鈴木雅之 4thアルバム「mood」(1990)レビュー
●前作に引き続き王道J-POP路線
全体の雰囲気は前作「Dear Tears(1989年)」を踏襲している。ブラックミュージックを基調としつつもAメロBメロサビでしっかり盛り上がる歌謡曲の構成で仕上げている曲が殆どだ。アレンジは打ち込み、安っぽいシンセ音が目立つ90sジャパニーズファンクって感じだ。今聞くと古いけど、それがまたエモいのよ。「古臭い」ってネガティブに使われる事多いけど、そんな駄目な事かね?あぁこの感じ流行ってたな~って気分になれて自分は好きなんだけどなぁ。音楽でも何でも。この辺りからちょっぴりマンネリ感が漂い始めたかもしれん。氏のソロの世界観が確立したって事なんだけどね。
ルーツであるドゥーワップの雰囲気が残っているのが先行シングル「ベイサイド・セレナーデ」ぐらいか。しかしこの時代でもさすがにレトロでこれは一般には売れないな(笑)。マニア向け、昔からついてきてくれているファン向けだ。
●気になった曲、布教したい曲の感想
01 プライベートホテル
1stアルバムでは強烈なエレクトロファンクで猛威を振るった大沢誉志幸の作曲だ!しかしこの時期の鈴木氏の作風に寄せたのか、かなりJ-POPナイズされており聞きやすいぞ!アレンジも80年代臭さはなくグッと90sファンクの雰囲気である。打ち込み電子音全開だ!人間味があるのは間奏のサックスソロだけだな。ラストの転調もベタだがGood。
02 そりゃないぜ
全曲から一転して生音中心の穏やかで高級感あるアレンジで幕開けだ!鐘の音?鐘リフが印象的だ。あんま聴いた事無いフレーズにも関わらずキャッチーだな。CMソングとかで流れたらかなり引きあるな~。全体的にとにかくリッチな雰囲気なんだよな。バブル~!って感じだ。高級リゾートだよ。J-POPのストリングスは取って付けたようなワザとらしいのが多いが、この曲では効果的に使われている印象だぞ!サビはかなり音数多く超ゴージャス!なんだけど意外とゴチャゴチャ感は無く、各パート機能的にグルーヴしている。そして「そりゃないぜ~」のコーラス部分に注目!こういうパートって普通は英語だけど、日本語のおかげでちょっとお茶目なフレーバーが加味されるな。鈴木雅之氏が得意なあざといお茶目さはこういう部分にも表れるのだ!Cメロのキメ+鈴木氏のソウルフルなボーカルと英語コーラスの掛け合いからのサックスソロに繋がる展開は見事過ぎる!芸術的だ。とにかくゴージャス!金使って遊びたくなるぞ!
03 渇き
前作収録曲「軽蔑」に続く激渋ハードボイルドファンク曲。なぜかブルースっぽいオルガンのフレーズで開幕する。安っぽいシンセベースの主張が強く90年代!って感じだな。タバコの似合うクソカッコ良い一曲。気怠いAメロBメロからダークアンニュイ(?)とでも言うような雰囲気のサビでやるせない気分になれる!長めのCメロでは多少明るくなるもすぐ現実に引き戻される感じがGoodだ。
04 それでもふたり
暗めのマイナー調のボサノヴァナンバー。安部恭弘氏の作曲で力作だ。ホーンリフが渋いぞ!かなりオヤジだ。哀愁強めでオシャレになり過ぎない塩梅が丁度良いな。素晴らしいバランスだ!ここぞという場面で控えめに飛び込んでくるアコギのフィルインフレーズが良いスパイスになっているな。この上品なアレンジ、痺れるぜ。全体に淡々とした雰囲気ながらもサビはしっかり盛り上がるぞ!歌謡曲として聞いてもありだな。カラオケでなくスナックで歌いたい曲だ!クレイジーケンバンドとかでもありそうな哀愁曲だ。
05 Hot Pepper Pain
アッパーなエレクトロファンクチューン。主張する90sシンセベースが時代を感じさせ心地良い。打ち込みメインながら各セクションしっかりグルーヴしている。やはりダンサブルナンバーはこうでなくっちゃね!
06 ベイサイド・セレナーデ
ドゥーワップっぽいレトロでアメリカンな曲。サビのメロディーは3拍子を生かした凝った独特のリズムで、バラードだがタルく感じさせない工夫が感じられる。
07 Re・mind
ポップで明るいレゲエ調ナンバー。同氏作曲の4曲目「それでもふたり」とは打って変わって爽やかで可愛らしい曲。本人のソロ仕事でもありそうな雰囲気だな。過去イチ安部恭弘色が強い曲かもしれん。終盤では本格的なドゥーワップアカペラが楽しめる。
08 Law
鈴木雅之作曲のポップ・ファンクナンバー。。個人的には過去曲の「Wild Beat」や「Heard Hunter」に通ずる氏独特のポップセンスが光る一曲だと思う。「はぁーっきりと!さぁーっせたいよぉ!」・・・実にキャッチーである。あの有名曲「うっせぇわ」に通ずるポップセンスかもしれん。この路線は「違う、そうじゃない」で完成(?)を見る。
09 そして愛のかたちに・・・
シリアスで哀愁漂うアップッテンポなナンバー。独特な緊張感が漂う不思議な雰囲気だな。終始うっすらサーッって鳴ってるストリングスが疾走感を演出している。