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ぐん税ニュースレター vol.27 page04 -インボイス制度とは-

令和5年10月1日から「適格請求書等保存方式」(いわゆる「インボイス制度」)が導入されます。

1.「適格請求書発行事業者」登録はなぜ必要か?

(1)仕入税額控除のためには必須
事業者が納付すべき消費税額の計算方法は、課税売上にかかる消費税額-課税仕入等にかかる消費税額(仕入税額控除といいます)となりますが、課税事業者である買い手は「適格請求書(インボイス)等」を保存しないと仕入税額控除ができなくなります。「適格請求書等」は「適格請求書発行事業者」だけが発行できるため、売り手は登録申請をして「適格請求書発行事業者」になる必要があります。
新制度導入後は、買い手が売り手に対して「適格請求書発行事業者」であることを求めるようになると予想されます。
なお、「適格請求書発行事業者」登録は販売する商品に軽減税率対象品目があるかどうかに関係ありません。また、消費者や免税事業者へは「適格請求書等」の交付義務がありません。

(2)登録事業者は国税庁が公表
上述のように事業者の仕入税額控除に大きく影響することから「適格請求書発行事業者」に登録した事業者の氏名や登録番号等は、国税庁のホームページで公表されます。

2.登録申請書の提出はいつまでに行うか?

(1)新制度導入日から「適格請求書(インボイス)等」を発行するには
登録申請書の提出は令和3年10月1日から既に始まっており、令和5年10月1日から登録事業者となって「適格請求書等」を発行するためには原則として令和5年3月31日までに登録申請書を提出する必要があります。
登録申請書の提出後審査に一定の期間(現段階ではe-Tax提出の場合約3週間、書面提出の場合約1か月半)を要するため早めの提出をお願いします。

(2)登録申請が必要な事業者
「適格請求書等」を発行するのは基本的に消費税課税事業者であるため、課税事業者が登録をすることになります。
 免税事業者が登録をするためには「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者となる必要があります。ただし令和5年10月1日を含む課税期間中に「適格請求書発行事業者」の登録を受けた場合は、登録を受けた日から課税事業者となるため「消費税課税事業者選択届出書」の提出は必要ありません。

3.適格請求書等保存方式(インボイス制度)とは?

(1)企業間の取引で必要になる「適格請求書(インボイス)等」
仕入税額控除の適用を受けるためには帳簿や請求書等の保存が必要となりますが、この保存すべき請求書等が「適格請求書(インボイス)等」に変わります。これを「適格請求書等保存式(インボイス制度)」といいます。
「適格請求書等」とは企業間の取引において、売り手が買い手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段であり、登録番号などの一定の事項が記載された請求書や納品書、領収書、レシート等の書類や電子データです。
現行の「区分記載請求書」の記載事項に加え、登録番号等の記載が追加されます。(図1参照)

(2)不特定多数の者に販売する事業者が発行できる「適格簡易請求書」
すべての取引が消費者と行われるのであれば「適格請求書発行事業者」になる必要はありません。
しかし小売業など多くが消費者との取引であっても企業との取引で領収書が求められることがあります。その場合は「適格請求書等」が必要です。
このような不特定多数の者に対して販売等を行う小売業、飲食店業、タクシー業等に係る取引については「適格請求書」に代えて「適格簡易請求書」を発行することができます。(図1参照)

図1(国税庁ホームページ「適格請求書等保存方式 の概要」より)

(3)適格請求書等の交付義務が免除されるケース
①税込価額3万円未満の公共交通機関(船舶、バス、鉄道)による旅客の運送
②生鮮食料品等の出荷者が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた卸売業者が卸売の業務として行うものに限る)
③農林水産物の生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林生産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限る)
④税込価額3万円未満の自動販売機又は自動サービス機による商品の販売等
⑤郵便切手を使用した郵便サービス(ポストに投函されたものに限る)

(4)税額の端数処理の留意点
「適格請求書等」の記載事項「税率ごとに区分した消費税額等」に1円未満の端数が生じる場合、一の適格請求書等につき税率ごとに1回の端数処理(切上げ、切捨て、四捨五入など任意)を行います。したがって「税率ごとに区分して合計した対価の額」に税率を乗じるなどして計算します。
(個々の商品ごとに消費税額等を計算して端数処理を行いその合計額を「税率ごとに区分した消費税額等」として記載することは認められません)

4.免税事業者はどう対応する?

(1)免税事業者は「適格請求書(インボイス)等」を発行できない
「適格請求書(インボイス)等」を発行できるのは課税事業者が登録できる「適格請求書発行事業者」に限られます。そのため免税事業者が「適格請求書等」を発行するためには課税事業者になる必要があります。
ただし「適格請求書発行事業者」の登録を受けた後は事業者免税点制度の適用はなくなり、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても消費税の申告と納付が必要になります。

(2)課税事業者との取引がある免税事業者の場合
免税事業者など「適格請求書発行事業者」以外の者から行った課税仕入は、原則として仕入税額控除の適用を受けられません。したがって商品等を仕入れた相手が課税事業者か免税事業者かで消費税の納付税額が変わってしまいます。

(3)経過措置
「適格請求書等保存方式」の導入から6年間は、免税事業者からの課税仕入であっても仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる次のような経過措置が設けられています。

図2(国税庁ホームページ「適格請求書等保存方式 の概要」より)

(4)免税事業者が検討すべきことは?
事業の実態等を踏まえ、次のような場合を想定して課税事業者を選択する(「適格請求書発行事業者」の登録申請をする)かどうかを検討しましょう。
①顧客が消費者のみの場合には、必ずしも「適格請求書等」を発行する必要はありません。
②課税事業者を選択すると消費税の申告・納付が必要になります。
③お客様や取引先から「適格請求書等」の発行を求められる可能性があります。
④「適格請求書等」を発行できないと課税事業者の取引先から消費税分の値引きを要求されたり、取引が見直されたりする懸念があります。

5.「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」導入に当たっての事前準備

「適格請求書等」に対応するためには、請求書等様式の記載事項の変更が必要となります。また必要に応じてレジや経理・販売・受注システム(売り手側)や、経理・購買・発注システム(買い手側)などのシステムの投資・改修等が必要となるため、早期に登録申請をして準備をしておきましょう。

税理士 鈴木


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