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【親が反ワク】なぜ人は陰謀論にハマるのか、傾向と対策。
新型コロナウイルス感染症が事実上の終息を迎え、社会が正常化してから久しくなりました。
新型コロナウイルスのパンデミックが明らかにしたのは、正確な情報とそうでない情報を区別できる人たちがあまり多くないことです。
総務省が2020年に行ったwebアンケート調査では、72%の人が新型コロナウイルスに関する不正確な情報に接触しており、32%の人が不正確な情報の拡散に加担していたことが判明しています。
誤った情報を拡散するだけでなく、その情報を信じ込み、自身の主義主張を他者に押し付ける人も現れました。いわゆる陰謀論の信奉者(以下、陰謀論者と呼称)です。家族が陰謀論者になったことで家庭崩壊や離婚の危機に直面した事例も挙がっており、社会問題になっています。
1. どのような人たちが陰謀論を信じるのか
日本の研究チームが2023年に発表した論文では、陰謀論者に関する様々な先行研究が紹介されていました。
陰謀論者には共通の心理傾向があることが分かっています。具体的には、疎外感を持ち、自尊感情が低く、権威主義的であり、敵意を抱きやすい傾向があるとされています。
論文では、心理的なメカニズムを次のように説明しています。
ある特定の人々にとって陰謀論が出来事の説明として魅力的に映るのは、疎外され、社会の中で不遇な目に遭っていることを陰謀の主体に原因帰属し、その結果として自尊感情の維持を可能にするといった、ある種の正当化を行うためだという説明が提案されている。
つまり、自らの置かれた境遇に不満を持つ人たちが、その原因を外的環境に転嫁し、心理的安定性を保つための手段が陰謀論の信奉である可能性があります。
また、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターが2022年に実施した調査では、陰謀論を信じやすい人の属性が明らかになっています。
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国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(2022)
政治的関心が高い・女性・高齢・動画共有サービスの利用時間が長いと陰謀論を信じるリスクを高め、反対にリテラシーが高い・ネット歴が長い・大卒以上・マスメディアの利用時間が長いと陰謀論を信じるリスクが低くなることが示されています。
2. 身近な人が陰謀論にハマっていたら
筆者の両親は陰謀論者です。筆者が物心ついた頃には彼らは陰謀論に傾倒しており、西洋医学の代わりに代替療法や民間療法を推奨し、新型コロナワクチンも接種していません。
化学的な処理を経て生み出された物質は有害であると認識しており、味の素をはじめとする食品添加物に忌避感を示し、代わりに無農薬や無添加を絶対視する傾向がありました。
世界は闇の権力者によって支配されており、人類の人口削減や家畜化を目的に暗躍していると確信しています。
皆さんの周りにもこのような思想に傾倒している人はいないでしょうか。もし身近な人が陰謀論者になってしまった場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。
3.陰謀論者の処方箋
英国University College London - Institute of Educationが陰謀論者への対処方法をまとめたガイドラインを作成しており、たとえば以下の方針が示されています。
①対立的な議論を避けること
陰謀論者の主張を真っ向から否定したり、嘲笑したりする態度は、陰謀論者の信条をより強固なものにさせ、逆効果となる可能性が高いです。
人間には、自分が立てた仮説を補強する情報を重視し、仮説に沿わない情報を軽視する心理的傾向があります(確証バイアス)。特に、仮説を否定するような情報に直面したとき、自分の仮説に固執し、その信念をより強化することがあります(バックファイア効果)
②情報の出所や根拠を考えさせること
誰が言っていたのか、どのような媒体で情報を入手したのかを聞き、信じることを立ち止まらせるのは有効とされています。
筆者の肌感覚では、陰謀論者は小規模なコミュニティや匿名からのリークを信じていることが多いです。これらの情報は検証されておらず、特定の意図をもった個人や団体が流布した不正確な情報である可能性が高いです。
③論理的な欠陥を示すこと
陰謀論者はよく「政府やマスコミは真実を隠している」と主張します。
ところが、大きな陰謀であればあるほど、関係者の総数は膨れ上がるため、隠し通すのが困難となります。
たとえば、エドワード・スノーデンが米国政府の国家機密を暴露した事件や、CIAによる盗聴が発覚したウォーターゲート事件のように、大きな陰謀が暴かれた事例は複数存在します。
両事件ともに最初に報道したのは大手の新聞社だったことから、政府とマスコミが結託して陰謀を隠すのはかなり難しいと見られます。
これに対し、「政府やマスコミは裏で繋がっていて、虚偽の情報を流している」という反論もありますが、仮に虚偽の情報を流していた場合、報道が拡大するにつれ、集合知による裏取りや検証が進むため、その過程で虚偽が暴かれる可能性が高くなります。
4.更なる考察と余談
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上の画像は、陰謀論者の思考を表現したインターネットミームです。情報と情報を恣意的に繋ぎ合わせ、架空の絵を描いています。
筆者の両親のように、長期にわたって陰謀論に深入りしている状況が続くと、全く関連性のない事件どうしを繋ぎ合わせて、陰謀論に沿うようなストーリーを作り上げることがあります。
近年、ネガティブ・ケイパビリティ(Negative Capability)という能力が提唱されています。英国の精神科医が世界に拡げた概念で、答えの出ない不確実な状況下でも早急な解明を求めず、耐えうる能力を指します。
筆者の仮説ですが、陰謀論者は平均的な人よりもネガティブ・ケイパビリティが十分でない傾向があるように思います。陰謀論の多くは善悪二元論に基づくもので、複雑な物事を単純化する効果があるため、どのような形であれ「答え」を提示してくれます。
ところが世の中に存在する問題の大半は多面的かつ多層的であり、多数の個人や集団の利害が均衡した結果、生じているものです。制度的欠陥、資源分配の失敗、政治的な力関係など、その要因は枚挙にいとまがありません。
特定の個人や集団が社会を掌握できるほど、世の中は単純ではないのです。
不確実な世の中だからこそ、情報が正しいかどうかをこれまで以上に確実に判断していく必要があるのではないでしょうか。
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