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感情が動く刺激を逃さない

 久しぶりに生のほうれん草を買った。
 最近はセールの日でも値段が下がらなくて、今日も冷凍コーナーで買うか、となる日々だった。

 生産者さんの顔が印字されたパッケージを破り、ほうれん草の束を両手で掴む。茎と葉が擦れてキュッキュッと鳴いて掌に伝わる。みずみずしい感覚が嬉しくて思わず口の端が持ち上がる。

 私は五感の中でも触感に注目することが多い。
 そのため、書いている文章は手触りや温度に関する描写が多く、日頃からキャッチしやすい情報なのだと思う。

 小説やエッセイを書くようになってから、こうした体験をより一層大切にしている。
 感情が動く刺激との出逢いに、刺激をキャッチできた自分に、心の中ではガッツポーズ。そんな強かな自分が結構好きだ。

 小さな物語の種を取りこぼさないように、私の掌は今夜も忙しい。

 

 

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