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望郷の旅vol.0.125(あるいは行ったつもりの沖縄その1)

台風6号さえ来なかったら。
5年半ぶりのコザの街を探訪していたのに。
物産展で沖縄行けるからいいやと食べなかった沖縄そばやタコライスを満喫していたのに。
久しぶりに会う友達と積もる話をしていたろうに。
那覇の山の内ホテルでふかふかベッドに横たわり、翌朝、おいしい朝ごはんを満喫していたろうに。
デイゴホテルの大浴場でゆったりと湯に浸かり、時に部屋で1日やーぐまい(ひきこもり)したり、中央パークアベニュー、一番街、ゲート通りを散歩して何かつまみつつ買い物したり、沖縄のセブンイレブン、ローソン、ファミリーマートで独自の商品をみつけてそれらをお土産にしたり。
そして、沖縄ロック絡みの情報を収集したり、今の沖縄を体感できたろうに。
台風により、沖縄行きが絶望的になった時は部屋で2日間泣き崩れた。四十路にもなってとはわかっているけど悲しみは癒えず、8月1日~2日はしばらく立ち直れなかった。
ニュースやSNSで台風6号が沖縄にもたらした未曾有の災厄と長引くライフライン断絶、食糧難を知り、「こんな時にノコノコ沖縄に行って帰れなくなり、貴重な避難所のスペース、水、食糧を奪い、沖縄の人に迷惑をかけなくて良かったんだ。ある意味塞翁が馬かもな」と気持ちを切り替え、会うはずだった友人たちに渡すはずだった土産をゆうパックで送る手配をした。
それでもかなり台風による沖縄行き中止のショックと悲嘆はしばらく癒えず、特に沖縄そばとタコライスへの渇望は禁断症状レベルにまで陥った。
それならばと行ったつもりで沖縄の味を堪能するかと熊本市街地にある沖縄料理店を2日かけて2軒行ってきた。
8月5日。1軒目は熊本市中央区草葉町にある『ぬちぐすい』。ご店主の新里さんはエイサーの衣装で出迎え、料理を調理してサーブしてくださる。
オーダーしたのはステーキ定食とソーキそば。そしてネカフェで夜を過ごし、朝ごはんとして食べるためのじゅーしーおにぎり。
まずはきんきんに冷えたさんぴん茶で水分補給。

『ぬちぐすい』さんよりステーキ定食。肉がとにかく柔らかい!甘酸っぱめのソースと合うんだよなあ。これが。

さんぴん茶で水分を取ったら食欲が限界突破。
食べた。とにかく食べた。新里さんに苦笑され、慰められるくらい食べた。ステーキ定食で肉の柔らかさと旨味と甘酸っぱいソースで沖縄のステーキらしさを堪能し、軟骨ソーキそばで出汁の風味、麺のこし、柔らかくほろりとろける軟骨ソーキをしみじみ満喫した。
物産展に行ったのに、「タコライスとそば食べてなかった!あ、でも。来週には沖縄行けるし、いいや。楽しみにとっておこう」と楽観視して、ゴーディーズのハンバーガーに胃袋を全振りしていたからなおさら沖縄ー!な食べ物への渇望は激しかった。
ステーキ定食と軟骨ソーキそばで腹がすっかりくちくなり、〆はグァバジュースで。脳内では護得久栄昇の『Mr.バンシルーチャメおじさん』がエンドレスする始末だ。
新里さんにお礼を言い、ネカフェでのんびり。折しもこの日は火の国祭りという熊本市内の大きなイベントがあり、それに伴いホテルの代金がはね上がったのと、次こそはの沖縄行きのためになるべくお金をとっておきたくてネカフェ泊まりにすることにした。冷房はきいているけど身体に熱がこもるからかなかなか寝付けない。眠気がくるまでアマゾンプライムで配信中の『ブリティッシュベイクオフ』のシーズン3を観て誰が決勝進出するかなと映像を見ながら贔屓の挑戦者のベイキングの出来に一喜一憂した。
だんだんと眠気がさし、リュックを枕にして念のために用意した長袖と小さなブランケットで寒さ対策をして眠り、明け方、ネカフェ内に用意されている粉末のワカメスープと一緒にじゅーしーおにぎりをしみじみ食べた。
『ぬちぐすい』さんのじゅーしーは味あふぁーで、けれど野菜やもずくや豚肉の旨味が広がるおにぎりなので売り切れてない限り、じゅーしーおにぎりは必ずテイクアウト購入しているくらいお気に入りなのだ。
こうしてどうにか沖縄成分を半分程補給して私の『行ったつもり沖縄』な沖縄料理店探訪1日目は終えたのだった。

(続く)

(文責・コサイミキ)


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