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夏期限定トロピカルパフェ事件 - 米澤穂信|再読感想文・要約(ネタバレあり)

いちごタルトに引き続き、最新刊かつ最終刊の読書前・アニメ視聴前に読み直し。感想と自分なりの要約を書いていきます。
こちらも初読は2011年頃だったが、最後の展開はかなり印象に残っていた。

序章 まるで綿菓子のよう

連作短編における伏線・情報

夏祭りでの一場面。小佐内さんには、「相手には見られたくないが、こっちは見たい」という相手がいる。


第1章 シャルロットだけはぼくのもの

連作短編における伏線・情報

<小佐内スイーツセレクション・夏>なる、スイーツ店の一覧とその位置が載った地図が小鳩くんに渡される。
小佐内さんのこの夏の運命を左右するとのこと。
小鳩くんはこのスイーツ店巡り10位から1位までつきあうことになった。
小佐内さんが誰かと長電話している。

短編のしかけ・トリック

倒叙ミステリーの形式。
3つしか買えなかった絶品シャルロットを2人で分ける。
先に食べた小鳩くんは、1つでは我慢できず、2つ食べたくなった。
小佐内さんの長電話の間に、「シャルロットは元々2つしかなく、そのうち1つを先に食べてしまった」と偽装する話。
家に来た時にはハンカチで汗を拭いていたのに、偽装の際にクリームを拭きとるのにハンカチを使ってしまった。そのため、部屋で汗を拭くのにはティッシュを使った。
このミスから偽装がバレた。

感想

基本的に描写が丁寧で読みやすいのに、クリームを拭き取る描写では、何で拭き取ったのかの描写がなくて違和感はあった。
アニメ化ではハンカチでクリームを拭く描写は隠しきれないだろうし、無理に隠さなくてもいいように思う。小説でもハンカチで拭いたと描いててもよかった気がする。
それでも、小佐内さんの目敏さや鋭さは十分に描写できそう。


第2章 シェイク・ハーフ

連作短編における伏線・情報

<小佐内スイーツセレクション・夏>に載っているお店2つの名前と「その間」というメッセージから、その中間点にある目的地のお店を小鳩くんに推理させた。
堂島は高校生の薬物乱用グループの調査をしている。
そのグループは中学生時に一度補導されている。
堂島は知人からその人の姉(川俣さなえ)がグループを抜けられるように手助けして欲しいと依頼されている。
堂島が見張りをしていた場所に、変装した小佐内さんもいた。

短編のしかけ・トリック

場所・連絡先を示すメモに漢字の「半」と読めるものがかかれていた。
実際には「半」ではなく、「キ」+「✓(チェックマーク)」。
お祭りのチラシに描いてある地図と組み合わせると、場所がわかるようになっていた。

感想

他の情報と地図を組み合わせて場所を特定する話。
謎そのものというよりも、メインストーリーの進行とからめつつ「半」が謎になる過程がうまいなあと感じた。
アニメでは、チラシの地図の出し方や小鳩くんの目線の描写が大事になりそう。<小佐内スイーツセレクション・夏>もそうだが、地図関連の謎は映像化の恩恵が強そうである。


第3章 激辛大盛

連作短編における伏線・情報

堂島が川俣さなえに接触しグループを抜けさせるために協力を申し出たが、「邪魔だ」と言われた。

短編のしかけ・トリック

なし

感想など

メインストーリーの情報を、堂島の愚痴という形で読者に示す話。
甘い物の話ばかりだから、辛いものを挟んだのかな。


第4章 おいで、キャンディーをあげる

連作短編における伏線・情報

<小佐内スイーツセレクション・夏>第3位りんごあめを食べに行く約束。
このりんごあめはお祭り期間限定のスイーツ。
集合時間の13時、小佐内さんは家に不在で、母親がいた。
小鳩くん家で待っていると、変声機を通した電話で小佐内さん誘拐の通告とともに身代金500万円の要求があった。
薬物乱用グループの中学生時の補導に小佐内さんが関わっており、その恨みからの誘拐。
小佐内さんの服装は、高校の制服によく似たものだった。
誘拐事件解決後に小佐内さんが食べたいと言ったものは、第2位のピーチパイだった。

短編のしかけ・トリック

小佐内さんから「りんごあめ4つとカヌレ1つ」のおつかいメール。
これは監禁場所を伝えるメッセージ。りんごあめのお店とカヌレのお店の間を4:1で分ける場所が、監禁場所だった。

感想など

短編のメインは小鳩くん&堂島による、拉致監禁された小佐内さんの救出ストーリー。これだけでも割と十分に楽しめてはいた。ここからもうひと捻りあるのが素晴らしい。

食べたいものをりんごあめでなく、ピーチパイと言ってしまった小佐内さんのミスと終章へつながる最後の冷めた空気感がとてもよい。
小佐内さんというキャラだからこそできる展開作りが非常に気持ちいい。


終章 スイート・メモリー

<小佐内スイーツセレクション・夏>
第1位の夏期限定トロピカルパフェを食べながら、誘拐事件のネタばらし。

小佐内さんは薬物乱用グループ・特に主犯格の石和から恨みを買っていた。
そして復讐を恐れていた。

グループ内部の川俣と内通し、自分の拉致監禁を誘導した。
変声機(+録音)で身代金要求の電話をしたのは川俣だった。
これにより単なる誘拐から営利目的誘拐に罪状がランクアップした。
目的は、少しでも長く石和が懲役を受けるようにするため。
復讐を恐れないでいいようにするため。

誘拐時に自分が速やかに救出されるように準備しておいた。
<小佐内スイーツセレクション・夏>を巡る過程で、地図を小鳩くんに印象付け、メッセージから場所を特定する謎解きの予行演習を行っていた。

りんごあめはお祭り期間限定のスイーツ。
お祭り当日に誘拐されることを事前に把握しており、救出されるタイミングによっては食べ逃してしまう。なので、誘拐される前に食べに行った。
結果、小鳩くんと一緒に食べに行く約束をしているのに、約束の時間の前にすでに食べてしまっているという矛盾が生じた。
この矛盾が第4章最後の失言につながる。

感想

スイーツ巡りと拉致監禁誘導からの罪状ランクアップによるカウンターパンチ。小佐内さんというキャラクターだからこそできる話作りが、とても巧みに感じた。

最後に2人の互恵関係が解消することになった。
物語の締めの後味として、好みの展開ではあるが。
この展開が、次回作を意識してのものだったのか、純粋に物語の結末としてこれが自然なものとして描かれたのかは気になるところ。

アニメの予習としてはまずはここまで。楽しみです。
最終刊の発売同時期にアニメ化ということは、最後までアニメ化してくれる計画なのだろうと思います。まずは第1期がうまくいくよう祈りましょう。

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