマがあります。

逆に刺さるものがあるプロダクトならば、少しの使いにくさや足りない部分があったとしても、そのプロダクトにしかない価値があるので使い続けるでしょう。このように、万人に向くほど価値のエッジが削がれて「誰にも刺さらないもの」になってしまうというのはよくある話です。

そこで体験を設計する上で最初にするべきことは、どういった人にどんな体験を提供するか旗を立てる(エッジを立てる)ことです。これが意外と難しかったりします。

NOT A HOTELにはオーナーとゲストという登場人物がいます。オーナーはNOT A HOTELを購入しそこで暮らす方、ゲストはNOT A HOTELにホテルとして宿泊する方です。オーナーよりもゲストのほうが利用する総数が多いため、どうしてもゲストに目線がいっていました。

いまでこそ、「オーナーファースト」ということが明確にメンバーの意識としても根付いていますが、実は最初はオーナーを包括した「ゲスト」ターゲットとしてサービスを設計をしていました。ゲスト向けに作る、オーナー向けに作るってそんなに大差ないことじゃないかと思われると思いますが、これが結構違ったりします。

ホテルなのか、NOT A HOTELなのか

ターゲットをゲストにすることの一番の弊害は、「『NOT A HOTEL』ではなく『ホテル』をつくってしまいそうになった」ということです。

例えばチェックイン/チェックアウトひとつを例にとっても、旅行先(=短期滞在)の「ホテル」では「お出迎え」「チェックイン時のウェルカムドリンク」など特別感のあるサービスが求められるかもしれません。それが暮らし(=長期滞在)の「住宅」となると「到着/出発時間の柔軟性」「工程のスマートさ(非接触・容易性)」などが求められそうです。そしてここが変わるとサービスのコアな価値や設計が、ガラリと変わっていきます。

約1年かけて、サービスを誰のためにつくるのか議論を重ねました。オーナーとゲストの両方を向こうとするほど、いつの間にかNOT A HOTELらしさに欠ける体験になっていきました。そこで「自分たちは何をつくりたいんだっけ」という本質に立ち返ることになります。つくりたいのは「あたらしい暮らし」で、それは主にNOT A HOTELで暮らすオーナーに提供する価値だ、と意思決定します。

その日を境に、オーナーに向けたサービス設計に振り切ることになります。そこから設計を再構築したものも、多くあります。やり直しはもちろん大変ですが、そこで生まれた個性こそが、NOT A HOTELらしさであり、自分たちが提供する真の価値です。

オーナーが求めているのは至れり尽くせりの体験ではなく、「自宅のように落ち着ける、でも困りごとにはすぐに対応してくれる、そんな柔軟な体験」ではないかと考え直すようにサービス設計からやりなおしました。

下記は一部ですが、ホテルを作ろうとしていたときととNOT A HOTELを作るときの違いはこのようなものがあります。

ホテルとNOT A HOTELの体験の比較イメージ

まずはプロダクトのリリースに向けてオーナーを基準としたNOT A HOTELのプロダクトをつくっています。NOT A HOTELに滞在するゲストの方にも、オーナーになる体験を感じていただけたらと思っています。

“超”クリエイティブ

「ホテルではなく、NOT A HOTELをつくる。」という議論をしてからは、真に常識を疑うようになりました。

キャンセル規定や清掃や利用予約など、どれかひとつをとっても「ホテルだったら普通だったらこうするよね。でもNOT A HOTELの場合はこうあるべきじゃないか?」という、よりクリエイティブなアイディアが求められるようになりました。

まだ世の中にないものをつくっているからこそ、普通のアイディアではつくれない。それがサービス設計の難しさであり、楽しさでもあります。

このクリエイティブさはサービス設計以外にも、建築, BizDev, コーポレート, サービス運営などNOT A HOTELをつくる全てに必要な要素です。2022年2月からはVALUEのひとつである「超クリエイティブ(Be Creative)」という言葉にそのまま反映されました。

NOT A HOTELは「自分たちが超ワクワクしながら、超クリエイティブなことを、超自律してやっていこう。」というカルチャーです。

世界中に自宅がある、あたらしい暮らし

NOT A HOTELの価値を僕の言葉で表現すると「世界中どこにいっても暮らせる(ようになる)こと」です。

それを機能的価値に分解すると3つにブレイクダウンできます。

1. 自宅として使える
NOT A HOTELのオーナーになることは、あらゆる場所に自宅を持つということだと思っています。ホテルと自宅の違いは「使い勝手がわかって、落ち着ける」という点です。必要なものがどこにあって、照明のスイッチのどこを押せばいいか迷わない、という当たり前のことが以外とホテルだと難しかったります。そんな自宅では当たり前のことを実現するための、使い勝手と仕組みを作っています。

2. 世界中のNOT A HOTELを相互利用できる
ひとつのNOT A HOTELを所有すると、これから国内・海外に増えていくNOT A HOTELを相互利用ができるようになります。フランスにあったりモロッコにあったり、メキシコにあったりと世界中に自宅がある。そんな暮らしがあったら、楽しいと思います。

3. 収入が得られる
多拠点で生活する上でのボトルネックといえば家賃・宿泊費です。メインの拠点を持ちながら、他の場所で暮らそうとすると家賃やローンの返済に加えて、滞在先での宿泊費がダブルでかかってしまうことになります。NOT A HOTELならメインの拠点を資産として持ちながら、使わない時にはゲストに貸し出して収入を得ることができます。住むことが、支出にならない世界観です。

建築をつくるというのにはソフトウェアで完結するサービスと比較にならないほどの時間がかかりますし、どこのハウスを利用するときでも荷物を取り出せるオンラインクローゼットなど、まだ構想中のものもあります。さらに例を出すなら(現時点で個人的なアイディアでしかないですが)NOT A HOTEL間の移動をすべて提供するような仕組みとかがあってもいいですよね。

途方もない「どうやって実現するの?」というようなアイディアですが、これくらいのクリエイティブさでつくっていかないと、NOT A HOTELらしい体験にはならないと思っています。

とにかく世界中で暮らせるようになるために、自宅だったら発生しない小さなペインをひとつずつ解決していきたい。やることは無限大ですが「あたらしい暮らし」に必要な仕組みはつくっていくつもりです。

「NOT A HOTEL NASU」の工事進捗

なぜNOT A HOTELに入ったか

最後になりますが、NOT A HOTELに入った理由についても触れたいと思います。縁あってNOT A HOTEL代表の濱渦さんと知り合いました。ノリで、当時まだ工事すら始まっていなかった那須の土地を見に行くことになりました。

本当に広い、まだ何もない芝生がそこにあって、そこにスタートアップが建物を建て、そこに人が住む。それはなんかおもしろいことだなと思いました。

百聞一見しかずとはこのことで、あの時の感情を言葉で説明できる気がしないのですが「マジでここにつくるの!?」という驚きがすごかったんです。「NOT A HOTEL NASU」が始まったら、ぜひゲストとしてでも泊まりに来ていただきたいです。

「暮らし」をつくるというのは、当たり前ですがほぼすべての要素が含まれています。土地があって、そこに建築(住空間)があり、そこで生活をする。そこには視覚的なデザイン、間取りによる人の行動のデザイン、光や風や眺望といった環境のデザインなど、生活をデザインする全てが詰まっています。

そんな建築を0からつくる面白さに携われるTechスタートアップは、NOT A HOTELの他にないです。「世界中どこでも自宅のように暮らせる」体験を実現するための、建物、IoT、ソフトウェア、運営の仕組みを全部つくる。大変さもありますが、この“常識を越える”プロダクトの面白さをひとつずつ具現化していきます。

「NOT A HOTEL NASU」に広がる草原

NOT A HOTEL ではプロダクトマネージャーやソフトウェアエンジニアといったプロダクト開発メンバーをはじめ、コーポレート、カスタマーサクセス、セールスなど多岐にわたる職種を募集しています。ご興味のある方はぜひお気軽にご連絡ください。


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