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なぜUberEatsの配達員は自主的に働いてくれるのか?

UberEats(ウーバーイーツ)のビジネスモデルが成立するためには、配達員に自主的に働いてもらうことが不可欠です。UberEatsのビジネスは「レストランの料理」と「ユーザーのニーズ」と「配達員の稼働」という3者をマッチングすることで手数料を得る仕組みです。

配達員に稼働してもらう難易度は、一般のデリバリーサービスとは構造的に異なります。例えばデリバリーピザであれば、店舗側は配達員を雇用しているため、配達員に対して勤務時間と配達エリアを指示できます。一方でUberEatsは単なるマッチングサービスであるため、Uber側が配達員に稼働を強制したりシフトを指定することはできません。

つまりUber側は、ユーザーからの発注ニーズが発生する時間帯や配達エリアにおいて、まとまった数の配達員に自主的に稼働状態になってもらう必要があります。それがたとえ誰も外出したくないような真夏の炎天下でも、真冬の凍てつく夜でも、です。

秘密は「ゲーム要素」

実は、UberEatsの配達員用アプリには「ガチャ」や「クエスト」のようなゲーム的な要素が巧妙に組み込まれています。ゲーム要素の存在によって、配達という行為が「単なる労働」に終始せず「お金がもらえるポケモンGO」のようなゲームプレイ感覚を帯びるようになります。その結果、配達員は継続的に稼働するモチベーションが高まり、UberEatsのサービスが成立する原動力になっていると考えられます。

本記事で紹介するゲーム要素は「ログイン」「ミッション」「ガチャ」「クエスト」「イベント」の5つです。私(@konnokazukii)は副業でUberEatsの配達員をしつつ、本業ではグリーで6年間のソーシャルゲーム運営経験があります。配達員とゲーム運営の両方の視点から、UberEats配達員アプリのゲーミフィケーション(*1)を分析します。

ゲーム要素によって利用者の行動を促してアプリ利用を活性化させる考え方は、フードデリバリーに限らず多くのサービスや事業の運営に参考になるかと思います。

1: ログイン

UberEatsの配達員は「ゲームにログインする」感覚で稼働を開始できます。アプリを立ち上げて「出発」ボタンを押すだけです。その場でその瞬間から待機状態となり、エリアによってはすぐに配達オーダーが入ります。

このログイン感覚の「その場で、すぐ」仕事を開始する体験は、他のサービスではなかなか実現が難しいものです。例えば多くの求人サイトで「即日可」なアルバイトは募集されていますが、申込み、審査、移動、面接といったプロセスが必要です。

UberEatsの配達員アプリは、思い立ってから配達(=ゲームプレイ)ができるようになるまでの時間を最小化することで、配達員が業務に進む転換率と、次回以降も配達を行う継続率を高めていると考えられます。ゲームアプリにおいても、ゲームプレイができるようになるまでの起動時間が短いほど、ユーザーのゲームプレイ率や継続率は高まるものです。

2: ミッション

UberEatsの配達員アプリではゲームの「ミッション」のように、1回の配達タスクを終える度にタスクの難易度に応じた報酬を受け取ります。下記の流れです。

1) 配達オーダーが入る
2) レストランまで向かってフードをピックアップする
3) 配達先まで向かってユーザーにフードを渡す
4) 報酬を獲得する

各回の配達の報酬は、3)におけるレストランからユーザーまでの配達距離に応じて決まります。配達距離が長くなるほどに報酬金額は高くなります。ゲームにおいてミッションの難易度が高いほどに報酬が大きくなるのと同様です。

このミッション報酬型のシステムによって、UberEatsの配達員は、(デリバリーピザなどの)店舗に雇用されるタイプの配達員とは異なる業務体験が得られます。まず、完全歩合給であるため自分の配達スキルによって報酬を上げることができます。これはゲームにおいてミッション攻略スキルが報酬に反映される感覚です。また、毎回ピックアップするレストランが変わるためルーチンワーク感が薄れます。これは毎回フィールドを探索するような感覚です。

3: ガチャ

UberEatsの配達員アプリにはゲームの「ガチャ」のような「報酬のランダム性」があります。個人的にここが一番巧妙な仕掛けだという印象です。

配達員は配達オーダーが入るとそのオーダーを受けるか否かを判断する必要があります。しかし、オーダーが入った時点では「ピックアップ先のレストラン」と「配達先のユーザー」の情報はどちらも明かされません。また前提として、各回の配達の報酬はレストランからユーザーまでの配達距離に応じて変わる、と先程述べました。

つまり、配達員は毎回、報酬を運に委ねながらオーダーを受けることになります。すなわち毎回の配達にはアタリとハズレが生まれることになります。長距離配達で高額報酬を稼げるかもしれないですし、目の前にあるマンションへの配達でわずかな報酬しか得られないかもしれないのです。

こうした報酬のランダム性により、ルーチンワーク感が薄れるとともに、「次はアタリかもしれないからもう1回配達をやってみよう」という感覚が生じます。ゲームのガチャをもう1回引きたくなる感覚と似ています。

4: クエスト

UberEatsの配達員アプリではゲームの「クエスト」と同様に、配達ミッションをこなした回数に応じたボーナスがあります。例えば「1日で3回配達をこなすと報酬がプラス400円」「3日間のうち10回配達をこなすと報酬が+1000円」といったものです。(アプリ内の呼称もそのまま「クエスト」です)

クエストによって、配達員には毎回の配達ミッションの先にある中規模ゴールが提示されることになります。これにより、配達員は配達回数を積み重ねるモチベーションが高まり、稼働する頻度や継続率が高まると期待されます。ゲームにおける「ステージ1~3をクリアするとボーナス」といったクエスト設計と同様です。

5: イベント

UberEats配達員アプリではゲームの「イベント」のように、期間限定の報酬アップ施策があります。例えば「金曜日の11時~14時に府中エリアで配達をすると報酬が1.1倍」といったものです。(アプリ内の呼称は「ブースト」)

この報酬アップ施策は、「ユーザーの発注ニーズ」に対して「配達員の稼働」の不足が見込まれる時間帯とエリアを事前に予測し、該当の時間帯とエリアにおける報酬をアップさせることで配達員の稼働を誘導する狙いです。ゲームにおいて月初や週末などユーザーを活性化したいタイミングに「期間限定でレア出現確率アップ」といったイベントを開催するのと同様です。

まとめ

このように、UberEatsの配達員アプリには「ログイン」「ミッション」「ガチャ」「クエスト」「イベント」といったゲーム要素が埋め込まれています。

ゲーム要素によって、UberEatsの配達は単なるルーチンワークではなくゲーム感覚を帯びた体験になります。

その結果、配達員のモチベーションが高まり、自主的にアプリを立ち上げて配達を行おうとする稼働率が高まっていると考えられます。(*2)(*3)

Appendix

(*1) 「ゲーミフィケーション(gamification)」とは、ゲーム的な要素をゲーム以外のサービスや制度に応用することです。
(*2) ゲーム運営観点で見たときにUberEats配達員アプリを改善できそうな点はいくつかあります。これについては別の記事でまとめる予定です。大きくは3つあります。
1) Achieverに刺さるサービス設計
2) 小サイクル(配達)と中サイクル(クエスト)を回した先にある大サイクルの設計
3) 小規模の中間ゴールを意識したゲームバランス調整
(*3) もちろん、ゲーム要素だけが配達員の稼働モチベーションであると言っているのではありません。1つの要因として紹介しています。

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オンモリです。フォローすると御利益があるかも。呼び方は旧姓(紺野)でも全然OK。/グリーでゲームの事業責任者やFinTech新規事業(後払い)の立ち上げをしていたPM /副業でUberEats配達員 /東大でロボコン日本一 ■https://twitter.com/OnMorik
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