鈴木雅之 2ndアルバム「Radio Days」(1988)レビュー

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●山下達郎作曲編曲による3曲を含む2ndアルバム

大沢誉志幸プロデュースによる1stアルバム「mother of pearl」は個人的にはちょっと鈴木氏とは合ってないかな~と感じたが、この2ndは滅茶苦茶気に入った!この2ndの渋い大人のAOR路線が後の氏の方向性を決定付けたと言っても過言では無いと思う。特にヤマタツ曲と佐藤博の曲は恐ろしい程のクオリティだ!鈴木氏はヒット曲も多いので有名曲のイメージで敬遠しているリスナーもいると思われるがそれは実に勿体ない!作曲に安部恭弘、デュエット曲にEPOが参加していたりなどシティポップ好きも聞いて損はない。いや、損は無いというか聴かなきゃ損だ(笑)。それぐらいの完成度だぞ!

●気になった曲、布教したい曲の感想

02 Guilty
ヤマタツ作曲編曲、竹内まりや作詞の渋~いソウル・バラード。この曲はタバコ臭ぇぞ!個人的にはJ-AORの大傑作。出だしのドラムのタム?の「ダダダダ ダン!ダン!」がヘヴィグルーヴでヤバい。というか全体的に激重グルーヴだな。いやはや渋い!激渋、鬼渋。ハードボイルド。オヤジ!って感じの曲。盛り上がりすぎないブルージーなギターソロも上品。ブラス・アレンジもヤマタツらしいがこれは凄い。専門家レベルだ。さすがはマニアである!ヤマタツの仕事の中でもかなり上位の曲だと思うし、本人も気に入ってるらしいぞ。よくよく聞くといつものヤマタツバンドのグルーヴだが、やっぱ自分の曲ではここまで渋い雰囲気にはしないな。鈴木雅之のその後のイメージを決定づけた曲と言っても過言ではなかろう。
ボーカルに関してはもう完璧すぎて何も言う事が無い!竹内まりやの十八番(笑)不倫ソングを完璧に歌いこなすぞ!こういうのを歌わせたら誰も敵わん!

03 Misty Mauve
続いてヤマタツ作曲編曲のファンクナンバー。シンセ音のおかげか結構ポップにも聞こえる・・・か?しかし渋くハードボイルドな雰囲気は満ち満ちている。この曲もやはりブラス・アレンジがソウルフルでクソ格好良い!一瞬再生が止まったかと思うほどの後半の長めのブレイク部分はかなりキザでベタだがトレンディドラマな感じで良いな。打ち込み電子音のクオリティはさすがに佐藤博には適わんが、チープさはギリギリ無いか。ボーカルの表現力もかなり冴えてるな!結構抑揚、強弱、タメがついてるにも関わらず、わざとらしさが無いのは神業的。中々できんぞ!

04 Wild Beat
更にテンポを上げたダンサブル・ファンクナンバー。ディスコっぽさもあるな。鈴木雅之の作曲だがアルバムからも浮いていないし、クオリティも低くない。全曲本人作曲でも良いんじゃないか?とも思ってしまうが、量産はできないタイプなんだろうか?ベースの主張が強くて良いな。軽いドラムとチープなシンセブラスのせいか、重~いベースが際立って聴こえる。間奏部分も曲調的にシンセブラスでパーッと盛り上げるかと思いきやベースのリフを聞かせてメロディー楽器は休ませる「引く」タイプでファンキーで格好良い。間奏でテンション下げるの渋~!メロディーが弱い気もするがこれ以上キャッチーだとアッパーな曲調のせいもあって安っぽくなる危険性があるし、これぐらいが良いバランスだと思う。適度にキャッチー。後半で聴けるフェイク歌唱は短いもののカッコいい。ルーツを感じさせる黒めのフェイクだ。このラストのフェイク部分だけ転調して上がるの地味に珍しい気がするな。あんま聴いたことないぞ。

05 微笑みを待ちながら
安部恭弘作曲、佐藤博編曲の激渋アーバンソウルナンバー。2曲目のGuiltyとはまた違ったタイプの渋さだな。やはり安部恭弘も自分の曲ではここまで男臭いのは珍しいのでヤマタツ同様鈴木氏に寄せたのだろうか。そして異常にクオリティの高いこのアレンジ!ここまで極まってると笑っちゃうぐらいだ(笑)洗練されまくっとる。けなす訳では決してないが、確実に、必要以上にクオリティが高い!サックスソロも恐ろしい表現力。初めて聴いた時はメロディーもボーカルも入ってこなかったぞ(笑)。しかしリズムが強靭とは正にこの事だな。マジでずっと聴いてられるぞ。

07 Dry・Dry
アルバムからの先行シングルで「キリン生DRY」のCM曲との事。当時はちょっと話題になったらしい。サビでドゥライ!ドゥラァイ!言ってるしな(笑)。確かにテレビから聴こえてきたらちょっと気になるぞ。言うまでなくアルバムでは浮いてるが、確実に鈴木氏のJ-POP作曲能力は示せただろう。メロディアスで聴きやすく、サビも鈴木雅之楽曲の中でもトップクラスにキャッチーでカラオケ曲としても点数高めだな。アレンジは80sファンクナンバーって感じでシンセ音は安いし、リズムは複雑でノリづらく、ブランスアレンジもゴチャついてて、個人的には微妙だ。

08 For Your Love
佐藤博作曲編曲のアメリカンでオールディーズな雰囲気のEPOとのデュエット。伸び伸びしたEPO女史のヴォーカルが曲と合ってるな。渋めの曲で埋め尽くされている本作のなかで唯一の明るくオシャレでカワイイ雰囲気の曲で、良い意味でちょっと浮いている。

09 Tandem Run
キ、キ、キタ~~~!鬼、鬼、鬼渋J-AOR!佐藤博作曲編曲の名曲!シティポップ的にも最高だ!これもアレンジが神懸かり過ぎて5曲目の微笑みを待ちながら同様、アレンジ以外何も入ってこない(笑)クオリティ高過ぎ。音数は結構多いのにゴチャつき感は全く無い!ミディアムテンポなのに疾走感がしっかりある!これはどういうセンスなんだ?洗練具合がハンパじゃね~!全体の展開もドラマチックでサビでパーッと明るくなるとこなんかマジで胸にグッとくるな!劇的展開だがメロディーが哀愁全開過ぎないおかげで歌謡曲的な湿っぽさは皆無だな。すごいバランスだよこれは!いや~渋いぜ!佐藤博はもっともっと評価されるべき。あと誰かこれサンプリングしてラップしてくれ!それぐらいリズムセクションがタイトでクール過ぎるんだわ!

10 おやすみロージー(Angel Baby へのオマージュ)
ヤマタツ作曲編曲のシンプルでオシャレで上品なドゥーワップ曲。超アメリカン。この曲が一番グループ時代からの連続性を感じるな。鈴木氏のいつになく気合の入ったパワフルで粘っこい歌唱を聴くことができる貴重なナンバー。ヤマタツの洗練されたコーラスもガッツリ聴ける!

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